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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

eRa / "REBORN"

2008-04-28 07:06:46 | music7
Reborn


□ eRa / "REBORN" (Bonus Edt.)

Thousand Words
After Thousand Words
Kilimandjaro

Release Date;24/03/2008
Label; MERCURY
Cat.No.; 5307322
Format: 1xCD

>> http://era-music.artistes.universalmusic.fr/

>> tracklisting.

01. Sinfoni Deo
02. Reborn
03. Dark Voices
04. Come into My World
05. Prayers
06. Thousand Words
07. After Thousand Words
08. Kilimandjaro
09. Last Song
10. Come into My World [Remix]


混声合唱系ニューエイジの異端にしてカリスマ、Eric Leviのプロジェクト、"eRa"の4th Album。のはずが....初聴きの印象は、「どうしたら少しでも辛辣な表現を使わずに批評出来るだろうか。。」そればかりでした。そう、6曲目の"Thousand Words"を聴くまでは・・・。


□ 90年代初期に"Reborn"を遂げた"Sword & Sorcery"

とりあえず、Eric Leviは最近になってRobert Milesの"Dreamland"を聴いて感動したことは間違いないでしょう。"Come into My World"及び、そのRemixのような薄っぺらい音使いは、今ではなかなか聴かれない。もし"Reborn"が1st Albumより前、90年代始めにリリースされていたら、きっと古き良きアシッド・トランスのイロモノとして分類されていたはずです。


オーケストラは息を潜め、そのほとんどがシンセによるモデリングされたストリングスに座を追われています。ジュリオ・カッシーニの『アヴェ・マリア』主題に基づく"Sinfoni Deo"等で、80's臭漂うヴォーカルを披露するのは、"Dance Mania"シリーズなどディスコ・ミュージック全盛期に活動していたMiriam Grey。また、"Reborn"や"Prayers"では、イスラエル・ポップやチルアウトの趣向を取り入れた中東風のプリミティヴなサウンドをブレンド。

(もしかして、レトロな打ち込みサウンドと民族音楽は「原点回帰」のダブルミーニングで、Ericに音楽的な影響を及ぼした年代と関わっているのかもしれない。)

また、"Ameno"や"Divano"など、おなじみの過去作品のフレーズを散りばめて一貫性を演出しようとしていますが、決して開き過ぎたとは言えないブランクの割に、どこか空々しく漂うものが。。


またこの間、Andrea Bocelliが2004年に発売された"Viaggio Italiano"のリイシュー盤のボーナストラックに、eRaの"I Believe"のカヴァーを歌って収録しています。あの頃の豊穣な旋律に涙が。。



eRaの世界観は、これまでのPVにも反映されていたように、中世ヨーロッパの「剣と魔法のファンタジー」に強く根ざしていました。それは決してアーサー王伝説や指輪物語などではなく、精々が「コナン・ザ・グレート」だったり、「ドラゴンスレイヤー」だったりするのだけど。

(※ ジャン・レノが現代にタイムスリップした中世ヨーロッパ騎士を演じた映画「おかしなおかしな訪問者」「ビジター」にeRaの曲が使用されています。)

ちなみに私は、eRaの女性ボーカルを耳にすると、どうしてもピンクと白髪にパンクヘアーを染めた歌手のビジュアルが脳裏を過ってしまいます。

しかし、仰々しいオーケストラに当時では最先端の方法論であったプログラミング・ビートの鋭角的なリズムを刻み、ラテン語では十分ではないと、音節に細工を施した造語を合唱させて完成した"Ameno"は、紛うこと無くシュールでアーティスティックな孤高の名曲でした。


ヘヴィ・メタルに傾倒していたEric Leviのルーツを善くも悪くも露呈することになった"The Mass"を経て、更に"Reborn"において彼のセンスと指向性の古さを皮肉にも前面に押し出してしまったのは、これまでそれらを補って余りあったオーケストラによる重層的なメロディの不在と、前時代的なドラムワークの復興です。やけに小気味の良いムードトラック"Kilimandjaro"にしろ、Eric Leviは次にポップ・プロデューサーを目指しているのかもしれない。でもそこに混声合唱がある必然性は、"Reborn"においては遂に見つけられませんでした。


とはいえ、タイトル・トラックである"Reborn"のコーラスメソッドは、彼がしっかりと時代の趨向を見据えていることも窺わせる興味深いものです。元々オルフの"O Fortuna"がモチーフと思われますが、これは近年ハリウッドで使用される業務用サウンドライブラリから引用されているものに酷似しています。

特にSteve Jablonskyが"Transformers"で使用したコーラス、これはJames Dooleyの作曲・合唱指揮によるもので、Position Musicの"Orchestral Series Vol.2"と題されたサウンド・ライブラリに収録されているので、興味にある方は聴き比べて見てください。(iTunesで試聴可能)

>> http://www.positionmusic.com/


また、似た傾向のある混声合唱+打ち込み系作品として触れなくてはならないのは、Hans Zimmer以下RC社とも深い関わりのある作曲家 Robert L. Bennet Jr.のプロジェクト、Ars Arcana / "The Savage Tongue"。いつかレビューしたいと思います。

>> http://www.haymakermusic.net/
>> http://www.robertbennettmusic.com/

彼らは、ハリウッド系混声合唱スコアのリソースを支える職人とも言うべき人たちです。



話が逸れてしまいましたが、こうして時代の要求がさらに大袈裟に、派手なスコアリングに向かっているのに遡行するが如く、一変してストイックな転回を見せた"Reborn"の作風には、何らかの意図を嗅ぎ取れないこともありません。その最たるものが、今作のハイライト・トラックとも言うべき"Thousand Words"~"After Thousand Words"の流れ。

従来のeRaなら、この曲を冒頭に置いたに違いありません。それは神々しいほどまでに潤ったストリングスと混声コーラス、そしてプログレッシヴ・ロックの眩い調和であり、私たちがeRaに求めていた音そのものです。"Reborn"の示す意味が、ある種の帰還であるのか、それとも訣別であるのか。"Last Song"において寂しい旋律によって歌われる聴きなれたフレーズの一つ一つに、過去のeRaの確かな息づかいを感じながら・・・、次なる転生を待つには、ここに残された作品はあまりに心許ない。