lens, align.

Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Delerium / "Nuages Du Monde" Promo Review.

2006-08-28 21:42:57 | delerium
Na Eu
(上:North American Version)    (下:UK/Europe Version)

※本エントリーは、CD盤レビューと併せてご覧下さい。

>> lens,align.: "Nuages Du Monde" EU盤Review.

.

□ Delerium / "Nuages Du Monde"

Angelicus [128kbps / 05min : 10sec]
Lost and Found [128kbps / 4:06]

Release Date; 15/08/2006 [Promo]
               ; (02/10/2006 [Album])
Label;  Nettwerk
Cat.No.;(none)
Format; mp3 [VBR]

先日からネット上の各所にリークがあった、
Delerium最新アルバムのプロモ盤。
既に海外ではレビューされ始めていますが、
私もこの度、ある御方からmp3ファイルを
入手することが出来ました!!

>> http://www.delerium.ca/

>> tracklisting.

1. Angelicus feat. Isabel Bayrakdarian
2. Extollere feat. Katharine Blake & Mediaeval Baebes
3. The Way You Want It To Be feat. ZoeJohnston
4. Indoctrination feat. Kiran Ahluwalia
5. Self-Saboteur feat. Kristy Thirsk
6. Tectonic Shift
7. Lumenis feat. Isabel Bayrakdarian
8. Fleeting Instant feat. Kirsty Hawkshaw
9. Sister Sojourn Ghost feat. Katharine Blake & Mediaeval Baebes
10. Lost and Found feat. Jael
11. Apparition


"Nuages Du Monde" 概要                   .

Deleriumの13thアルバム。Nettwerk移籍後では5作目となる。
製作は前作"Chimera"(2003)の直後から開始され、以降、数多くの仕事の合間に仕上げられた。『エレクトロニックでダーク、そしてアップテンポ』というコンセプトで作られた今作は、近年のフィーチャリング・ポップ路線とは違い、パフォーマーをより絞り込み、1997年の"KARMA"を想起させるものでありながら、Rhys Fulberを始めとする各参加アーティストがそれぞれ持ち寄った新たな要素を取り込んでいる。"Nuages"は"New Age"とかけているのかもしれない。



参加アーティスト                                                    .

※ 確認分のみ

Rhys Fulber (co-produce)>> http://www.conjureone.com/
Kristy Thirsk >> http://www.kristythirsk.com/
Katherine Blake (Mediaeval Baebes) >> http://www.mediaevalbaebes.com/
Isabel Bayrakdarian >> http://www.bayrakdarian.com/
Kiran Ahluwalia >> http://www.kiranmusic.com/
Zoë Johnston >> http://www.zoejohnston.com/
Jaël >> http://www.lunik.com/
Kirsty Hawkshaw >> http://www.kirstyhawkshaw.co.uk/
Chris Elliott (String Arrangements)

"Nuages Du Monde"における各アーティストの仕事と特徴は下の各曲毎の解説・レビューで述べる。
Conjure Oneのデビューアルバム"Conjure One"でストリングスを担当していたChris Elliottが参加。彼は"Moulin Rouge"でCraig Armstrongと仕事をしており、U.N.K.L.E.の"Never Never Land"等の作品でも、その影響が顕著に感じられる。今回は"Tectonic Shift"にて、ジョン・バリー風のスコアワークを見せてくれる。

Isabel Bayrakdarianはカナダを中心に国際的に活躍し、輝かしい業績を誇るソプラノ・ソリスト。レパートリーは、モーツァルトからアルメニアの民族音楽までと幅広く、オペラチックでありながらLisa Gerrardのようなエキゾチックさも併せ持つ声質。有名な所では、『ロード・オブ・ザ・リング~二つの塔』の"Evenstar"(夕星姫)でフィーチャーされている。

Kiran Ahluwaliaは、ユーノー賞にも輝いたインド・パキスタン系のパンジャブ・シンガー。スイスのトリップホップバンド、LunikのJaelは"Chimera"に引き続き参加。"Poem"にも参加したMediaeval Baebesは、その名の通り、中世の声楽曲を現代的サウンドで奏でる女性ユニット。今回はKatherine Blakeをメインに仕立ててパフォーマンス。

他にはカリスマ的シンガーで薄氷のようなヴォイスを響かせるKirsty Hawkshaw、ハスキーで包み込むような歌声のZoe Johnston、そしてKristy Thirskの官能のヴォーカルが今作でも際立っている。Kristy Thirskは"Nuages Du Monde"のレコーディングにあたり、2曲に参加している。もう一曲はアウトトラックとなった可能性が高い。



どう聴こえるか                                                   .

Conjure Oneの"Extraordinary Ways"では、生ドラムをダブ処理したよりリズミックなライヴ感と、エスノグルーヴ、アトモスフィアの多層的な曲構築が試みられていた。

"Nuages Du Monde"で遂げられた進化は、それらのエレメンツを更にソリッドにしてビートセクションを前面に押し出していることにある。"Semantic Spaces"の頃はまだまだインダストリアル・ダンスの荒っぽい音使いが強く、"KARMA"ではあまりにもニューエイジ・トリップホップの汎化された方法論が用いられていた。その後の"Poem"、"Chimera"は神秘的なシンセとトライバルパーカッション、打ち込みのビートの繊細な調和に鋭いセンスが覗えるようになり、"SS"以降の従来のサウンドは"Chimera"によって突き詰められたという感が強い。その作風はポップでありながら、世界各地のエスノ・エレメントをシークエンスとして取り込み、一曲の流れの中で聴かせてしまう。

"Nuages Du Monde"は、それらにおいても一貫して存在したDelerium=FLAのエッセンスであるベースワークを主軸に、東欧~中東のエスノ・エレメントにキリスト教圏的ムードを加味して、退廃的な官能と背徳、そして瑞々しい恍惚感を放っている。この感覚はより"KARMA"に近く、同作品で主にサンプリングされていたDead Can Danceへの彼ら流のオマージュとも思える。

また、これまではサンプリングに頼っていた民族歌唱の部分を、Kiran AhluwaliaやIsabel Bayrakdarianといったその筋のプロフェッショナルにオファーすることで、もっとフレキシブルな作曲を可能にしたと思われる。



各曲レビュー・試聴        (※ クリックするとサンプルが聴けます)     .

"Nuages Du Monde" -雲の果たて


1. Angelicus (128kbps/05:10) -天使 [feat.Isabel Bayrakdarian]

KARMAと同じダークなシンセ・ドローンからの導入。FLAに独特のアップテンポなベースとトライバル・パーカッションに導かれ、Isabel Bayrakdarianのオペラが神秘の森を駆ける。


2. Extollere (96kbps/32sec)-いと高き誉れ [feat.Katherine Blake & Mediaeval Baebes]

Mediaeval Baebesとの再会。この電子音とビートは"The Best Of..."に収録された"Paris"に似ているが、パンフルートの導入で妖しさを加味しながら、より透明な天上の音楽を奏でている。


3. The Way You Wanted To Be (96kbps/42sec)-希われた径   [feat.Zoë Johnston]

灰色の湿ったトリップホップ。軽いピアノがともすれば安っぽくなりがちだが、ブラスのミスマッチで、特異な印象がフックとして残る。マイナー調でありながら、徐々に浮上していくコード進行に救われた気分になる。


4. Indoctrination (96kbps/37sec)-教化 [feat.Kiran Ahluwalia]

東欧的な哀愁を漂わせるイントロから、くぐもったドープなビート。リズムが4/4に加速すると、インストゥルメントが一気に分化する。"Remembrance"以来聴かれなかったプログレ的なフラットで力強いパーカッションが登場する。病的な熱を感じさせるベースが終盤でうねる所もFLAらしい。


5. Self-Saboteur (96kbps/37sec) - 内から貪るもの [feat.Kristy Thirsk]

Delerium、Kristy Thirsk両者にとって新しい曲。どこかヒンディー・ポップの趣を覗わせる。残念ながら伸びやかで瑞々しいアンジェリック・ヴォイスはあまり出てこない。とはいえ、悶えるような妖しい歌声とファルセットの陰影はやはり美しい。


6. Tectonic Shift (sample.1 sample.2) [96kbps/48sec,60sec] -地殻移動

シネマティック・サウンドスケープという表現が相応しい、最もドラマティックな曲。導入からフルートで奏でられるフレーズは、Dead Can Danceの"Windfall"そのものである。

Dead Can Dance / "Windfall"

Chris Elliottのストリングスに乗るように次第にパーカッションとウワモノが増えていき、中盤から転調を繰り返す度に劇的な展開を向かえる。後半でダブ処理されたビートとシタールが重なり、インド風のオーケストラが登場するクライマックス。だが"Chimera"よりも抑制されている。

そういえばBill Leebは最近のインタビューで、映画音楽への関心を示していた。これもアピールなのかもしれない。


7. Lumenis (96kbps/45sec)-輝けるもの       [feat.Isabel Bayrakdarian]

幽玄なイントロと共にIsabelのオペラ・ヴォイス。彼女は"Nuages Du Monde"の楽曲を持ち歌にして、コンサートホールで唄いたいとか。これも見事なインスピレーションで唄いあげており、彼女の代表曲とするのに異論はない。

やはり転調が多く、前半のストリングスとエレクトロニクスの絡みはCraig Armstrongを思わせるが、後半でDead Can Danceのダークウェーブ色に回帰する。各民族楽器が添うようにして教会圏のオペラを彩る。


8. Fleeting Instant (96kbps/49sec)-刹那        [feat.Kirsty Hawkshaw]

Kirsty Hawkshawがウィスパー・ヴォイスで唄う。チャント風コーラスが非常に扇情的。後半の抜けるような爽やかさも筆舌に尽くし難い。"Nuages Du Monde"で最も好きな曲。


9. Sister Sojourn Ghost (96kbps/46sec)-シスター・ソジャーンの亡霊  [feat.Katherine Blake & Mediaeval Baebes]

まるでメロ・ドラマで聴けそうな安いピアノ・ワークだが、ミディーヴァル・ベイブスの古風な歌声とともに押し切られてしまうと、後半の展開部の大袈裟な盛り上がりにも感動できてしまう。


10. Lost And Found (128kbps/04m16s) -失って見つかるもの [feat.Jaël]

チャントが明滅するサイバーなグルーヴで幕を開けるトリップ・ホップ。歌声やダブにイリーガルな処理が施され、未来的で涼やかなイメージを放っている。Jaelの可憐な歌声とサウンドが実にマッチしている。このクールで均整のとれたコンストラクションも、"KARMA"以来であるが、これはもっと新しい。切り込んでくるワウワウ・ギターがオシャレ。これも最も好きな曲。


11. Apparition (96kbps/42sec) -顕現

ボーイ・ソプラノと教会風コーラスが哀愁溢れる現代的メロディを歌う。サンプリング元は不明。いちいちピアノが目立つが、これが"Nuages Du Monde"のトレード・マークかもしれない。ビートシークエンスに抑揚が効いていて、単調でも飽きが来ない。



総括・感想                                .

ダーク、アトモスフェリック、そしてアップテンポ、ミッドテンポ。この点でBill Leebは珍しく製作開始段階でのリスナーへの約束を守っている。各曲とも音の階層がクッキリとクリアになっていて、とりわけソリッドなビートワークとシーケシングが際立っている。これまでのDeleriumには無かったようにビートが解りやすく、レイヤーがフラット(ビートセクション+それ以外のパート)であるという点においても"KARMA"に共通するものがある。

しかし、"Poem"や"Chimera"にさえあった、例えば"Terra Firma"や"Amongst the Ruins"、"Eternal Odyssey"と"Returning"、または他のあらゆるポップソングとアンビエントとの境界で危ういバランスの内に存在していた神秘的、あるいは病的で魂を削るような『ヘヴィさ』が感じられない気がするのも事実である。

それぞれの曲は本当によく纏まっており、新たな試みも、音的には完成され、成功しているように聴かれるが、KARMAファンが本当に聴きたかったものが果たしてこうだったのか、"Poem"以来のポップ色を期待する向きにも十分応えられない、良く言えば"Nuages Du Monde"は本当に新しいアルバムであり、新たに迎合するリスナーを取り込める余地もあろう。私自身は未だ評価と態度を決めかねている。



変遷                                                              .

1980年代からカナダを中心にカルト的人気を集めてきたEBMユニット、FLAの主宰Bill Leebが多角的に並行するサイドユニットの一つとして、このデレリアム名義ではタンジェリン・ドリームやSPK(グレアム・レヴェル)の影響下にあるダークウェーブ・サウンドをアンビエント風に、毎回異なる試みでソフィスティケイトした作品を発表してきた。Michael BalchやChris PetersonがDeleriumにおいて主な活動を果たした時期でもある。

1994年、Nettwerk移籍後に当時オルタナティブ・バンドRose ChroniclesのヴォーカリストであったKristy Thirskと出会い、ソングライティングにおいて彼女の多くのアイデアとパフォーマンスに拠りながら"Semantic Spaces"を完成。本国カナダでは"Flowers Become Screens"がスマッシュ・ヒットを記録し、"KARMA"からは各方面のヴォーカルタレントと"共作"を行うフィーチャリング方式を確立。 Sarah McLachlanを起用した"Silence"はDelerium最大のヒットチューンとなり、以後数年に渡り多くのリミックスが生まれた。とりわけDJ Tiestoによるリミックスは、トランスシーンに一時代を築くなど、クラブミュージックへの影響力も無視できるものではない。(Sarah Mclachlanの夫、Ashwin Soodがドラマーとして"Chimera"に参加している)

ポップとニューエイジの微妙なバランス(アンバランス)と拮抗の並存する特徴的な作風が"Poem"、"Chimera"でも段階的に追求され、新しいファン層の支持を得てきたが、再びKARMAのようなニューエイジ色の強い作品を望む声も少なくなかった。"Poem"では一時Rhys FulberとKristy Thirsk(下書き段階では参加)が抜け、Bill Leebの内省的なエレクトロアコースティック・アルバムとしての色合いが強く出た貴重な作品。Chimeraからは実力派プロデューサーであるCarmen Rizzoのもと、多くのパフォーマーが新規参入し、プロデュース面での合理化を見せた。

Frontline Assemblyとしては今年6月に"Artificial Soldier"を発表。その攻撃的な作風が"Nuages Du Monde"に何処かリンクしていないか期待したが、アップビートであるということ以外、見事に使い分けているようである。


Deleriumの歴代作品についてはこちらを参照 >>

:: Delerium Maniax :: >> http://delerium.crossfade.biz/index.shtml
    Delerium.ca       >> http://www.delerium.ca/



デレリアムを支える人達 (Artwork, Mix.)               .

カヴァーアートワークは長年、Bill Leebと夫婦関係にあったCarylann Loeppkyが手掛けてきた。華やかで時代的だけど、どこか退廃したコラージュが彼女の持ち味。"KARMA"の幽玄な雰囲気を持つアートワークはファンにも定評があり、1998年のユーノー賞、"Best Album Design"にもノミネートされている。

>> http://www.carylann.com/

ミキシング・エンジニアには、FLA時代から付き合いが長く、Tori AmosやRose Chroniclesとも仕事をしてきたGreg Reelyが主に務めているが、"Nuages Du Monde"では未確認である。しかし"KARMA"においては、"Silence"、"Euphoria"のミキシングは、クランベリーズのエンジニアであったMike Plotnikoffが行っていたことは特記しておかなければならない。



構成にやや違和感があるのは、
新アルバムを中心に組み替えた為です。
尚、用意した試聴ファイルの二次使用は避けてください。
アルバム発売の際にはもっと詳細な情報が入るので、
どんどん改訂していきたいと思います。