□ St.Gallen Kathedrale/Stiftsbibliothek
(ザンクトガレン大聖堂/付属図書館)
概要 .
東スイス地方、ボーデン湖近くに位置する歴史的な町、
ザンクトガレンに聳える中心的な建造物。
カロリング朝時代の面影を残すバロック様式の建築は、
実は10世紀近くに渡る破壊と再建の繰り返しを乗り越えてきたもの。
現在では修道院としては機能していなく、重要な学術研究、
観光や町民の憩いの場として、広く一般に公開されている。
また、隣接して修道院付属図書館が建造され、
18世紀に作られた大広間の装飾はロココ様式に基づいている。
1983年にユネスコ世界文化遺産に指定。
歴史 .
西暦612年にアイルランド人修道僧ガルスによって開かれた小さな僧房と礼拝堂に端を発し、8世紀頃にベネディクト派院長の聖オトマー指導のもと、後の9-10世紀にかけてヨーロッパ中の学問の総本山として、史上最も重要な史料や学術書が集められ、ラテン語からドイツ語への翻訳が行われた。中には7世紀、グレゴリウス1世の呼びかけで編纂が始まり、その後フランク王国が主導した『グレゴリオ聖歌』の現存する最古の写本や、世界最古のものとされる建築設計図などが現在に至るまで貯蔵されている。
特徴 .
ザンクトガレン修道院の歴史上際立った隆盛の陰には、写本製作における類稀な装飾技術が支えたところが大きく、よってより広い範囲に蔵書を求めることができたと思われ、(製本過程においては羊皮紙の金箔押しや宝石までが埋め込まれる。)フランク王国の公式書体、ミナス・キュールで書かれた『ヴォルコフツ詩篇』や、『エヴァンゲリウム・ロングム』の「L」文字は、装飾文字の達した頂点とさえ評される。特記事項としては他に、グーテンベルク朝の遺した印刷本の最初期の形である『インキュナブラ』を1600冊超所蔵する。
<参考>
http://www.shajisitu.or.tv/c6.htm
あるいはその起源から、9世紀半ばまでは貴重なケルト写本が多く存在していたとされ、ガリア・ゲルマン以北の、よりルーツの古い文献に特化した収集力を持つ。またザンクトガレンが所蔵する多くの写本"Codex Sangallensis"には、それぞれ最古の音楽的記譜法が見られ、今尚研究と解読の対象とされている。
(オッフェルトリウム:文字上部にネウマ譜の基となる音節記号が見られる)
図書館内部も同様に、床や聖堂に至るまで膨大な装飾に溢れており、ニケーア公会議、コンスタンチノープル公会議、エフェソス(エペソ)公会議、カルケドン公会議という、キリスト教史上重大な会議となったフレスコ画が描かれている。そして何故か、19世紀に寄贈された紀元前700年前のエジプト人女性のミイラまでがあるという。
アクセス・観光 .
チューリッヒから東へ約一時間。小道に沿って綺麗な飾り出窓とドイツ風の彩色が目立つ家が立ち並ぶザンクトガレン旧市街地は、繊維・織物産業でも栄え、ソーセージが美味しいそう。こうした名物も全て、修道院の産物。ザンクトガレンの街は昔も今も、歴史の叡智の後光を受けて、凛とした佇まいを誇っている。
そんなわけで、
私が昔から憧れ続けているスイスの最重要文化遺産、
ザンクトガレン修道院について扱ってみました。
次回はコルビジェの建設したロンシャン教会について
(できればいいなー。。)
□ Tunes of the Day
□ Chanticleer / "Mysteria Gregorian Chants"
♪ Antiphona: Hosanna,Psalm 23
♪ Improperia: Popule Meus
第2バチカン公会議によって、各国語の典礼歌が認められるようになったのに対し、近年ではその歴史上最古のものとされる音楽的重要性と価値が脚光を浴びてきたグレゴリオ聖歌。単旋律、無伴奏という最も素朴で純粋な形を持ちながら、その本質は、アルプス以北の伝統音楽やユダヤ教聖歌、アンブロジウス聖歌、東方教会聖歌、古代ギリシャ、ヘレニズム音楽の集成とも言うべき、汎ヨーロッパ的なものであった。旋律は8種の教会旋法に大きく分類され、主音(終止音)と属音(支配音)で構成されるあらゆるヨーロッパ音楽の定量的記述において礎を築いた。
ここに紹介する"Antiphona(ダヴィデの子にホザンナ)"は、以前ここでも紹介した紀元前2-1世紀に書かれた古代ギリシャの『セイキロスの墓碑銘』と酷似しているとされているもの。Enigmaファンにとっては、"Sadeness(Principles of Lust)"でサンプリングされているとして最も有名なものだろう。"Improperia"には、ギリシャ語部分がビザンチン聖歌の特徴に極めて一致するものがあるとのこと。
□ The Theodore Vassilikos Ensemble / "Musique Sacree Byzantine"
♪ Marie, Le Seigneur est Ave Toi
ギリシャ正教のビザンチン聖歌は、17世紀以降、多くの作曲家がアレンジを試みた。中でも最も偉大とされるペトロス・ベレケティスによる『オクトエーコスによる生神女マリア大讃歌』。オクトエーコスとはビザンツ聖歌の「八つの調」であり、各曲はリズムやメロディの異なった第1-4正格エーコス、第1-4変格エーコスで唄われる。ペトロス・ベレケティスの作品は、過去数世紀のギリシャ正教会聖歌をそのままの形で残し集約していることでも価値がある。テオドロ・バシリコス・アンサンブルによる演奏。
□ Haissmavourk Choir / "The Music of Armenia (Vol1.Sacred Choral Music)"
♪ Sirt im Sasani
♪ Khachi ko Kristos
恐らく私が知る限り最も美しいアルメニアの合唱曲。4世紀、アルメニアは世界で最初にキリスト教を受容した民族であり、その伝統音楽はグレゴリオ聖歌に多分の要素を遺しています。ここで挙げるのは現代作曲家Komitasによってアレンジされたもの。7世紀に起源を持つ"Khachi ko Kristos"がここで聴ける1番グレゴリオ聖歌に近い。Sahak Dzoraporetsiによる解釈。
□ Pomerium / "Musical Book of Hours"
♪ Josquin Des Prez / "In Principio erat Verbum"
最後に、教会音楽の大成に関わった巨匠ジョスカン・デュ・プレの作品。ヴァチカン図書館に所蔵されているスクリプトから。
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現在、もう一つブログを準備中です。
おおよそ構想は纏まっているのですが、
あえて公開することのないパーソナルなものになりそうです。