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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

MUSIQUE DE LA GRÈCE ANTIQUE.

2006-03-08 02:55:47 | art music

Cover

□ "Musique de la Grèce Antique"
  / Atrium Musicae De Madrid, Gregorio Paniagua

グレゴリオ・パニアグア率いるアトリウム・ムジケー古楽合奏団による『古代ギリシア音楽』の考古学的検証と“遊び”。ハルモニア・ムンディのアナログ録音特選名盤に選ばれた一枚。音楽史がグレゴリオ聖歌によって体系付けられるよりも遥か遥か昔、後にあらゆる西欧芸術の潮流を形成するヘレニズム文化の源流、紀元前にまで遡って、世界各所で発掘されたパピルス紙や大理石といった遺跡的な文化史料や、その断片、後世の写本を元に、(出典の信憑性は問題にしていない)芸術的な意匠を加えて復元、当時の楽器なども研究して復元したもの。ヒュドラウロス(水力オルガン)の音色が面白いです。

ギリシャ語、ラテン語、アラビア語の理論書が統合されるより以前、太古からギリシャ音楽では二種類の記譜法が用いられていました。この二つ、15の異符号を含む器楽記譜、24文字のイオニア・アルファベットからなる声楽記譜法については理論研究が明らかにしてきましたが、その『リズム』については、それを指示をする記述はほとんどない為、(以前過去ログで紹介した、『セイキロスの墓碑銘』においては、考古学上非常に貴重な『リズム符号』が存在した。)そこを演奏者の幻想と意匠に委ねて完成したのが、これらの楽曲です。

これに関して、この作品の核心となる意匠については、私の拙文よりもパニアグア自身の寄稿を引用したい。

エウリピデスのパピルスの最初の音が響く前に、われわれは録音を、「アナクルーシス」すなわちプレリュードの手法による「響きの爆発」ではじめた。これは、かくも遠く隔たった耳慣れぬ音響世界に乗り込んでゆくために必要な、緊張感のある静寂を創り出すものである。

パピルスや大理石の断片にはおびただしい欠損があるが、そうした個所のために、われわれはさまざまな解決を発見した。まず、絵や彫刻を中立的なセメントで修復する場合のように、余分な手を一切加えず断片を尊重する方法。次に、その旋律線が次にくる断片のそれと符合する可能性のある時は、「反考古学的」復元を行って、それらを(しかるべき抑制を伴ってではあるが)われわれのファンタジーで染め上げた。

第3に、パピルス・オスロでのように、補いようのない空白を、嘆きに満ちたまったく不協和な響きや噪音、機能性のない和音で埋めたケースもある。

末尾の部分では、クレタ=パエオニアのリズムがしだいにテンポを速めて、われわれをしめくくりのカタストローフへと連れていく。この「カタストローフ」という言葉は、ここでは二重の意味を含んでいる。すなわち、普通の用法における破局、災いと、音楽における静止───リラの歌が鳴り終えたあとに中心軸に静止すること───を、それは同時に意味するのである。


Hymne à la Muse [A.D.130-]

クレタ島に生を受けた作曲家、メソミデス(後130年頃)のものとされる「ミューズ(ムーサ)への讃歌」。導入として用いられる別々の二つの曲を繋げたもの。ギリシア神話におけるムーサは、芸術や学問を司る9人の女神で、記憶の女神ムネモシネとゼウスの娘達。歌詞では、詩作においてムーサに祈り、後半ではその一人、抒情歌を司るカリオペーとアポロンの名も登場します。使用楽器は古代ギリシャを代表する弦楽器キタラ(調和、節度を重んじるアポロン的思想を象徴)と、カノン(ピタゴラスが発明した単弦楽器。モノコルド。音程比測定器)


Hymne à Néméis [A.D.130-]

同じくメソミデスの作品。人間の傲慢さを抑え、罰する女神ネメシスへの叙述が述べられていましたが、ここでは器楽の演奏のみに絞られています。使用楽器はテュンパノン(打楽器。ディオニソス祭で女性に演奏された。)、プラギアウロス(リビア起源の横笛)、アウロス(これも古代ギリシャを代表する管楽器で、鋭い音色をもってディオニュソス的世界を表現する)、セイストロン(シストロム。馬蹄形の金属製打楽器)、アスカウレス(バグパイプの一種)。


Aenaoi Neferai [B.C.450-385?]

アリストパネス(B.C.450-385)の喜劇『雲』が写筆された15世紀頃の史料から、第275-277行の引用。雲のコロスの入場歌(パロドス)の導入部、『「不断に流れる雲」たるわれらは、オケアノス(大海)のふところを出て、登っていこう。』と歌われています。演奏は40弦を持つ古代ギリシア最大の撥弦楽器エピゴネイオンとディスコス(ハンマーで叩く金属楽器)、アウロス、エリュモス(角笛様のプリュギア地方のアウロス)、クシュロフォノン(アプリア地方の飾り壷に描かれていた、梯子状の木琴)、フュサリス(アウロスの一種)、そしてヒュドラウロス(水力オルガン。パンの笛に水圧で風を送る。クテシボイス、あるいはアルキメデスの発明)


Hymne Chrétienne d'Oxyrhynchus [A.D.200-300?]

エジプトのオクシュリンコスで発見された「パピルス・オクシュリンコス 1786」に記述されている、最古のキリスト教讃美歌。『トリニティ』(三位一体)を称えながら、「アーメン」で結ばれます。演奏楽器は前述のセイストロン、ペクティスと呼ばれる三弦の楽器。


Papyrus Zenon.Cairo fragment [B.C.200]

出典は「パピルス・ゼノン 59533 カイロ断片」で、カイロ博物館に保存されている3行の断片。破損が著しいですが、悲劇の一部と推測されています。演奏はキュンバラ(シンバル様の楽器)、アウロス、ヒュドラウロス。



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突然、大雨と雷がやってきました(><。)
ゆっくり眠れそうです。(笑)
その前に高台に写真取りに行こうかな。。