ALSに対する神経保護薬として認可されているものは,アメリカでも日本でもRiluzole(商品名リルテック)のみである.残念ながら生存期間に対する効果は強力なものではなく,新たな神経保護薬の登場が待たれる.米国神経学会からALSに対する神経保護薬の臨床治験の状況についてのレヴューが報告されているので紹介したい.
目的は第Ⅲ相試験(実際の治療に近い形での効果と安全性を確認する試験.検証的臨床試験とも呼ばれる)を推進すべき薬剤は何であるか明らかにすることである.方法としては,識者や研究者が集まり,①理論上,ALSの病態に有用であると予想される薬剤,②すでに動物モデル(SOD1 G93Aマウス)やヒトにおける臨床試験で効果が検討されている薬剤,③ALSに対しすでに認可されている,もしくは認可が検討されている薬剤について,その有効性を,科学的根拠,安全性,動物モデルにおける有効性,ヒトへの応用の可能性という4つの観点から吟味した.結果は以下の通りである.
1. 神経保護効果ありそう → 113薬剤
2. そのうち有効性が高い → 24薬剤
3. 第Ⅲ相試験が予定されている → 2薬剤
Talampanel(抗グルタミン酸作用)
Tamoxifen(Protein kinase C阻害作用)
4. 第Ⅲ相試験 進行中 → 4薬剤
Ceftriaxone(抗酸化・抗グルタミン酸作用)
IGF-1 peptide(神経成長因子)
Minocycline(抗アポトーシス作用)
ONO-2506(抗グルタミン酸作用)
5. FDA(アメリカ食品医薬品局)認可 → 1薬剤
Riluzole(抗グルタミン酸,Naチャネル不活化)
1999年本邦でも認可.
2の24薬剤のうち,3から5以外のもの(AEOL 10150, arimoclomol, celastrol, coenzyme Q10, copaxone, IGF-1–viral delivery, memantine, NAALADase inhibitors, nimesulide, scriptaid, sodium phenylbutyrate, thalidomide, trehalose)は,有望ではあるもののさらに十分な評価を行った後,第Ⅲ相試験への移行が望ましいものである.
候補の薬剤を見て分かるように作用機序はさまざまである.今後,がんの治療などでも行われているように複数の薬剤の組み合わせによる治療も検討すべきと考えられる.また有効性がすでに示されているRiluzoleにしても,今後,類似体を開発するなどの試みも必要と考えられる.
問題点としては,よく指摘されることではあるが,家族性ALSのモデルマウスSOD1 G93Aマウスに対する効果が,ヒトの孤発性ALS の治療効果予測の目安になるかということである.実際にマウスで有用性が示されたcelebrexやcreatine,gabapentinといった薬剤はヒトの臨床治験で有効性を示すことができなかった.これはヒトとマウスという種の差や,研究室ごとに異なる実験デザインの問題なども関与しているものと考えられる.
このレヴューは毎年更新するようである.正しい評価に基づく治療薬が一刻も早く臨床の場にもたらされることを期待したい.
Neurology 67; 20-27, 2006
目的は第Ⅲ相試験(実際の治療に近い形での効果と安全性を確認する試験.検証的臨床試験とも呼ばれる)を推進すべき薬剤は何であるか明らかにすることである.方法としては,識者や研究者が集まり,①理論上,ALSの病態に有用であると予想される薬剤,②すでに動物モデル(SOD1 G93Aマウス)やヒトにおける臨床試験で効果が検討されている薬剤,③ALSに対しすでに認可されている,もしくは認可が検討されている薬剤について,その有効性を,科学的根拠,安全性,動物モデルにおける有効性,ヒトへの応用の可能性という4つの観点から吟味した.結果は以下の通りである.
1. 神経保護効果ありそう → 113薬剤
2. そのうち有効性が高い → 24薬剤
3. 第Ⅲ相試験が予定されている → 2薬剤
Talampanel(抗グルタミン酸作用)
Tamoxifen(Protein kinase C阻害作用)
4. 第Ⅲ相試験 進行中 → 4薬剤
Ceftriaxone(抗酸化・抗グルタミン酸作用)
IGF-1 peptide(神経成長因子)
Minocycline(抗アポトーシス作用)
ONO-2506(抗グルタミン酸作用)
5. FDA(アメリカ食品医薬品局)認可 → 1薬剤
Riluzole(抗グルタミン酸,Naチャネル不活化)
1999年本邦でも認可.
2の24薬剤のうち,3から5以外のもの(AEOL 10150, arimoclomol, celastrol, coenzyme Q10, copaxone, IGF-1–viral delivery, memantine, NAALADase inhibitors, nimesulide, scriptaid, sodium phenylbutyrate, thalidomide, trehalose)は,有望ではあるもののさらに十分な評価を行った後,第Ⅲ相試験への移行が望ましいものである.
候補の薬剤を見て分かるように作用機序はさまざまである.今後,がんの治療などでも行われているように複数の薬剤の組み合わせによる治療も検討すべきと考えられる.また有効性がすでに示されているRiluzoleにしても,今後,類似体を開発するなどの試みも必要と考えられる.
問題点としては,よく指摘されることではあるが,家族性ALSのモデルマウスSOD1 G93Aマウスに対する効果が,ヒトの孤発性ALS の治療効果予測の目安になるかということである.実際にマウスで有用性が示されたcelebrexやcreatine,gabapentinといった薬剤はヒトの臨床治験で有効性を示すことができなかった.これはヒトとマウスという種の差や,研究室ごとに異なる実験デザインの問題なども関与しているものと考えられる.
このレヴューは毎年更新するようである.正しい評価に基づく治療薬が一刻も早く臨床の場にもたらされることを期待したい.
Neurology 67; 20-27, 2006
いつも神経難病の専門的なお話を書いて
くださってありがとうございます。
父がALSです。
いつの日か薬を飲めばALSが治る!
ような日が来る事を心から願っています。
>>正しい評価に基づく治療薬が一刻も早く臨床の場にもたらされることを期待したい.
本当にこのように思います。
時間が無くて焦ってますので、一日も早く
安心安全な薬が出来ると良いです。
ALSは一生出会わない人は出会わないまれ?
な病気だと思うので(私もそうでした><;)
pkcdelta様のように、広い医療知識を持った方が
ブログに書いてくださって嬉しいです!
これからも楽しみしています。
pkcdelta様は
>>広い医療知識
病院の先生ですね><;医療知識
は持っていて当然ですね。
失礼しました!!!