ドパミンアゴニストは大別すると,構造の違いから麦角アルカロイド性アゴニストと非麦角のアゴニストに分類できる.
麦角系;カバサール,ペルマックス,ブロモクリプチン
非麦角系;ドミン,ビ・シフロール,レキップ
麦角系のカバサールとペルマックスの利点は何と言っても半減期が長いことで(カバサールでは43~72時間),とくにカバサールの1日1回内服は,内服する薬の種類や数が多いパーキンソン病(PD)患者さんにとってはありがたい.しかしドパミンアゴニストには以下のような厄介な副作用があり注意を要する.
妄想・せん妄
突発的睡眠
病的賭博・性欲過剰・衝動的買い物
胸膜,心膜,後腹膜線維化・心臓弁膜症
とくに心臓弁膜症は2002年にブロモクリプチンにおいて初めて報告されたが,その後も麦角系アゴニストのペルマックス,とくに高容量使用者において心臓弁膜症が報告された.しかし,いずれの報告も比較的少数例での検討であった.
今回,本邦のPD患者を対象にして,ドパミンアゴニストの使用と心臓弁膜症の発生頻度の関連を調べた研究結果が報告された.対象は香川県立中央病院に入院した210例のPD患者(2004年9月~2005年9月.retrospective study)で,以下の5群に分類し,心電図と経胸壁心エコーを施行した.
①カバサール治療群(16名)
②ペルマックス治療群(66名)
③ビ・シフロール治療群(16名)
④過去に麦角系で治療を受けた群(27名)
⑤非治療群(85名;L-DOPAを含め治療されていない群)
研究デザインは非治療群を対象としたcase-control studyで,多重ロジスティックモデルを用いて,年齢,性別,罹病期間といった因子に関しても相対危険度の計算を行っている.
結果だが,非治療群に比べ,カバサール治療群の心臓弁膜症発生頻度は有意に高かった(17.6% vs 68.8%).ペルマックス群とビ・シフロール群では発生頻度に差はなかった(28.8% vs 25%).交絡因子の調整を行ったオッズ比の検討では,カバサール治療群では,ペルマックスやビ・シフロール治療群と比較して有意に高かった.
カバサール12.96(95%CI 3.59-46.85) 一日の平均投与量3.8mg
ペルマックス2.18(95%CI 0.90-5.30) 1.4mg
ビ・シフロール1.62(95%CI 0.45-5.87)1.7mg
(ちなみに年齢は1.04,罹病期間は1.01,性差は1.88であった.)
さらにカバサール治療患者において,心臓弁膜症の有無で2群に分けて比較してみると,弁膜症患者ではカバサールの累積投与量が有意に高く,かつ治療期間も有意に長かった.カバサールによる弁膜症(閉鎖不全)は,A弁,M弁,T弁いずれにおいても認められ,とくに弁による特異性はなかった.
以上より,カバサールの累積投与量と長期にわたる治療は,心臓弁膜症の危険因子であることが明らかとなった.この研究ではカバサールによる心臓弁膜症の症状や予後については検討されていないものの,臨床的にきわめて重要な指摘である.いずれにしても現在,麦角系アゴニストを使用中の患者さんにおいて,無症状であっても心エコーの確認,使用量の見直し,弁膜症合併患者における非麦角系への切り替えは必要になるだろう.
ちなみに麦角系アゴニストによる弁膜症の機序については十分に分かっていないが, 5-HT2B受容体に作用して,培養heart valve cellの線維化を引き起こし,その作用はカバサールでとくに強いという報告がある.
Neurology 67:1225-1229, 2006
麦角系;カバサール,ペルマックス,ブロモクリプチン
非麦角系;ドミン,ビ・シフロール,レキップ
麦角系のカバサールとペルマックスの利点は何と言っても半減期が長いことで(カバサールでは43~72時間),とくにカバサールの1日1回内服は,内服する薬の種類や数が多いパーキンソン病(PD)患者さんにとってはありがたい.しかしドパミンアゴニストには以下のような厄介な副作用があり注意を要する.
妄想・せん妄
突発的睡眠
病的賭博・性欲過剰・衝動的買い物
胸膜,心膜,後腹膜線維化・心臓弁膜症
とくに心臓弁膜症は2002年にブロモクリプチンにおいて初めて報告されたが,その後も麦角系アゴニストのペルマックス,とくに高容量使用者において心臓弁膜症が報告された.しかし,いずれの報告も比較的少数例での検討であった.
今回,本邦のPD患者を対象にして,ドパミンアゴニストの使用と心臓弁膜症の発生頻度の関連を調べた研究結果が報告された.対象は香川県立中央病院に入院した210例のPD患者(2004年9月~2005年9月.retrospective study)で,以下の5群に分類し,心電図と経胸壁心エコーを施行した.
①カバサール治療群(16名)
②ペルマックス治療群(66名)
③ビ・シフロール治療群(16名)
④過去に麦角系で治療を受けた群(27名)
⑤非治療群(85名;L-DOPAを含め治療されていない群)
研究デザインは非治療群を対象としたcase-control studyで,多重ロジスティックモデルを用いて,年齢,性別,罹病期間といった因子に関しても相対危険度の計算を行っている.
結果だが,非治療群に比べ,カバサール治療群の心臓弁膜症発生頻度は有意に高かった(17.6% vs 68.8%).ペルマックス群とビ・シフロール群では発生頻度に差はなかった(28.8% vs 25%).交絡因子の調整を行ったオッズ比の検討では,カバサール治療群では,ペルマックスやビ・シフロール治療群と比較して有意に高かった.
カバサール12.96(95%CI 3.59-46.85) 一日の平均投与量3.8mg
ペルマックス2.18(95%CI 0.90-5.30) 1.4mg
ビ・シフロール1.62(95%CI 0.45-5.87)1.7mg
(ちなみに年齢は1.04,罹病期間は1.01,性差は1.88であった.)
さらにカバサール治療患者において,心臓弁膜症の有無で2群に分けて比較してみると,弁膜症患者ではカバサールの累積投与量が有意に高く,かつ治療期間も有意に長かった.カバサールによる弁膜症(閉鎖不全)は,A弁,M弁,T弁いずれにおいても認められ,とくに弁による特異性はなかった.
以上より,カバサールの累積投与量と長期にわたる治療は,心臓弁膜症の危険因子であることが明らかとなった.この研究ではカバサールによる心臓弁膜症の症状や予後については検討されていないものの,臨床的にきわめて重要な指摘である.いずれにしても現在,麦角系アゴニストを使用中の患者さんにおいて,無症状であっても心エコーの確認,使用量の見直し,弁膜症合併患者における非麦角系への切り替えは必要になるだろう.
ちなみに麦角系アゴニストによる弁膜症の機序については十分に分かっていないが, 5-HT2B受容体に作用して,培養heart valve cellの線維化を引き起こし,その作用はカバサールでとくに強いという報告がある.
Neurology 67:1225-1229, 2006
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大変参考になる記事のご紹介ありがとうございます。以前から外国でペルマックス投与による心臓弁膜症の報告があり、日本ではペルマックスの1日量が欧米に比べて少ないのでそれほど心配は要らないと言われていましたが、今回の記事でカバサールも原因になることが分かりました。
カバサールを使っている患者が多いので、この記事を私たちのサイトでも紹介させていただきたいと思います。
さらにリンクを貼らせていただければと思いますが、よろしくお願いいたします。
今後ともパーキンソン病についてのニュース等お知らせいただければ幸いです。
ただ、少し疑問があるのは、心臓弁逆流=心臓弁膜症とされていること、カベルゴリンの95%CIがとても広いことです。これは例数が少ないので仕方がないのだとは思いますが、統計学的にはどうなのでしょうか。
層別解析の結果からは、カベルゴリンでは日本の承認用量を超えている人で、よりリスクが高かったということですね。
今のところは臨床症状はみられていないようですが、いずれにしても、承認された用量内で服用することと、しっかりとフォローアップをしていくということが大切なのでしょう。
カベルゴリンの内服量に関しては少量であればあまり神経質にならなくても良いのかもしれません.しかし,実際に患者さんにそのリスクをお話しすると,非麦角系への切り替えを希望される方が多く,プラミペキソールへの切り替えを行うことが少なからずあります.みなさんはどうなさっておられるでしょうか?