Camptocormia(腰曲がり)は,パーキンソニズム,ジストニア,ミオパチー,ALSなどで報告され,とくにパーキンソニズム(パーキンソン病や多系統萎縮症)での報告は多い.詳細は以下の過去の記事も参照していただきたいが,難治性の病態で,かつADLへの影響も大きい.
腰曲がり病(Camptocormia)
Camptocormia(腰曲り)をどう治療するか?
さて今回,今回,本邦より多系統萎縮症に伴い亜急性に出現したcamptocormiaに対し,酒石酸プロチレリン(ヒルトニン)点滴が有効であった1症例が報告された.酒石酸プロチレリンは遺伝性脊髄小脳変性症や多系統萎縮症における小脳失調に対して,日本において使用されてきた薬剤である.その作用機序に関しては興奮性アミノ酸および糖代謝の調節が関与すると考えられている.
68歳女性で,発症後7年が経過している.症状としてパーキンソニズム,失調,多尿を認めた(はっきりと記載していないがMSA-Pと思われる).治療としてL-ドパ,トリヘキシフェニジル内服が行われたが効果は乏しかった.5ヶ月前から15°のcamptocormiaが出現し,その後の5ヶ月間で45°まで増悪した.頭部MRIではputaminal slit sign(被殻外側の線状の異常信号)と小脳•橋の軽度の萎縮を認めた.MRIで傍脊柱筋の異常信号は認めなかった.
小脳失調に対する効果を期待して,酒石酸プロチレリン点滴を行ったところ,驚いたことに治療2日目にはcamptocormiaが改善した.ためしに3日目に酒石酸プロチレリン点滴を中止したところ,症状は元に戻った.このため,再度,酒石酸プロチレリン点滴を再開したところ,再度,症状は改善した.治療効果を検討するために行った腹直筋と傍脊柱筋に対する表面筋電図では,酒石酸プロチレリン点滴の中止中の筋放電は低電位であったが,点滴治療を行うと電位の総京が見られた.この結果から,著者らは傍脊柱筋の運動ニューロン興奮性の低下が,酒石酸プロチレリン点滴により回復したことが本例のcamptocormia改善の主な要因であると考えている.
これまで,酒石酸プロチレリンの作用に関する研究では,ドパミン系神経伝達を調節し,運動ニューロン興奮性を調整することが知られているそうだ.またその反応は迅速であると報告されているらしい.この作用を介してALSの痙性や筋力低下にも効果があることも報告されているそうだ(あまり聞いたことがなかったので驚きである).以上より,酒石酸プロチレリンがMSAに合併する亜急性のcamptocormiaに対して有効である可能性が考えられた.これは本当なのか,もしそうならもっと患者さんが多いと考えられるパーキンソン病におけるcamptocormiaに対する効果はあるのかなど,今後多数例での検討が必要である.
Mov Disord. Online in advance of print
腰曲がり病(Camptocormia)
Camptocormia(腰曲り)をどう治療するか?
さて今回,今回,本邦より多系統萎縮症に伴い亜急性に出現したcamptocormiaに対し,酒石酸プロチレリン(ヒルトニン)点滴が有効であった1症例が報告された.酒石酸プロチレリンは遺伝性脊髄小脳変性症や多系統萎縮症における小脳失調に対して,日本において使用されてきた薬剤である.その作用機序に関しては興奮性アミノ酸および糖代謝の調節が関与すると考えられている.
68歳女性で,発症後7年が経過している.症状としてパーキンソニズム,失調,多尿を認めた(はっきりと記載していないがMSA-Pと思われる).治療としてL-ドパ,トリヘキシフェニジル内服が行われたが効果は乏しかった.5ヶ月前から15°のcamptocormiaが出現し,その後の5ヶ月間で45°まで増悪した.頭部MRIではputaminal slit sign(被殻外側の線状の異常信号)と小脳•橋の軽度の萎縮を認めた.MRIで傍脊柱筋の異常信号は認めなかった.
小脳失調に対する効果を期待して,酒石酸プロチレリン点滴を行ったところ,驚いたことに治療2日目にはcamptocormiaが改善した.ためしに3日目に酒石酸プロチレリン点滴を中止したところ,症状は元に戻った.このため,再度,酒石酸プロチレリン点滴を再開したところ,再度,症状は改善した.治療効果を検討するために行った腹直筋と傍脊柱筋に対する表面筋電図では,酒石酸プロチレリン点滴の中止中の筋放電は低電位であったが,点滴治療を行うと電位の総京が見られた.この結果から,著者らは傍脊柱筋の運動ニューロン興奮性の低下が,酒石酸プロチレリン点滴により回復したことが本例のcamptocormia改善の主な要因であると考えている.
これまで,酒石酸プロチレリンの作用に関する研究では,ドパミン系神経伝達を調節し,運動ニューロン興奮性を調整することが知られているそうだ.またその反応は迅速であると報告されているらしい.この作用を介してALSの痙性や筋力低下にも効果があることも報告されているそうだ(あまり聞いたことがなかったので驚きである).以上より,酒石酸プロチレリンがMSAに合併する亜急性のcamptocormiaに対して有効である可能性が考えられた.これは本当なのか,もしそうならもっと患者さんが多いと考えられるパーキンソン病におけるcamptocormiaに対する効果はあるのかなど,今後多数例での検討が必要である.
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