当科の東田和博先生らが,多系統萎縮症(MSA)の診断基準を満たした自己免疫性小脳失調症(autoimmune cerebellar ataxia;ACA)の2症例を「臨床神経」誌に報告しました.症例1は72歳男性,症例2は68歳男性,両者ともに小脳性運動失調症,自律神経障害,錐体路徴候を認めましたが,症例1では自然経過で症状の改善を認めた点と脳脊髄液検査で炎症所見を認めた点,症例2では急速な進行を認めた点がMSAとして非典型的でした.既知の抗体は検索した範囲で陰性でしたが,ラットの脳切片を用いた免疫組織染色にて両者の血清中にプルキンエ細胞細胞質を標的とする自己抗体を検出しました(図).このため免疫療法を施行したところ,運動失調の改善を認めました.
以上より,MSAの診断基準を満たす治療可能なACAが存在することが示されました.とくに無治療で症状が改善した症例,変性疾患としては急速な進行を呈する症例,脳脊髄液の異常所見を認める症例,MSAには通常合併しない症候を認める症例などではACAを鑑別診断に挙げて,既知の抗体の検索,さらにはラットの脳切片を用いた免疫組織染色(tissue-based assay;TBA)で未知の抗体スクリーニングを行い,免疫療法の可能性について検討する必要があると考えられました.
東田和博,大野陽哉,加藤雅彦,竹腰顕,吉倉延亮,木村暁夫,下畑享良.多系統萎縮症の診断基準を満たし,免疫治療が奏効した自己免疫性小脳失調症の2症例.臨床神経 2024;64:589-593(doi.org/10.5692/clinicalneurol.cn-001979)
以上より,MSAの診断基準を満たす治療可能なACAが存在することが示されました.とくに無治療で症状が改善した症例,変性疾患としては急速な進行を呈する症例,脳脊髄液の異常所見を認める症例,MSAには通常合併しない症候を認める症例などではACAを鑑別診断に挙げて,既知の抗体の検索,さらにはラットの脳切片を用いた免疫組織染色(tissue-based assay;TBA)で未知の抗体スクリーニングを行い,免疫療法の可能性について検討する必要があると考えられました.
東田和博,大野陽哉,加藤雅彦,竹腰顕,吉倉延亮,木村暁夫,下畑享良.多系統萎縮症の診断基準を満たし,免疫治療が奏効した自己免疫性小脳失調症の2症例.臨床神経 2024;64:589-593(doi.org/10.5692/clinicalneurol.cn-001979)