日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

北海道紀行08(3)二つの市庁舎・旭川と山形県の寒河江(その二)

2008-11-13 18:37:37 | 建築・風景

寒河江市庁舎には、山形県の東北芸術工科大学で教鞭をとったことのある建築家香川浩さんの要請によって、DOCOMOMO選定プレートを持って出かけた。香川さんは山形の地に建築文化を根付かせたいと願っているのだ。
所用が在ると聞いていた市長が思いがけず時間を割いてくださった。同行したDOCOMOMO Japanの副事務局長渡邊研司東海大准教授と共にプレートを送呈する。
年輩の市長が述べたという。「俺の元気なうちはこの庁舎を壊させない」。
その市長が言う。「使いにくいんですよ!真ん中に吹き抜けがあって」。でも僕には、このやんちゃ坊主を慈しんでいるように聞こえた。

黒川紀章さんに耐震診断をしてもらった。そして積載荷重を減らした。倉庫や書庫、それに廊下におかれていた書類棚や資料一切を運び出した。なんと正味40トン、100トン分のトラックで運び出したと僕たちを唖然とさせた。
担当課長が苦笑した。「それでも市政には何の支障も起きない」。

まるで僕の部屋のようではないか。あまりの乱雑さを見かねた妻君が3週間をかけて僕の部屋を整理してくれた。さっぱりして部屋が広くなった。でも口には出せないけれど、必要な本がどこかに行ってしまって、サーてどうしたものかと。でもこんなにいい部屋だったかと実は唖然としている(閑話休題)。

市庁舎のどこもかしこも整頓されていて、市民ホールの床のタイルがはっきり見える。三角に焼かれたこの床タイルの組みたて方が華やかで、妙に懐かしい。あの時代の様々な建築の姿を髣髴とさせる。訪れるのは2度目の僕の心が激しく揺さぶられる。実にいい建築だ。

DOCOMOMOのリーフレットを差しあげた。
課長が綴じ込んだ青図を出してくれた。旭川市役所の営繕課に行き撮影許可を得たときのことだ。外から見ると気がつかないと思うが、部屋が足りなくなってピロティ部分を執務室にした、ここをね、と教えてくれる。昔は開放的だったんだけどと、申し訳なさそうだ。
議場は木による壁と波打つ天井で構成され、これが有名なんですよねと案内してくれる係長が、ちょっと自慢げに微笑む。確かに!佐藤武夫の使う人への想いが読み取れる。それがこの建築家の感性なのだ。
それにしても書類の山だ。寒河江のすっきりした有様を伝えようと思ったが、ちょっとためらった。さすがに僕だって、自分の部屋を考えると人のことは言えない。

案内してくれている係長がふと漏らした。10月30日にこの庁舎は50周年を迎える。記念して写真展をやる。
そうか、この庁舎が50歳の誕生日を迎えるのだ。僕がつぶやく。僕より若い、でもお祝いに選定プレートを持ってきてプレゼントすればよかった。係長に営繕課に引っ張っていかれた。課長にもう一度会って欲しい。プレートが欲しい。
撮影をさせていただいたお礼を述べながら、帰京したら営繕課気付けで若き市長にプレートを送呈する約束をした。きっといつまでもこの建築を大切に使ってくれるだろう。それを期待して!

僕は思う。黒川さんが亡くなって1年経った。黒川さんと何度も意見交換した中銀カプセルタワーだけでなく、寒河江談義をしたかった。黒川さんの旭川市庁舎論も聞きたかった。熟するとは何かと。歳を取るのはどういうことかと。
時の過ぎるのがやけに早い・・・北海道の晩秋がざわざわと過ぎてゆく。旭川では雪が降ったとテレビが言っている。

<写真 左・寒河江市庁舎市民ホール 右・旭川市庁舎議場>


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3 コメント

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功罪 ()
2008-11-13 22:09:49
相半ばする・・ってのが「歳をとる」の最大公約数的模範回答かも知れませんが、私も”イイ事の方が多い☆”と思える歳になっちゃいました(苦笑)
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吹き抜けの岡本太郎 (moro)
2008-11-15 10:20:35
是非とも、この吹き抜けの岡本太郎のオブジェを見てみたいものです。写真からも、かなりのインパクトを感じます。
旭川市庁舎議事堂の天井も、なかなかのデザインでした。
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若さとかわいらしさ? (penkou)
2008-11-16 19:24:01
mさん
まあ(笑)歳取るのも悪くない、といいたくなるんですよね。でもですね、mさんはまだまだお若い!

MOROSANN
岡本太郎のオブジェって想像つきますよね。
今では可愛い(なんていうと叱られるか!)もんです。勿論(強調!)いい意味でですよ(笑)。

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