日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

晴耕雨読と王道

2008-11-23 13:55:26 | 添景・点々

ほろ酔い気分だけど、この一文を書き出すことにした。
つい先ごろ教育長を退任された、牛村さんを囲む会から帰って来たのだ。参加したのは仲のいい12人、大半の元父兄がいま行きつけのミニクラブで唄を歌っているだろう。

もう十数年も前になるが、娘が小学校5年生のときに僕はPTAの副会長をやった。思い起こせば、とちょっと大げさに云うと、その一年間が唯一「地元」に根付いた活動をした時期だった。
その翌年引き続いて会長をやって欲しいとか、娘が中学生になったときにも会長就任の打診があったが、迷った末断った。世はバブル期、仕事に専念したいと思ったのだが、今になってみるとそれだけではなかったような気がする。ささやかだけど「よそ者の僕が!」という逡巡する気持ちもあったのではないかと思う。

僕の住む東急が販売した分譲団地は小田急線厚木駅に隣接した620戸、小さな町を構成している。
海老名市は新宿から小田急に乗ってほぼ1時間、多くの人が東京に仕事に行くが、副会長をやって初めて海老名にも歴史があり、様々な行事があり、小学校のある地区に諏訪神社があって子供たちが数名で組んで氏子巡りをやってお菓子をもらう祭りのあることに気がついた。
団地で生まれ育った娘は、同級生が着物を着て氏子巡りをやるのも、神社があることも知らなかった。僕の家族は、団地の近くにある有鹿神社に初詣をするからだ。もともとここは田んぼ、有鹿神社エリヤだったようだ。地の神様にお参りする、そのほうが僕らしい。

PTAでは諏訪神社祭礼の日には、子供の安全を見守るために手分けして神社に張り付く。僕はその違和感よりも屋台の出る賑やかな祭りに好奇心が刺激された。その後諏訪神社の祭りに行ったことはない。いつ行われるかの情報がないからだ。

`よそ者が`ということにこだわっているのではない。とはいえ会長経験者からここに三十数年住んでいるけれど、まだよそ者扱いされる、とぼやかれたことは忘れない。それもまた面白いだろうというのが今の僕なのだけど、若かった僕はちょっとこだわった。
しかし子供は無頓着だ。娘の小学生時代のクラスは仲がいい。今でもしょっちゅう飲み会をやっている。担任だった先生を引っ張り出したりしている。楽しそうだ。世代が替わり、ここが娘たちの故郷だからかもしれない。

牛村さんは教頭だった。その肩書きのまま教育委員会に転任し教育長になった。頂いた挨拶のはがきにはこう書いてある。感謝の気持ちを述べた後、「これからは`晴耕雨読`の生活を過したいと考えております」。

囲む会の挨拶で僕はこう述べた。
『社会も教育界もおかしな状況の中、「晴耕雨読」という、何か懐かしいコトバを表明できるのは、海老名という地に根付いた教育という職務を全うし得たからだ。人はそれぞれの人生を歩み、誰しもがその人にしかできない役割を果たしている。そのなかでも牛村さんは、教育の、行政サイドでの王道を歩いたといってもいいのではないか』。これは僕の本音だ。

晴耕雨読。そうありたい。でも(最近の僕は`でも`が多いなあ!)僕には出来ない。地に根付いていない?生涯現役?そうでもないのだけど、まず「耕」がない。晴耕がないと雨読もない。僕のは電車読。牛村さんは僕より若いのだ。何だか情けない。
と書いてきて、いや待てよ、ちょっと違うかもしれないと思った。
宴会で僕は牛村さんの隣に座った。僕の問いに小さな声でささやいた。「小学校3年生のときの先生に惹かれ、先生になろうと思った。以来数十年。大学に行くときに農大に行って家(うち)を継ぐのだと思っていた親父と一悶着あった」というのだ。
振り返り親父の思いをいま想う。そして「晴耕」。
いまの時代、牛村さんは教育行政サイドの様々な課題と必死にとり組んだに違いない。そして「晴耕雨読」、閑居する自適の生活。やはり地に根付き、王道を歩いたのだ。

<写真。僕が副会長時代、娘の学校は創立20周年を迎え記念誌を作った。僕は写真を撮り表紙のデザインをした。僕には唯一の地元に仲のいい仲間が出来たのだ。来年は娘の担任をしてくださった先生を囲む会だ。他校で教鞭をとっておられるが定年を迎えるからだ>


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4 コメント

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どっちも ()
2008-11-23 22:44:27
「道」では?
所詮、王道も邪道も行き着く先は(と言うか目的地と言うか)一緒のような気がします。
PS:それにしてもpenkouさん最近「王道」に拘りますねぇ!笑
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目的地ねえ? (penkou)
2008-11-24 20:25:20
mさん
行きつく先は、実は一緒とは思えないのです。
僕の問題意識もふらふらしていて、今ちょっと王道、本道、とはなんぞやとか、考えることがあるのです。まあね、『目的地』ってのが分からないんですよ!
といって深刻な話ではないんですけどね(笑)
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上遠野先生と角教授の講演会 (moro)
2008-11-26 13:02:07
上遠野先生が田上義也氏から学んだという「正しい道を歩こう。列を乱すな。」という言葉が、ここ数年で最も心に響いたものかもしれません。
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そうなのです・・が (penkou)
2008-11-27 10:26:11
moroさん
「正しい道を歩こう。列を乱すな。」
そうでしたね。よくわかりますしとても大切だと思います。が・・・
その「が」とか「だけど」というコトバが僕の中にあるのが問題なのですよね(苦笑)
コメントでは書ききれないのでいずれちゃんと書いてみます。
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