日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

わが街 海老名

2006-04-09 14:26:58 | 日々・音楽・BOOK

ちょっと前になるが、12チャンネル「出没アド街ック天国」に海老名が登場した。僕の住んでいる街だ。
さて取り上げられた海老名に何が見えてきただろうか。
結局駅前を再開発してつくった大ショッピングモール、ヴィナウオークくらいになってしまった。単なる新興の街という姿だ。やっぱりね。
ちょっと面白かったのは、僕の乗降口、小田急線とJR相模線の交差する駅は海老名市なのに「厚木」という駅名。したがって相模川の川向、隣の厚木市の駅は本厚木ということになったのだが、出てきた映像はホームの厚木という電飾看板のみ。どうしようかと困ったディレクターの顔が眼に見えるようだ。こう言うのをたくまざるユーモアというのだろうか。娘から笑っちゃった!というメールが来た。

海老名に住み着いてから30年あまり。
わが人生の半分を海老名の風を味わいながら、毎朝ハンで押したようにほぼ同じ時間に厚木駅から小田急に乗り、ハンで押したように夜になると厚木で降りる。自分ではフリーっぽい建築家だと思っているのだが、取り立てて自慢することもないごく当たり前の普通の人生だ。とはいえ、僕は小田急線乗りのプロだ。

電車の中で半分は本を読み、それはかけがえのないない知力習得の時間なのだが、半分は寝ている。この30分はしっかり睡眠時間に組み入れている。だからディック・フランシスなど読み始めたらあっという間に新宿についてしまい、一日中睡眠不足で悩まされるのだ。

昨夜遅かったというときには、ヴェンチュリーの「建築の多様性と対立性」なんてのを読む。すると狙い通りすぐ眠くなる。でもだからポストモダンを考えるときのこの貴重な本は、いつまでも読み終わらないということにもなるのだ。
「モダニズム」に読むな!と言われてるみたいだ、とまあそんなわけでちゃんと乗り方を心得、雨が降るとすぐ遅れる小田急の有様さえとてもよく分かっている。
プロとはそういうものだ(笑)。
馬鹿馬鹿しいと思いながらTVを終わりまで見てしまったが、考えることもあった。

海老名市は人口約12万4000人、市のキャッチフレーズは「歴史と文化の息づくまち」。市のHPにそう書いてある。
国分寺という地名もあるし、国分寺跡という史跡もある。「エビナ」という地名、ネーミングは平安中期からいわれているという。とこれもHPになにやら恥ずかしげに書かれている。それがTVになると、ALC(軽量気泡コンクリート)版に原色っぽい色を吹き付けたいわば安普請大建築群商業施設がエビナになってしまうのだ。
それも解る。

僕は娘の小学生時代、PTAの副会長をやったときに初めて海老名にもスナックがあり、カラオケ人生というのがあり、喫茶店まであることに気がついた。更に子供の安全対策でお祭りの巡回をやることになって、諏訪神社のあることを知った。お祭りでは、土地の子どもたちは数名でチームを組んで地域にある家を回ってお菓子など貰う風習もあるんだって。でもうちの娘は土地っ子ではないので同級生がそんな楽しいことをやっていることさえ知らなかったのだ。

それからかなあ、近くに有鹿神社という氏神神社の在ることに気がつき、初詣に行くようになったのは。厚木駅に隣接している分譲団地に住んでいるので、そんなの無くたって生活はできるのだ。
それでも30年住んでいて、なくてはならない場所も生まれてくる。

図書館、生協、JA新鮮野菜販売所、OXとロウソン、SATY(映画館もある)、郵便局、クロネコヤマト、医院と病院、それにアイレイウイスキイの手に入る巨大な酒屋。足を痛める前は海老名のテニスの仲間とよく試合をやったものだ。体育の日に海老名市市長からその年の最優秀選手賞など貰ったりしたこともある。市のコートも僕のターゲット、コートの些細な勾配も頭に入っていた。
おやおやこうやってリストアップしてみると結構あるではないか。僕の「エビナ」のテリトリイに「歴史」はないけど「文化」はあるか。愛妻はもっと幅広く海老名を使いこなしている。公民館とかね。

でもなんだか貧しい地域生活をやっているような気がしてきた。

僕のような都市生活者つまりよそ者は、こんな地域社会人生を送っているのではないだろうか。
でもPTA会長をやった友人だって(僕はすぐ友人ができる、おばちゃんでも)、住んで40年になるのに町内会会合に出ると、まだ地元民として認めてくれないのだとぼやいていた。やはりね。
この街にも歴史とそのプライドがあるのだ。平安からの。
団地生活者では、いつまでたっても地域住民になりきれないか!
ぼやきじゃあないよ。断じて(苦笑)