田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

赤いアミュレット/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-15 06:00:37 | Weblog
9

ものを引きずるような音は飲み屋横丁の裏から聞こえてくる。
いなや音だ。
それでなくても信子とカレンの安否を気づかって不安なのだ。
身近にひとが引きずられる音ともとれる不気味な響きが木霊しては
……なおさらだ。

翔子と百子は音をたよりにさらに奥深く潜入する。
「あそこって……新宿西口の『思い出横丁』に似ているわ。
うちの父が焼き鳥で飲むのが好きで……」
百子が翔子の気をまぎらわせようとさりげなく話しかけてくる。

「見てよ。また暗くなった」
思わずいってしまった。
「百子は夜目が利くのでしょう?
街灯がないとわたしテキにはコマルシ」
「わたしだって好きでないシ」
「大丈夫よね。
ここは信じられないけど吸血鬼のアンダーワールド。
なんでもアリって感じよね。
怖がることはないけど、注意していないとね」

「ビジターのかたですか?」
翔子の言葉にかぶさるように不意に傍らで声がする。
明かりがついた。
カウンターがある。
なにか申込書のようなものが数枚重ねて置いてある。
その奥に小窓がありニコニコ少女が笑いかけていた。
翔子がちがいます、というように手をひらひらふる。
百子も手をふって否定している。
「あら、困るんですよね。
常連さんでないヒトはここで名前を書いてもらわないと。
……そうすれば、IDカードを発行します。
吸血鬼よけのお守りになります。
それに真っ赤なアミュレットもさしあげますわ。
すべて無料です」

そういうことではないだろう。
無料とか、
IDだとかアミュレットといわれてもジョークとしか思えない。
でも翔子たちのことは、この受付の少女は知らないらしい。



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