田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

見えない敵/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-28 11:00:21 | Weblog
5

神代会長とGGは異変に気づいた。
ミイマはバラの鉢を抱えて部屋を出た。
ふたりはそれを視野の隅でとらえた。
なにか在った。ミイマはなにか気づいたのだ。
GGはミイマのあとを追いたい。
必死でこらえた。
心臓が破裂しそうなほど苦しかった。
この瞬間にもミイマを追いかけたい衝動に耐えた。
あきらめてはいけない。がばれ!! ミイマ!!! 
惨事は止めなければ。でも、ミイマにもしものことがあつたら。
ミイマの背にエールを送った。
行動を共にできないで、ゴメン。

爆弾か毒薬を噴霧するような危険な装置が隠されていた。
そう推察するのが妥当だろう。
「廊下のほうにもバラが飾ってありますので、どうぞご鑑賞ください」
神代が静かに告げた。
GGが部屋から廊下へと落ちついて、会場のひとびとを誘導する。
「へんね。バラなんか飾ってないわ」
「バラの小道があるけると思ったのに」
「ロマンチックなこというわね。そうよね。廊下の両側にバラを飾ってあれば、バラの小道。イイ趣向だと感心したのに」
廊下に出たひとたちがブーイング。
「おくれて、すみません」
玲加がうまい具合にエレベーターから現われた。
バラの鉢を両手でかかえている。そのあとから、ミイマ。

ビルの外で重苦しい音がした。
それは不吉な音。
大惨事をまねいたかもしれない音。

でもその音に気づいたのはミイマと玲加だけだった。

「みなさん、遅れてすみません」
玲加が詫びている。
GGとなにごとかうちあわせていたミイマが素早く玲加のところにもどってくる。
玲加があとからエレベーターから降りてきた少女たちに指示している。
バラの鉢が廊下の両サイドに並べられていく。
「わあ。バラのプロムナードよ」
百子も純白のアイスバーグの鉢をかかえて現われた。
その背後から百子と同じような黒のスーツの少女たちが、ソフィーズ・ローズ、セント・セシリヤとかずかずのバラをかかえて――廊下に整然とならべだした。
会場の扉が閉められた。
神代、ミイマ、GGが室内を隈なく点検する。
飾り立てたバラの周辺には、まだ強烈な悪意がのこっていた。
ミイマを不安にさせていたのは、これだった。
ミイマの不安は錯覚ではなかったのだ。
ミイマに不安を感じさせた元凶が、ここにあった。
邪悪な残留思念がまだ漂っていた。
もしここで爆発していたら、と思うとGGはゾッと悪寒に襲われた。
小規模な爆発だったらしいが、それでもこの部屋は大混乱となった。
かれらにとってここが受難の地となったはずだ。
特攻のようなミイマの判断がみんなを救ったのだ。
「よく、あの鉢をとっさの場合にわかったな」
「あら、お父さん簡単よ。鹿沼バラ園――わたしの庭からの出品がアレ一鉢ということはありませんからね。それにウチには、まだシャリファ・アスマは咲いていないのよ」

廊下には純と翔子も駆けつけてきた。
百子が委細を翔子に伝える。
翔子が初対面の玲加と百子に歌舞伎町の惨事を話す。
「チョヤバ」
三人の少女たちが同時に小声で叫んで首をすくめた。
 
だが、三人の最強の少女たちが「Maxヤバイ」と大声で叫ぶ事件がおきたのは、大森にあるGGの『BB刀エクササイズ』道場にもどってからだった。

    アイスバーグ

        

        

    ブラックティ

        

    クリスチャン・ディオール

        



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