田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

バラ爆弾?/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-27 12:40:53 | Weblog
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六本木『ローズビル』は麻布十番に隣接している。
そのビルの最上階が会場となっている。
大日本バラ展のオープニングとして催された会だ。
バラ愛好家が参集した。盛況だ。
各界の著名な人たちの夫人が出席している。
神代バラ園の園長、ミイマの尊父が挨拶をおわったところだ。
「ミイマが、どうした? なにか気にかかることでも……」
「セキュリティは万全のはずなのに……不安なのよ」
会場の中央には鉢植えの見事なバラが飾ってある。
神代バラ園からはもちろん、鹿沼のミイマのバラ園からも出品されている。
「なにも不穏な気配はない。おれにはわからないな」
GGがミイマを慰めるようにいった。
「でも……なにかチクチクするの。だれかに見られているのかしら。それも悪意の視線で……」
「会場をひとまわりしてくるね。それに……皆様にご挨拶もあるし……」
どうしてこうも不安なのだ。
不安をとおりこして恐怖すら感じる。
毬栗をたたきつけられるようだ。
パーテイを享受しなければ、バラを栽培するものが、年に一度みんな――ロゼリアンのひとたちと楽しめる宵なのに。
わたしどうかしている。
年甲斐もなくあわてている。
子羊のようにおびえている。
すれちがう、顔見知りの人たちに笑顔で挨拶する。
スピーチもおわり、講壇にそそがれていた全員の視線が飾られたバラにむかっていた。
「今年は猛暑だったから、秋バラをこんなにみごとに咲かせるのは、たいへんなご苦労だったでしょうね」
富裕層のひとたちが、なんのへだたりもなく、バラの話題に花を咲かせている。

翔子からきいた、新宿は歌舞伎町の通り魔、殺傷事件、自傷者の事件が気になっている。大殺戮に発展しているのをミイマはまだしらない。
マナモードにしておいた携帯がふるえた。
「ごめん。ミイマ。連休なので、交通が大渋滞で出品ままにあわなかった。いますぐいくね」
なんということだ。
鹿沼の玲加からだった。
鹿沼のバラ園を任せてある玲加からだった。
だったらいまわたしの目前の、会場に飾られている鹿沼からのバラは!!!
ミイマはバラ鉢を抱えるとひと、ひと目を忍んで会場をぬけた。

遅れて受付来ていた来客が「それはわたしが」と叫ぶとミイマから鉢を受け継いだ。
百子だった。



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