田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

追跡/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-12 04:10:02 | Weblog
6

敵が多すぎる。
そういってしまった。
翔子は焦った。
じぶんが、すごく惨めだった。
悲しかった。
いま助けを求めている菜々美の友だちがいる。
助けを求めて泣き叫んでいるかもしれない。
命が危うい。
血を吸われている。
かもしれないのだ。

「鹿沼のGGに――携帯するから……」
GGとミイマがいる。
いままでとはちがう。
百子もいる。
仲間はふえている。

「GG? 純もいる??」
純はFLOORで打ち込みの形をおしえているところ。
という返事がもどってきた。
翔子は事件のあらましを話した。
みんなが駈けつけるまで霊園には入らないようにと戒められた。
菜々美はついてこないようにした。
夜霧の外までおくった。
JRの池袋駅にむかって三人で歩きだした。
少し遅れて百子がついてくる。
背後をガードしてくれている。
うれしい気配りだ。

菜々美が構内の雑踏の中に消えていく。

翔子と百子は霊園の方角に歩きだした。
かすかに荒川線の電車の響きがきこえてきた。
「ね、さっきから気になってる」
「わたしもよ」
と翔子がほとんど同時に応える。
「匂う」
「そう。匂うのよね」
こんどは、百子が応える。
「さすがクノイチ」
「百地三太夫の系譜につながる者は、
世の中の役に立つ側について戦いなさい。
チョウ古いこといわれて育っているのよね」
これからふたりして吸血鬼に戦いを挑む。
その心意気を翔子に伝えたかったのだろう。
百子は少しずれた返事をした。

『この匂いは……墨の匂い。
それも奈良墨の高級品。
学生の使うような墨ではない』

書道部の顧問の春陽先生が信子にいっていたのを翔子は思いだしていた。
歩道に墨がポッンポッンと垂れている。
黒く墨が歩道の敷石に滲んでいる。
いままでだって墨は歩道に垂れていた。
シミが出来ていた。
でも人が多すぎる。
靴底で消されてしまったのだ。
いままでだって墨の匂いはしていた。
でもそれが人いきれに混じってしまっていた。

「この方向はやはり霊園」
「翔子たちの霊園での戦いのころから……
わたしたち影守りをしていたの……」
ありがたいことだわ。
と感謝しながらきいていた翔子は「えっ」と疑問に思った。
走るようなスピードで歩行していたが、肩を並べていた。
わたし、たち、といった百子の言葉を聞き逃さなかった。
「仲間に連絡した。わたしたちだけでは荷が重すぎるもの」
「みんなで戦えば怖くない」
翔子もGGや純の合流をまちのぞんでいた。
わたしたち同じように考えている。
行動のパタンもすごくよく似てる。
頼もしい味方が出来た。
それに同世代だからなおさらうれしい。
わたしみたいに古風な少女がいた。
うれいい。

「匂い強くなっていく。霊園にはむかっていない」

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