田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ミイマの元彼/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-26 09:50:26 | Weblog
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「痛いではないか。
おれのほうからはまだしかけてない。
玉藻さまを救えなかった恨みか!!
それならおれは関係ない。
おまえが、犬飼の連中の幻術にかかったのだ。
あの犬どもの始祖は……、
慈覚大師をあの中国の吸血鬼の城――纐纈城から救いだした大きな犬だ。
いかにおまえが九尾族のマインドバンパイアでも敵う相手ではなかった。
そんなことも忘れてしまったのか」――拙作「奥様はバンパイア」をご参照ください。
 
男はむろんヒスイの仮面などつけてはいなかった。
それどころか、酒焼けした赤ら顔でもない。
ノッペリした公家面、
たれかげんの、長い眉毛。赤いくちびる。
「信行」
「そうだ。藤原信行だ」
「あの西行とよく京の街を遊び歩いていた、優男」
「そして、美魔、おまえの元彼だ」
元彼などという、
今風な言葉をつかわれているうちに、
記憶がよみがえってきた。
悲しい別れの涙まで。思いだした。
「おれは、あれからずっと眠りつづけた。
奈良の遷都1300祭で呼び覚まされた。
美魔とこの東の都であうとは……。
どうだ、いまからでも、やり直さないか」
ミイマはこたえられなかった。


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コメント
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