田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

それぞれの涙「絵の中の雪」完/麻屋与志夫

2011-08-07 06:34:11 | Weblog
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「兄さん、友子さん、亜莉沙を養女にいただけないかしら」
「お母さんは、美智子はどうした。
美智子に会いたいと、さいごまでいっていたぞ」

兄が涙声で言う。

母はわたしを心の中では、許していたのだ。
母の死に水もとれないで、わたしは悪い娘だった。
親不孝者だった。

わたしのほほを大粒の涙がこぼれおちていた。

お母さんあなたの大切な孫をわたしにあずけてください。
立派に大成させてみせます。
それが母への償いのように思えた。

亜莉沙も泣きだしていた。

友子も、すっかりものわかりのいい母親の顔になっている。

涙が目じりににじんでいた。

みんなの涙に、わたしは、亜莉沙を養女にすることへの暗黙の同意をみた。

さらに涙がはらはらとこぼれおちた。

窓の外は雪がふりしきっていた。           完



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