田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ヤバイ。息をつめて/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-27 11:51:07 | Weblog
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歌声がぱたりとやんだ。
「翔子が音源を探しあてた」
ペンタゴン・Vセクション日本支部長村上勝利は群衆をみていた。
翔子の父だ。
動きが停止した。
陰気な歌声に煽られていた暴徒が静止した。

「百子がいない」
自衛隊異能部隊長百地。
視線を群衆の隙間におよがせる。
「音源をきったのが百子さんかもしれません」

ついさきほどまで一緒だった。
鳥打二尉がこころを澄ます。
そしてたぐりよせる。
あの姉妹の思念を探り当てた。

スバルビルの方角だ。

たいへんなことになっている。

「隊長。緊急事態です。
百子さんもいます。翔子さんと純君も但馬姉妹も」
あいては、てごわい。
吸血鬼マスター、VMのエイドリアンだ。

「いきます」

隊長の救助命令を背後に聞いた。
鳥打は姉妹の思念をたどりながら走っている。

念の力で、飛ぶ鳥を落とすことが出来る。
それでこそ、鳥打、という異能。
鳥打は百子のことを想っていた。
伊賀の里での修行がすむと、父を慕って上京した。
隊長は多忙。
一緒に住むこともできなかった。
百子は妹、兆子と仲間を呼び寄せ「クノイチ48」を結成した。
異能部隊や警察では手の届かない末端での活動。
いままさに起ころうとする吸血鬼による犯罪。
――を防ぐために、正義のために戦っている。
その百子の力になってやりたい。
鳥打は走った。

あれだ。
スバルビル。
あそこに百子がいる。
但馬姉妹の念も流れてくる。

「百ちゃん。ぶじでしたか」
「美香たちがいないのよ」
「まちがいなくこのビルから念が流出している」
「なら、地下ね」
百子はRFを部屋の隅に集めてカクホしていた。

「ふふふ。ゴーレム(粘土塑像体)を斬ってどうなる」
エイドリアンの嘲笑がする。
どこからしているのかわからない。
声のする方角が見当もつかない。
目の前のVMはゴーレムなのか。
なにか腕を斬りおとしたときの感触がちがった。
ゴーレムをリアルにみせるために部屋をくらくしたのだ。
悪臭がますます強くなる。
ゴーレムに思念を投影して重ねた。
いくら暗闇でも、そうでもしなければ実像とは見えないはずだ。
なら、エイドリアンはまだここにいる。
この部屋にいないとしても。
その距離はさほどはなれていない。
頭が美香はくらくらしてきた。
「ヤバ。息をつめて」


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