田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

わたしのアンデイはvampire/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-08 06:39:52 | Weblog
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誰かを愛したときから、ひとは自分だけの世界を、自分だけの永遠をもつ。ひとは愛する者以外のあらゆるものからきりはなされて、他のひとたちの運命とか義務とかとなんらかかわりをもたなくなる。(マルセル・ジュアンドー)

翔子がお見舞いにもって来てくれた本。
いまは亡きGG――が。
翔子が純を愛しているとしったとき譲ってくれた本だ。

小佐井伸二著『婚約』 新書館

「いまの美香に読んでもらいたい本なの。
わたしは暗唱できるほど読んだから……」

そのあとがきにかえて、にでていた文章だった。
後書きから読むなんてわたしって文学的にはダメ女。
解説があれば、そこから読みだす。センスがないのだ。
剣道の修業にあけくれ、文武両道とはいかなかった。

「傷の療養をしながら読んでみて」

翔子と純の活躍と愛の履歴は、百子からきいていた。
わたしがアンディを好きなこと、どうして翔子にわかったのかしら。

美香は外来入口の前のテラスにいた。
広い中庭風の広がりの隅。
スチールのテーブルと椅子が5組ほど並んでいた。
向こう隅にダリーズコーヒー店がある。
チャ―は背当てと座る部分だけは木製になっていた。
そのため長時間すわっているとぬくもりがあった。

『婚約』を美香は読んでいた。
コーヒーがすっかり冷めていた。

テラスには初春の気配がただよっていた。
植え込の木々が芽吹いていた。
風はまだ寒い。

コーヒーの強い匂いがした。
本から顔をあげた。

「ここにいると思いました」

アンデイだった。
美香はあわてて本を裏返しに伏せた。
湯気のたっているコーヒーのカップは2つあった。

「冷めてるらしいので」
「やぁだ。ずっと見てたの」
「かなり熱心に読書に励んでいましたから」

それで、美香の分もコーヒーをテイクアウトしてきてくれたのか?

「サンキュウ」

アンデイは笑っている。

「どうかした? わたしどこかおかしい?」
「べつに……。剣をかまえているときもりりしくていいですね。
でも本を読んでいると、やはり年頃の女の子ですね」

からかわれているみたい。

美香は赤くなった。

年頃の女の子といわれた。
そこで、美香はおもった。
わたしの好きなアンデイは――vampire。
歳の差は幾つなのかしら……。



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