田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

電車の中で血を吸っている/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-04 18:18:34 | Weblog
7

青山で血を吸われていた老夫婦を救いだしてから数日が過ぎた。
救出が遅れれば、危うく失血死するところだった。

美香は骨董通りをあるいていた。
すれちがう人々のつぶやきに眩暈。
独りよがりの欲望の渦に溺れ。
こんなことなら能力を解放しなければよかった。
と――反省。

ところが――「アイツラ、吸い殺してやる……」超過激な思考が混入してきた。
どす黒い流れだ。腐臭を放つ思考だ。

ブルーノートからでてきた。
まちがいない。
エイドリアンだ。
どうしてかれが。
ここに。
そうだよ。
あいつ、まがりなりにもミューズィシャンだ。
美香は後をつけた。
ブルーノートからでてきてもおかしくはない。
美香はつけた。

原宿通りの雑踏を駅へとあるいている。
物色している。
なにか探している。
人々の流れがかれと袖をすりあって。
ふたつに割れている。
なんとなく。
本能的に。
長身の外人さんを避けている。

駅。
エイドリアンは。
新宿方面行きの電車に乗り込む。
ラッシュアワー。
美香はかれの後の電車にのった。
同じ箱にのるのは危険だ。

物色している。

わかった。
吸血鬼は飢えている。
人工血液だけで、生きられるか。
それでいらいらしているのだ。
「アイツラ吸い殺してやる」
なにかブルーノートで不愉快なことがあった。
それではらもたてている。

離れているがとぎれとぎれの声なき声がつたわってくる。
エイドリアンは周囲を見まわした。
勤め帰りらしいOLの襟もとに唇を寄せた。
あっ。
プチユと音がした。
Vの牙が軽く女性の首筋に食いこんだ。
女性は気づかない。
ツツツとストローで液体を飲むような音。
女性は気づかない。
いや感覚がマヒして声もだせない。
助けなければ。

ひとが、降車口に向かってなだれる。
さいわい、エイドリアンも女性を介抱するように。
かかえこんで。
降りた。
助けなければ。
人の壁。
ジレッタイ。
なかなかVとの距離がちぢまらない。
ツツツ。また吸っている。
よほど飢えていたのだ。
ツツツ。
女性の腕がだらりと垂れた。
だれも、注意を払わない。
ツツツ。
チョウ。
ヤバ。
このままでは、女性が危ない。
ツツツ。
腕が震えている。
腕が痙攣している。
ツツツ。



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