16
「三日ほどまえにもね、ネット掲示板で新宿駅前での『通り魔予告』があって中学三年生の男子が逮捕されたの」
美香は病室。
アンデイのことばかりかんがえていた。
世間のことに、興味を失っていた。
他のひとたちの運命とか。
外でなにが起きているということに。
無関心でいた。
恥ずかしい。
「香世は……」
「兆子と2人で、こっちにむかっている」
「それで……」
「なにも、わかってはいないの。
路上ライブがあるって書き込みを玲加がたまたまみつけたの。
それだけのことなの。でもすごくニオウ」
「いやな予感が、してきたシ」
翔子と純がいた。二人揃っている。
gaze enviously at them
受験勉強中の美香としては英語の熟語をおもいうかべる。
いいな。ふたりおそろいで。
Vバスターズ『クノイチ48』のメンバーが。
めだたないように新宿西口広場の群衆のなかにちらばっている。
こんなとき、女の子はまわりの群衆にとけこんでしまう。
カモフラージの必要はない。
「美香コレ着て」
美香はジーンズにジャンバーすがただった。
百子がさしだしたのはarmorだった。
タートルのセェタのしたに装着した。
襟首の防護も確かだ。
「コレって……?」
「そう。Vがカランデルとおもうの」
だれが出演するのか。
どこのバンドか。
いろいろな憶測がみだれとんでいる。
群衆はふくらむいっぽうだ。
パソコンや携帯。情報は加速度的にふくらむ。
「美香、もう……イイの?」
翔子が声をかけてきた。
「大ジョウブ。もうなんともない」
群衆のざわめきがボワーンとひびいてくる。
「父たちは」
翔子と百子がどうじにおなじことをいった。
「きてるのかしら」
とつづけて人だかりを眺めている。
そのなかから、香世と兆子があらわれた。
香世は美香をみて悲しそうに首をよこにふる。
「なによこのひとたち」
兆子が百子をみる。
百子から応えはもどってこない。
はじめはイタズラみたいな書き込みだったにちがいない。
新宿で無届の路上ライブ。
そんなところからはじまったのだろう。
仮想空間で噂は噂を呼び。
集まったひとが、ひとを集め。
またたくまに、大群衆となっていた。
バーチャルの世界が瞬時にリアルな反響をみせる。
こうなったら、とめどもない。
とまらない。
「あつ。あれ。みて」
香世が叫んだ。
群衆の中で金属製の脚立がならべられだ。
その上に合板がならべられた。
瞬く間に、即席の舞台ができた。
そのステージ忽然と現われたのは――。
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美香は病室。
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他のひとたちの運命とか。
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「香世は……」
「兆子と2人で、こっちにむかっている」
「それで……」
「なにも、わかってはいないの。
路上ライブがあるって書き込みを玲加がたまたまみつけたの。
それだけのことなの。でもすごくニオウ」
「いやな予感が、してきたシ」
翔子と純がいた。二人揃っている。
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受験勉強中の美香としては英語の熟語をおもいうかべる。
いいな。ふたりおそろいで。
Vバスターズ『クノイチ48』のメンバーが。
めだたないように新宿西口広場の群衆のなかにちらばっている。
こんなとき、女の子はまわりの群衆にとけこんでしまう。
カモフラージの必要はない。
「美香コレ着て」
美香はジーンズにジャンバーすがただった。
百子がさしだしたのはarmorだった。
タートルのセェタのしたに装着した。
襟首の防護も確かだ。
「コレって……?」
「そう。Vがカランデルとおもうの」
だれが出演するのか。
どこのバンドか。
いろいろな憶測がみだれとんでいる。
群衆はふくらむいっぽうだ。
パソコンや携帯。情報は加速度的にふくらむ。
「美香、もう……イイの?」
翔子が声をかけてきた。
「大ジョウブ。もうなんともない」
群衆のざわめきがボワーンとひびいてくる。
「父たちは」
翔子と百子がどうじにおなじことをいった。
「きてるのかしら」
とつづけて人だかりを眺めている。
そのなかから、香世と兆子があらわれた。
香世は美香をみて悲しそうに首をよこにふる。
「なによこのひとたち」
兆子が百子をみる。
百子から応えはもどってこない。
はじめはイタズラみたいな書き込みだったにちがいない。
新宿で無届の路上ライブ。
そんなところからはじまったのだろう。
仮想空間で噂は噂を呼び。
集まったひとが、ひとを集め。
またたくまに、大群衆となっていた。
バーチャルの世界が瞬時にリアルな反響をみせる。
こうなったら、とめどもない。
とまらない。
「あつ。あれ。みて」
香世が叫んだ。
群衆の中で金属製の脚立がならべられだ。
その上に合板がならべられた。
瞬く間に、即席の舞台ができた。
そのステージ忽然と現われたのは――。
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