ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

嵌められた日本 - 17 ( 馬野氏が持つ4つの意見 )

2020-07-16 13:01:34 | 徒然の記

 《 3. 『秀真伝』(ホツマツタエ) 》

 『秀真伝』と書いて、ホツマツタエと読みます。意味は「真 (まこと ) の中の真 (まこと ) 」ですから、「正式の伝記」「正式の歴史書」となるのだそうです。

 「ヲシテ」と呼ばれる「神代文字」で書かれていますが、学者、学会、学界からは偽書とされています。その一方で、『古事記』『日本書紀』の原書であると固く信じる一部の人間がいます。

 つまり氏は、それの一部の人間という訳で、過激な珍説の出所も理解できます。しかし氏が愛読している偽書は、これだけではありません。『契丹古伝』、『竹内文書 ( もんじょ )』、『襲国偽僭考』、『古代史論考』など、初めて聞く名前の本を熟読・耽読しています。

 説明を読みますと、『竹内文書』などは恐るべき内容です。

 ・天皇が、来日したモーゼに接見しただけでなく、キリスト、釈迦をはじめ、世界の大教組は全て来日し、天皇に仕えたことになっている。モーゼの墓が、石川県宝達志水町に存在している、とある。

 凡人には荒唐無稽、常識の埒外の書でしかありませんが、氏は違います。174ページの叙述を、そのまま紹介します。

 「古い昔に遡って、日本天皇が世界の王であり、支那はもちろん、その支配下にあったとする伝承がある。」

 「『竹内文書』という古伝に出てくるのだが、一見荒唐無稽、論ずるに値しないものと見ても、当然の代物であり現に一般ではそう見られているが、色々な面を考え合わせると、どうも無下に退けることはできない事実を、含んでいるように、私には思える。」

 氏がこの著書を出版したのは、私と同じ77才ですが、この部分を読んだ時、凡人である自分にしみじみと感謝しました。凡人はどこまでも凡人で、常識の範囲内でしか、物事を考えられません。モーゼはおろか、キリストや釈迦までが、日本へ来て天皇に拝謁し、その墓が日本にあると言われますと、びっくりしてしまいます。

 「現在私の見るところでは、支那は確かに太古において、日本の支那 ( えだくに ) であったろうということである。支那文明の根幹は、日本から出ている。これは私の独断ではなく、私の目に触れた限りの事物、文献から自然に出てくる結論だ。」

 こういう怪しげな古文書から日本の凄さを語られて、どれだけの日本人が同意をするのでしょう。偽書をもとに組み立てられた、日本中心説は、私だけでなく、日本を大切にする人たちにも、受け入れられません。最初はブログからこの部分を省略しましたが、公平な書評とするため、入れることにしました。

 《 4. イルミナティ 》

 人によっては、「イルミナティ」を、「金融界を支配するユダヤ財閥」という言い方をします。バルーク氏はユダヤ人ですが、ロックフェラー氏は違いますので、気をつける必要があります。

 馬淵睦夫氏は、「ウォール街を支配する金融資本家たち」と、ユダヤ人に限定せず、確かそのように言っています。馬野氏も、「彼らによれば、その中核は国際大銀行の、首脳だと言う。」と述べており、これが正しい言葉ではないかと思います。

 「イルミナティ」という言葉は、ややもすると「ユダヤ人謀略説」に傾き、古代の偽書に似てくる危険性があります。今後は、狂信的団体という意味を持つ「イルミナティ」を使わないようにし、「ウォール街を支配する金融資本家たち」と言います。

 『秀真伝』(ホツマツタエ)のような偽書の説と違い、「ウォール街を支配する金融資本家たち」が、世界の政治や外交を動かしているという事実は、荒唐無稽な意見でありません。「謀略」や「陰謀」として、センセーショナルに語られてきたこれ迄が、大袈裟すぎたのだと思います。

 自分たちの住む市や町で、財力を持つ、やる気のある事業家たちがしていることを、考えてみましょう。彼らは事業の発展と利益の拡大を、人生の目的として生きています。大きな仕事は、たいてい町や市や県などが行う公共事業です。先々の計画を知っているのは、市議や県議や市長や県知事ですから、事業家たちは彼らとのコネを求め、様々な努力をします。

 有力議員や首長とパイプを作った彼らは、キブ・アンド・テイクの関係を作ります。やがて彼らは、自分の事業に有利となるように、市政や県政への助言や、意見を述べます。この中でやり過ぎた者が、時々贈収賄事件で新聞種になりますが、このような事件は、私たちの周りにありふれています。

 「ウォール街を支配する金融資本家たち」がやっていることは、桁外れの大きさで一般人に想像できないため、驚く話となりますが、基本は同じです。彼らは、市長や県知事の代わりに、大統領や、首相や、王様を相手に金儲けをし、世間にバレないようこっそり実行しているので、「謀略」に見えるだけの話です。

 もう一つの大きな違いは、「ウォール街を支配する金融資本家たち」がやっていることは、たとえその事件が発覚しても、彼らを取り締まれる者がいないというところにあります。馬淵睦夫氏は、こうした事実を踏まえ、資本の動きは陰謀でなく、当然の動きだから、目を背けず、直視しようと語っています。

 「ウォール街を支配する金融資本家たち」は、ユダヤ人が多数を占め、世界の金融界だけでなく、世界の思想界、言論界、教育界にも、強い影響力を持っています。

 田中英道氏は、ユダヤ人を異端者扱いせず、正当な評価と敬意を払い、協力できるところは、協力しようでないかと主張しています。だから私は、馬野氏が言う、「世界を支配するイルミナティ」については、無視しません。古伝の偽書のように、殊更異説として語るのでなく、ユダヤ人については、田中氏や馬淵氏のように、正面から取り上げるべきと思います。

 彼らがやっていることは、「陰謀」や「謀略」でなく、利潤を追求する「資本の論理」に過ぎません。これを正しく知ることが、明日の日本を考える上で、重要です。

 極論でしたが馬野氏に感謝し、敬意を払いつつ、本日で書評を終わります。

コメント (4)
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