ねこ庭の独り言

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嵌められた日本 - 9 ( ゴルバチョフ氏の演説と キッシンジャー氏の「ビンの蓋論」)

2020-07-09 19:28:23 | 徒然の記

 敗戦後日本人の多くが捕らわれている思考は、「東京裁判史観」と呼ばれています。そうすると、馬野氏の頭を占拠しているのは、「米国悪人史観」とでも言えば良いのでしょうか。

 「日本の政治家、官僚というものの愚かさは、実に底が知れない。アメリカの言うことを聞かないと汚職を暴かれ、ロッキード事件の二の舞になるのではと恐れている政治家もいるだろうし、一般の国民は、しかるべき手の入った新聞、テレビ、雑誌に洗脳されて、親米、信米、国際化にうつつを抜かす。」

 「行き着く先がどんな奈落か、誰も気がついていない。」

 自分もかって高級官僚で、米国のため働いた氏が、そこまで言うのかと首を傾げますが言っていることは嘘でありません。

 「アメリカと手を組むことは、騙しに騙された挙げ句、確実に、地獄への一本道を歩むことなのだ。」

 具体例を、氏が53ページで語ります。

 「昭和62年12月8日、ワシントンで米ソINF全廃条約が、レーガン、ゴルバチョフ両首脳の間で、調印された。」

 「それまで核兵器をエスカレートさせ、睨み合ってきた両国が、急転直下、中短距離ミサイルの全廃に、一挙に合意したのだから世界は驚いた。」

 「日本の経済人が、ニューヨーク株式大暴落の意味を、十分理解していないと同様に、日本の政治家はINF条約の重大性を認識していないようだ。」「この調印の日は、奇しくも48年前の日米開戦の日にあたる。」

 「偶然の一致と言うには、あまりに出来過ぎている。後に述べる、ゴルバチョフの演説を考えあわせてみても、米ソが示し合わせた、日本に対する黙示ではないのか。」

 INF条約調印の日が、12月8日だったとは気づきませんでした。戦前の日本では「戦勝記念日」と呼ばれ、国民の祝日だったいわゆる真珠湾攻撃の日です。

 氏の意見は考え過ぎというより、妥当性がある気がします。アメリカの政治家は、時折こういう陰湿な数字合わせをします。東京裁判で、彼らが犯罪人と決めつけた、7人の「殉難者」を処刑した11月12日は、平成天皇の誕生日でした。偶然の一致でなく、当時の日本人への悪意に満ちた黙示でした。

 「条約調印の祝賀晩餐会の席上で、ゴルバチョフ書記長は、日本人の背筋を凍らせる発言をしている。」

 「米ソがお互いに核軍備に入れあげている間に、日本と西ドイツは、軍事費を使わず、アメリカを抜く経済、技術的発展を成し遂げた。われわれは軍備を縮小し、協力して経済を発展させなければならない。」

 ゴルバチョフ氏の演説を、日本のマスコミが正しく伝えたという記憶が、私にはありません。馬野氏の叙述は、心して読むべき内容でないかと思料いたします。

 「この演説は、米国の主要な政治家、高官の居並ぶ場所で行われている。」「つまり、米ソデタントから米ソ対日独・対立体制への、巧妙な誘いである。」「表面での違いに目を奪われて、米ソが本質的に同根の国家であることに無知であってはならない。」「いずれも、イルミナティの造作物なのだ。」

 イルミナティとは、聴き慣れない言葉です。ネットで調べますと、アダム・ヴァイスハウプトが、バイエルンに設立した団体の名前と書いてあります。

 今では、歴史上の様々な狂信的団体に、「イルミナティ」という名がつけられていると言います。陰謀説の好きな人間が色々な説を唱え、創設者はルシファーで、下部機構にフリーメイソン、イエズス会、ナチス、共産党があるなど、そんな意見もあるそうです。

 馬野氏がどの意味で使っているのか、どの程度信じているのか分かりませんが、「米国悪人史観」のための、一つの材料として使っているのは間違いなさそうです。

 「米ソが、本質的に同根の国家であることに無知であってはならない。」、という意味で使っているのなら、賛同できます。「米ソ」という言葉を、「世界を支配する超大国」と置き換えれば、氏の言葉が即座に理解できます。

 昭和46年、大統領補佐官だったヘンリー・キッシンジャー氏が、中国で周恩来首相と秘密会談を行いました。そこで氏が述べた言葉が、「ビンの蓋論」として、多くの人に知られています。キッシンジャー氏は、昔も今も日本嫌いの、アメリカ政府高官です。

 「もしわれわれが、日本から軍を撤退するとなると、原子力の平和利用によって、日本は十分なプルトニウムを保有している。米軍が撤退すると、それにとってかわるのは日本の核計画であり、われわれはそれに反対なのだ。」

 キッシンジャー氏と周恩来氏の会談で、こんなことが語られていた事実を、もっと日本国民に知らせたいものです。

 「日本が大規模な再軍備に乗り出すのであれば、中国とアメリカの伝統的な関係、つまり、第二次大戦時の同盟関係が復活するだろう。」

 「ようするにわれわれは、日本の軍備を日本の四島防衛に押しとどめることに、最善をつくす。もしそれに失敗すれば、他の国とともに日本の力の膨張を阻止する。」

 私は氏の将来予測を、正しいと思います。というより、その通りになっているとしか、言いようがありません。

 「来るべき世界の状況は、日本の孤児化であり、米ソ、そして中国に囲まれ、」これらにいたぶられるという構図が、浮かび上がってくる。」

 ハンチントン氏の言った、「孤立した文明国日本」が出てくるのは、偶然なのでしょうか。それとも学者なら、誰もが考えつく必然なのでしょうか。

 「日米安保条約は、表向き解消されないまでも空洞化は避けられない。アメリカには、日本を保護する必要がなくなるのだから・・。」「もとより、その途中の段階として、在日米軍の駐留費の肩代わりが進められることであろう。」

 トランプ大統領になり、米中対立が大きくなったと、喜んでいる政治家や評論家がいます。彼らは無知なのか、それとも国民を騙しているのか。いずれかだろうと思います。

 媚中政策を強行する二階幹事長と、農業法人化や移民政策を進める竹中平蔵氏は、米中対立のカラクリを知る政治家なのかもしれません。安倍総理もその仲間なのか、ミイラになったミイラ取りなのか、まだ不明ですが、氏の著作が、国民に警鐘を鳴らしていることだけは、理解しなければなりません。

 「来るべき世界の状況は日本の孤児化であり、米ソ、そして中国に囲まれ、これらにいたぶられるという構図が、浮かび上がってくる。」

 氏のように、激しい「米国悪人史観」は採りませんが、日本が孤児化しているという事実は認めます。親米も親中もほどほどにし、日本の領土と国民の安全を第一と考えるのが正しいのです。

 もしもトランプ氏の言葉を大事にしたいのなら、「アメリカ・ファースト」という言葉を、「日本ファースト」と置き換える知恵が要ります。

 国際社会で、各国は常に「自国ファースト」で戦ってきました。戦前の日本ではご先祖たちが、そうして頑張った事実を思い出さなければ日本が滅びます。

 スペースの都合でここでひと区切りとし、次回も「馬野説」を辿りたいと思います。

コメント (4)
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