北海道の土地問題を知り、観光立国政策で権力をほしいままにしている二階氏を知るにつけ、自民党政権に対する不信感が芽生えました。これまで私は、日本の問題は反日・左翼にあると信じ、強くこれを批判してきました。
馬野氏は、そんな私にブレーキをかけます。氏の説明によりますと、政権の座にある自民党こそが、問題になります。私が、全く知らなかった視点からの主張です。
「戦前戦中の政府検閲官たちは、雑誌書籍のゲラを出させ文中削除を要する語には、〇〇、XXを入れさせた。」「誠に純真率直で、今日から見れば、微笑ましい、大時代であった。」
「この純心を破ったのは、進駐軍であって、彼らは占領中全国の刊行物に検閲の網をかぶせたが、〇X印といった、素朴な方法は取らない。」「要は内面指導であり、占領政策に背いた者は、事後の厳罰により再発を防ぎ、少数部数の出版物については、社会への安全弁として、干渉しなかった。」
「これは当時の日本人の、考え及ばない巧妙な方法で、検閲に統計思想を取り入れ、体制に影響を及ぼさない少数者には、名目的自由を与えて民主主義の看板を、外さなかったのである。」
かってのソ連、今は中国や北朝鮮がやっているような、批判勢力への徹底弾圧でなく、とるに足りない反対は無視し、見せかけの民主主義を演出するという政策です。平成10年の本ですが、氏は、この手法を自民党政府がやっていると主張します。
「この賢い、あるいは狡い方法は、戦後日本の自民党政府の密かに採用するところとなり、より洗練され愛用されるようになった。現に行われている言論の誘導方法は、多岐にわたる。」
「その一面をここで説明すると、既に世に売り出している、あるいは売り出し得る、能を持つ物書きを、リクルートする。」
「その状況は人により様々で、政府の委員会の役職、自民党の息のかかった団体、会合に参加させる。」「あるいは講演会などに出講させるなど各様の手を使い、大なり小なり、政府、自民党に有利な世論づくりに協力させる。」
「その反対給付は、世間での盛名に従って、高収入である。」
知らなかった手法でありませんが、それを大々的にやっているのが、反日・左翼のマスコミだと思い、彼らばかりを批判していました。氏の意見に引かされる理由が、もう一つあります。氏が若い学者なら、世の受けを狙い奇抜な主張をしますので、簡単に同意しませんが、この書を出した平成元年に、氏は77才で、今の私と同じ年です。
77才でも枯れず、欲まみれの人間がいますから、一概に言えませんが、私は氏の言葉をそのまま受けとまめした。
「彼らには大幅な自由が与えられており、政府べったり、あるいは政策宣伝臭は、嗅ぎとられないように配慮されている。」
「よほど嗅覚の鋭い人でないと、彼らの正体を見破ることはできない。当の評論家自体が、自分が政府、自民党、あるいはその政策に利用されているとは、気がついていない場合も多いだろう。」
こうなりますと、反日・左翼勢力にやられっぱなしの自民党でなく、彼らを上回る政党ということになります。私のこれまでの主張が、ある意味、根底から崩れかねませんが、うなづける点もあります。もし政府の方が、反日・左翼勢力を上回っているのなら、マスコミの報道姿勢奇妙さが、正しく理解できます。
尖閣諸島への中国の領海侵犯について、なぜ報道しないのか。「武漢コロナ」の騒ぎの最中、なぜ中国からの入国禁止について一言も報道しなかったのか。あるいは、北海道における中国資本の土地買い占めを、なぜ国民に知らさないのか。韓国による、不法な竹島占拠や対馬の土地買い占めを、なぜニュースにしないのか。非道な北朝鮮の拉致について、なぜ真剣に取り上げないのか・・・・。
解けなかった長年の疑問が、氷解します。
「マスコミは、中国や韓国・北朝鮮に忖度しているのではなく、自民党政府の圧力に屈している。」
・・と、思ってもいなかった結論が出てきます。GHQによる狡猾な世論操作を、自民党が取り入れているとしたら、反日・野党を野放しにしている理由もうなづけます。
「検閲に統計思想を取り入れ、体制に影響を及ぼさない少数者には名目的自由を与えて、民主主義の看板を外さなかったのである。」
国民が与えている政党の支持率を、確認すると、氏の意見が理解できます。令和2年3月現在の数字です。
自民党 24.0 % 立憲民主党 3.5 % 立憲民主党 0.4 %
共産党 1.6 % 社民党 0.5 % 公明党 3.5 %
日本維新の会 1.3 % 支持政党なし 62.4%
自民党は腐っても鯛で、常に反日・野党を超える支持率です。マスコミの評判次第で、党の支持者が増減しますが、反日・左翼の弱小野党には、ほとんど流れません。増えるとしたら、無党派層の国民です。
つまりマスコミが、いくら弱小野党を持ち上げる記事を書いても、「体制に影響を及ぼさない、少数者」なので、「名目的自由を与えている」に過ぎないと、こういう見方ができないではありません。
しかも反日・左翼の弱小野党は、マスコミ同様、北海道の土地問題、尖閣への中国による領海侵犯、韓国の竹島占拠、亡国の移民法など、自民党の泣き所である問題については追及しません。というより、彼らには、それをする力さえないのだということが、見えてきます。
戦後長らく、私たち国民を欺いていたのは、自民党と、その政府ではなかったのか ? ・・・最近の私を捉えている疑問に、氏の著書が、一筋の光を与えている気がしてきます。
早急な結論は禁物ですが、心して読みたい一冊です。