ねこ庭の独り言

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嵌められた日本 - 10 ( 奥野国土庁長官と読売の社説 )

2020-07-10 14:01:44 | 徒然の記

 馬野氏の著作が出版されたのは、平成元年で、今から31年前です。敗戦後の日本は、変われないまま続いていたと思っていましたが、著作を読んでいますと、微妙に変化していることが分かります。

 本日は、息子たちに「生きた勉強」の一つとして、馬野説を紹介しようと思います。相変わらず、「トロイの木馬」の中曽根氏への酷評ですが、まんざら間違いでありません。

 「昭和63年、奥野国土庁長官は靖国神社の春の大祭に参拝して、中国の鄧小平の言動に、国民が振り回されているのは情けないと批判した。」「その後国会で、発言をエスカレートさせ、支那事変について当時の日本には、侵略という意図はなかったと、答弁した。」

 当時私は44才で、新聞で叩かれていた奥野氏のことを、覚えています。朝日新聞の定期購読者でしたから、極悪人のように書かれていた氏の印象が今もあります。

 「アジア全体が、白色人種の植民地になっていたが、大東亜戦争の結果独立を果たした。日本だけが、侵略者の烙印を押されるのは残念だと、述べたようだ。」「一般に世間では、自民党寄りと思われている読売新聞がどんな判断をしているかを、調べてみよう。」

 ここで氏は、読売新聞の社説を紹介します。

 「列強がアジアに進出して植民地とし、日本もそれに伍して、中国大陸を侵略したことは歴史的事実である。」「満州事変以降の日本の行動は、国際連盟の非難決議にも反し、奥野発言のように、政府は不拡大方針を支持してきたなどと正当化することはできない。」

 「やるべからざる間違った戦争だった、というのが、中曽根首相以来の政府見解であり、奥野氏の見解はこれに反する。」「戦前の歴史観から脱皮できない、政治家の一人の発言と言わざるを得ない。」

 読売の社説が、こんな意見を述べているのは知りませんでしたが、面白いのは、次の氏の意見です。

 「朝日新聞というのは、日本人の出している新聞とはとても言えないが、読売の社説の論旨も、戦後教育を受けた者の洗脳度を遺憾なく示している。徐々に本復はしているようだが、まだまだ占領政策の痕がこびりついている。」

 「まずこの読売の記者に、一撃を加えておかねばならないのは、中曽根首相以来の政府見解に奥野氏が反しているという、くだりについてである。」

 「読売が、中曽根氏の後援紙であるのかないのか、私には知るすべはないが、ここにいう政府見解は、なるほど中曽根内閣では、閣僚の守るべき約束であったかもしれないが、竹下内閣の閣僚がそれに縛られる筋合いはどこにもない。」

 私はなぜか、左傾のある歌を思い出します。

   フランシーヌの場合は あまりにもおばかさん

   本当ことを言ったら  お利口になれない

  反戦平和主義者だった彼女は、焼身自殺をして世界に抗議しました。切ない歌詞とメロディーが左傾の若者の心を捉え、大ヒットしました。馬野氏は左翼でありませんが、「本当のこと」を言いすぎているようです。焼身自殺はしていませんが、言論界の土俵に乗り、意見を述べる機会を閉ざされました。それだけに痛快な意見でもあります。

 「中国に関する発言規制法が、中曽根内閣で成立したという話は募聞にして聞いていないのだが、それならどうして、中曽根内閣以来、この男の決めたことを永久に守らねばならないのか。不思議なことを言う、論説委員もいるものだ。」

 「日本が間違った戦争をした」という、政府見解を出したのが、中曽根内閣だったとは、今の今まで知りませんでした。ロン・ヤス関係とマスコミにおだてられ、愛国心を失った氏だから、「日本は、アメリカのための、不沈空母だ」と、バカな追従が言えたのでしょう。

 一方で中曽根氏は、憲法改正が終生のテーマだと公言しています。国を愛する国民への裏切りは、安倍総理が最初でなく、中曽根氏から始まっていたと言うのが、正しいのかもしれません。

 馬野氏の意見は、31年後の今でもそのまま通用します。

 「まともに相手をするのは気骨が折れるが、しかし読売は、毎日数百万部出ている、全国紙である。その影響力を考えれば、放置できない焦燥を感じる。」

 「まず第一にこの事態は、中国当局が、文句をつけてきたところから起こっている。では中国当局に聞くが、君たちは現在、チベットで何をやっているのか。あるいは、他の少数民族は公正に扱われているのかと、」

 日本人の魂を持つ者だけが言える、中国への反論です。安部氏以下自民党の議員は、媚中の二階氏一人が抑えられず、習近平氏の国賓招致すら、「取り消し」できません。国民の信任を得ていながら、腑抜けになった自民党の議員たちに比べれば、たった一人で反論する馬野氏の方が、ずっと立派に見えます。

 「西洋かぶれの愚か者は、日中間に侵略があり植民地化があったというが、そうであれば、夏、殷、五胡十六国、金、元、清という中国王朝は、皆侵略者であり、この間中国は植民地であったことになる。」

 「大雑把な計算だが、中国本土を支配した民族は、古代から今日まで漢民族が56%、東族44%になっている。」

 「日本人は代表的東族であり、満蒙蔵族と同族である。してみれば漢族に対して日本は、清や元と何ら変わるところのないものに過ぎない。東アジアにおける、日本の軍事的、経済的活動を、侵略とか、植民地化だというのは、西洋の思想や政治概念を金科玉条として、これを日本と東洋に当てはめたものだ。」

 「そんな議論は、お門違いの骨折り損である。」

 77才の学者の言と思えない、元気の良さです。息子たちが、氏の意見をどのように受け止めるのか、聞いてみたくなります。反論する知識がないのなら、極論は極論として、せめてこの気骨だけでも見習って欲しいと思います。

 ( 現在87ページ、まだ半分も進んでいません。)

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