07.12.25
★メリー・クリスマス!!!.
皆様どのようなクリスマスをお過ごしでございましたか。
イブが休日であったため、街も静かで、
往年の賑やかな風景は影を潜めておりました。
私も、家で落ち着いて作曲に励んでおりました。
★モーリス・ラヴェル(1875~1937)のアナリーゼ講座を、
来年(08年)1月に、日本ベーゼンドルファーで開催予定でしたが、
倒産事件の余波で、残念ながら中止となりました。
そこで予定していましたお話を、時々、掲載したいと思います。
★ラヴェルの「ピアノのためのソナチネ」は、1905年の作曲です。
ラヴェルについては、一般的に昔から二つの誤解があります。
一つは、“その作風がスイス製時計のように精緻で正確だが、
冷たく、暖かみに欠ける”
二つめは、“ドビュッシーは、ピアノの名手だったが、
ラヴェルはピアノが下手だった”
★ラヴェルの「ソナチネ」は、
彼自身による演奏により、一楽章と二楽章を聴くことができます。
ペーパーロールに記録された彼の演奏を、CDで聴きますと、
二楽章は、これ以上の演奏は望めないような名演、と私は思います。
それは、ラヴェルがこの二楽章を、
どのような意図で作曲したかが分かるように、
暖かく、憧れに満ちた音色と表現方法で、演奏しているからです。
★最近、ときどき見受けられるゾッとするような冷たい音色と、
この人の感受性は一体どういう質なのか、と考え込んでしまうような
自己顕示に満ちた演奏とは、対極的な世界です。
作曲家の自作自演は、自分の作品との距離の取り方が難しく、得てして
演奏家によるものの方が、優れた場合が多いのですが、これは違います。
このCDは、比較的入手しやすいので、是非、お聴きください。
★二楽章のテンポは、メヌエットに指定されています。
冒頭の和音を、彼はアルペッジオで奏しています。
ラベルは、この二楽章の和音に
一つもアルペッジオ記号を付けていませんが、
多くの箇所でアルペッジオ奏法をしています。
バロック時代は、記譜がなくても
和音をアルペッジオにすることが多くありました。
ということは、この曲は、チェンバロの奏法を意識して、
演奏しなければなりません。
★さらに、彼は、和音の性格によって、
アルペッジオの速度を微妙に変えています。
この速度を勉強すれば、
どの和音が重要か、
どの和音が経過和音の性格を持っているのかが、
よく分かります。
たとえ皆さまが、アルペッジオでなく演奏される場合でも、
表現法の絶好なガイドとなります。
この自演を聴かずして、この二楽章は本当に勉強できない、
演奏することがとても難しい、歯が立たない、とも言えます。
★私は、サンソン・フランソワが大好きです。
ドビュッシーの作品では、
とても素晴らしい演奏をしたフランソワが、
この「ソナチネ」では、どう弾いていいのか、
戸惑いを隠せないような演奏を残しています。
それだけ、手強い曲なのです。
★ラヴェルは、ロベール・カサドシュ(1899~1972)の
演奏を好んでいました。
カサドシュの妻・ギャビーが校訂した「ソナチネ」の楽譜が、
シャーマー社から出版されていますので、ご参考ください。
★ここで気を付けるのは、
ロベール・カサドシュの意見が、ラヴェルの考え方と、
すべて一致しているわけではない、という点、さらに、
ギャビーの考え方が、ロベールとすべて一致している訳でもない、
ということです。
ギャビー版は、ラヴェルの≪孫引き≫ぐらいに位置付け、
勉強してください。
★以前、シューマンの「子供の情景」を例にして、書きましたように、
ロベルト・シューマンの考えが、妻のクララの校訂によって、
間違って、長年伝えられてきた例があるからです。
★“作風が、精緻で正確だが、冷たく暖かみに欠ける”
という誤解については、
一楽章を例にして、次回に書いてみたい、と思います。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
★メリー・クリスマス!!!.
皆様どのようなクリスマスをお過ごしでございましたか。
イブが休日であったため、街も静かで、
往年の賑やかな風景は影を潜めておりました。
私も、家で落ち着いて作曲に励んでおりました。
★モーリス・ラヴェル(1875~1937)のアナリーゼ講座を、
来年(08年)1月に、日本ベーゼンドルファーで開催予定でしたが、
倒産事件の余波で、残念ながら中止となりました。
そこで予定していましたお話を、時々、掲載したいと思います。
★ラヴェルの「ピアノのためのソナチネ」は、1905年の作曲です。
ラヴェルについては、一般的に昔から二つの誤解があります。
一つは、“その作風がスイス製時計のように精緻で正確だが、
冷たく、暖かみに欠ける”
二つめは、“ドビュッシーは、ピアノの名手だったが、
ラヴェルはピアノが下手だった”
★ラヴェルの「ソナチネ」は、
彼自身による演奏により、一楽章と二楽章を聴くことができます。
ペーパーロールに記録された彼の演奏を、CDで聴きますと、
二楽章は、これ以上の演奏は望めないような名演、と私は思います。
それは、ラヴェルがこの二楽章を、
どのような意図で作曲したかが分かるように、
暖かく、憧れに満ちた音色と表現方法で、演奏しているからです。
★最近、ときどき見受けられるゾッとするような冷たい音色と、
この人の感受性は一体どういう質なのか、と考え込んでしまうような
自己顕示に満ちた演奏とは、対極的な世界です。
作曲家の自作自演は、自分の作品との距離の取り方が難しく、得てして
演奏家によるものの方が、優れた場合が多いのですが、これは違います。
このCDは、比較的入手しやすいので、是非、お聴きください。
★二楽章のテンポは、メヌエットに指定されています。
冒頭の和音を、彼はアルペッジオで奏しています。
ラベルは、この二楽章の和音に
一つもアルペッジオ記号を付けていませんが、
多くの箇所でアルペッジオ奏法をしています。
バロック時代は、記譜がなくても
和音をアルペッジオにすることが多くありました。
ということは、この曲は、チェンバロの奏法を意識して、
演奏しなければなりません。
★さらに、彼は、和音の性格によって、
アルペッジオの速度を微妙に変えています。
この速度を勉強すれば、
どの和音が重要か、
どの和音が経過和音の性格を持っているのかが、
よく分かります。
たとえ皆さまが、アルペッジオでなく演奏される場合でも、
表現法の絶好なガイドとなります。
この自演を聴かずして、この二楽章は本当に勉強できない、
演奏することがとても難しい、歯が立たない、とも言えます。
★私は、サンソン・フランソワが大好きです。
ドビュッシーの作品では、
とても素晴らしい演奏をしたフランソワが、
この「ソナチネ」では、どう弾いていいのか、
戸惑いを隠せないような演奏を残しています。
それだけ、手強い曲なのです。
★ラヴェルは、ロベール・カサドシュ(1899~1972)の
演奏を好んでいました。
カサドシュの妻・ギャビーが校訂した「ソナチネ」の楽譜が、
シャーマー社から出版されていますので、ご参考ください。
★ここで気を付けるのは、
ロベール・カサドシュの意見が、ラヴェルの考え方と、
すべて一致しているわけではない、という点、さらに、
ギャビーの考え方が、ロベールとすべて一致している訳でもない、
ということです。
ギャビー版は、ラヴェルの≪孫引き≫ぐらいに位置付け、
勉強してください。
★以前、シューマンの「子供の情景」を例にして、書きましたように、
ロベルト・シューマンの考えが、妻のクララの校訂によって、
間違って、長年伝えられてきた例があるからです。
★“作風が、精緻で正確だが、冷たく暖かみに欠ける”
という誤解については、
一楽章を例にして、次回に書いてみたい、と思います。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲