音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Bach は、Vivaldiを勉強して20年後にイタリア協奏曲を完成■

2015-03-22 23:43:40 | ■私のアナリーゼ講座■

■Bach は、Vivaldiを勉強して20年後にイタリア協奏曲を完成■
~名古屋「イタリア協奏曲第2、3楽章・アナリーゼ講座」~
                  2015.3.22  中村洋子

 

 


★昨日3月21日は、Johann Sebastian Bach(1685~1750) の

誕生日でした。

「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」は、

Bach が何歳の時の作品か? と問われた時、

きっと、若々しい青年期の作品であろうと、

答える方が多いと、思います。

横溢した生命力と、音楽の楽しみに満ち溢れているからです。


★音楽の初心者にとっても、この曲は、親しみやすく、

ある意味で、取り組みやすい、シンプルな曲、

というイメージさえ、抱かれます。


★しかし、前回2月25日の、

「Italienisches Konzert イタリア協奏曲・第1楽章」講座で、

あの一見明快な第1楽章が、実に精緻な countepoint 対位法 と、

Bach 後期の、複雑な和声によって作曲されていることを、

勉強いたしました。

 

 


★25日は、いよいよ「第2、3楽章」講座です。

Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886~1960)は、

彼の校訂版で、この第2楽章について、

「悲しみから滲み出る嘆きが、希望へと、

そして哀願へと、移り変わっていく。

最後に再び、自らの中で嘆きが、消え去っていくのである。

この嘆きの歌の多彩なニュアンスは、

言葉では、言い尽くせないほどである」と、記しています。

講座では、この点について、詳しくご説明いたします。


★第3楽章について、Edwin Fischer は、

「3楽章の Thema テーマ は、Orgelbüchlein

オルゲルビュッヒラインの

≪ In dir ist Freude! あなたの中に、喜びがある! ≫

という曲から来ている」と、指摘しています。


★この≪ In dir ist Freude! あなたの中に、喜びがある! ≫は、

1715~16年にかけて、作曲されているようです。

「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」出版の、

約20年前になります

 

 


In dir ist Freude!を、詳細に分析しますと、

実は、その中に、Antonio Vivaldi 

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678~1741)の、

ある violin協奏曲の、重要な motif モティーフが、

そのまま使われているのです。


Vivaldiのこの violin協奏曲は、1711年に出版されており、

Bach は、何とその約2年後に、独奏鍵盤楽器作品として、

編曲しています。


Bach の作品は、何十年もの周到な勉強と準備、

そして、熟成を経て初めて、1735年に花開いたのです。

Bach はそういう作曲家です。

古い作品の断片を、寄せ集めたのではないのです

 

★講座では、いつものように、

 「Manuscript Autograph  自筆譜 」facsimile に等しい

Bach 公認の初版譜と、Edwin Fischer 版を、道しるべに、

ご一緒に勉強いたしましょう。

 

 

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● 中村洋子 バッハ・イタリア協奏曲 アナリーゼ講座 Ⅱ

■日時 : 2015年 3月25日(水) 10:00 ~ 12:30

■会場 : カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」

■予約: カワイ名古屋  Tel 052-962-3939

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■ 
第 2楽章 ~美しい旋律に、非和声音が精緻な装飾を施している~

「イタリア協奏曲第 第 2楽章」では、Bachが珍しく記した

テンポ記号≪ Andante ≫ のもつ深い意味を、解き明かします。


★蜘蛛の糸のように、精妙に織り込まれた、

第 2楽章 の右手旋律は、たくさんの ≪ 非和声音 ≫ を、

含んでいます。

この右手旋律を、装飾音記号で書き換えることすら可能です。

そうしますと、旋律の骨組みがむき出しに現れてきます。


★この、主に≪和声音≫から成る「骨組み」が、

どのように≪非和声音≫で装飾されているか・・・、

それを理解いたしませんと、

右手が絶えず、美しい旋律を細やかに弾いているだけの

「 退屈な演奏 」 になってしまいます。


★Bach は、Alessandro Marcello のオーボエ協奏曲を、

独奏鍵盤作品に編曲しています。

( Concerto d-Moll BWV 974, nach dem Concerto

d-Moll für Oboe, Streicher und Basso continuo von

Alessandro Marcello )

マルチェロの原曲を、どんなに美しく Bach が装飾し、

編曲したかを勉強いたしますと、第 2楽章 が一気に、

分かりやすくなります。

 

Fischer は 「 the scales full of fire、first in the

treble 、then in the bass 火のような音階、最初はトレブル、

次いで、バスで 」としています。

この意味は、どういうことでしょうか。


★Edwin Fischerは、書いています。

つまり、歓喜の歌をトランペットが、高らかに鳴り響かせるように、

弾きなさい、と指示しています。

講座では、これらのことを、分かりやすく、ご説明します。


★このスケールをピアノでどのように弾くべきか・・・、

真珠のネックレスのように、ただ美しく、

粒を揃えて弾くべきではない、

ということは、 Bach の作曲意図からして、

自明の理です。

 

 

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■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

        2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

        07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

        08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
             CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

        08~09年:「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

        09年:「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
   10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

        10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

        11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
   チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

        13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

   14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
    「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

           スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

       ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」 
        https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
 https://www.academia-music.com/                           で販売中。

      ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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