音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■ ピアノもお箏と同じ運命? ■■

2008-11-14 12:52:02 | ■私のアナリーゼ講座■
■■ ピアノもお箏と同じ運命? ■■
               08.11.14 中村洋子


★雑誌「邦楽ジャーナル」11月号の「ニューリリース」欄と、

「通信販売」欄に、私のCD 「龍笛とピアノのためのデュオ」が、

紹介されました。


★12月号で、さらに詳しい紹介記事が、出るそうです。

このCDでの私の新しい試みに、理解を示していただき、

嬉しく思っております。

担当された編集者の方も、「大変に心が落ち着く音楽です」と

おっしゃっています。


★かつて作曲しました箏の曲が、ある航空会社の機内での、

イヤホン音楽として、使われていたのを、最近になって

私が知りました。

やや、複雑な気持ちもいたしますが、聴いていただけるということは、

やはり、作曲家にとって、うれしいことには違いありません。

この曲は、CD「箏レボリューション Ⅰ」に入っております。


★戦前の映画などを見ますと、それなりのお家の床の間には、

お箏が立て掛けてある光景を、よく拝見いたします。

お嬢さんの嗜み、教養として、お箏が普及していたのが、

よく分かります。


★ちょうど、現代のピアノに相当すると思われますが、

なぜ、それが、ピアノに取って替わられたのでしょうか。


★これは、現代のピアノ音楽、あるいは、クラシック音楽の

抱えている危機、にも似ていると思われます。


★世の中に氾濫する、口当たりのいい商業主義の音楽に

惑わされて、ピアノを習う子どもたちが、

地道にコツコツと学ぶことよりも、

映画音楽や、流行のムード音楽を弾いてみたい、

と思うのは、致し方ないかもしれません。


★ここで、ピアノの先生方が、それに迎合して、

生徒さんを失うまいと、そのような曲を、

レッスンで使いますと、結局は、

その生徒の、音楽への本当の興味の芽を摘むだけでなく、

クラシック音楽の真の愛好者、

ファンを、失うことになるのです。


★かつては、アップライトピアノを買うことが

お母さんや子どもの夢でしたが、

その大事なピアノも、埃をかぶり、あるいは、

処分してしまう、という話もよく聞きます。


★お箏が、家庭から、次第に消えていったように、

ピアノも、同じ運命になることがありえます。


★私がいま、できますことは、ピアノの先生方や

音楽愛好家の皆さまに、クラシック音楽、特に、

J.S.バッハへの「入門」の曲としての 「インヴェンション」を、

ご一緒に、じっくりと学ぶことです。

そして、この「バッハの音楽」が、人類の宝物であり、

それを「本物」のピアノで、心から楽しみながら、

弾き続ける喜びを、分かち合うことです。


★来週の11月21日(金)に、開催いたします、

「インヴェンションとシンフォニア 5番」の

アナリーゼ講座の準備で、いま、忙しい毎日です。


★シンフォニア 5番を、ダーフィット・シッケタンツさんの

ヴァイオリンと、ピアノとで、二重奏したしました。

いつもは、一人でピアノで弾いているこの曲を、

二人で“音楽の対話”をしながら、弾きますと、

それはそれは、楽しいものです。


★この方法を、皆さま方のレッスンで活かすことも、

十分可能だと、思います。

この実演をいたします21日のアナリーゼを、

是非、聴いていただきたいです。


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