写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

転 機

2004年12月08日 | 生活・ニュース
 定年退職をして三年が経った。長年の疲れと垢を落とすため、旅にテニスに趣味にと、自分中心の毎日が過ぎていった。

 そんなある日、ひょんなことから、民生のお手伝いをする役が回ってきた。不本意ながらも、引き受けることにした。
 
 早速、在宅介護の方に関係機関からの「歳末見舞金」をお渡しするという初めての役を果たす機会があった。

 寝たきりの高齢者・重度の身障者の家庭を訪問し、拙い慰労の言葉を述べ、「お役に立つことがあれば何なりと」と言って夫々の家を後にした。
 
 しかし、介護の現実を見たその日から、私はそれまでの自分本位の生き方から、大きく舵を切らなければという気がし始めた。不本意などと言ったらばちが当たる。
   (写真は、介護に係るパンフレット)

椎の実

2004年12月08日 | 季節・自然・植物
 まだ午後4時だと言うのに、木々の茂った山沿いの小路は、もう薄暗くなりかけていた。自転車で家の近くまで帰って来たところだった。

 小さなリュックを背負った50前の女性が、木の下に屈みこんでしきりと何かを拾っている。私は自転車を降りた。

 片手のひら一杯に、小粒のかわいいどんぐりを大事そうに載せている。訊いて見ると、「椎の実」だと言う。何年も近くに住んでいて不覚であった。

「椎」の名は良く知っているが、その木が「椎」とは全く知らなかった。皮をむいてそのままでも食べられる、数少ないどんぐりの一種だと教えてくれた。また少し自然のことに詳しくなれた。

 明日、度の強いめがねをかけて、私も「落ちぐり」を拾ってみよう。ビールのつまみに合うとも言っていたから。

 3粒ほど、この写真用に分けてもらった。
   (写真は、初めて知った「椎の実」)

挿 絵

2004年12月08日 | 生活・ニュース
 二十年来、日本経済新聞(日経)と、もう一紙を購読している。日経の最終面には今、渡辺淳一の連載小説が掲載されている。

 86年には「化身」の霧子、97年には「失楽園」の倫子、そしてこの11月から「愛の流刑地」で、冬香が主役を演じている。

 過去、多くのビジネスマン読者が、朝の電車・仕事机で愛読したと聞く。何れも、男と女の本質に迫る恋愛小説だといわれ好評であった。

 今回の内容は、まだ始まったばかりなので、成否の予断は許されないが、女性画家・小松久子の描く挿絵がいい。

 私はストーリーはさておき、もっぱらこの挿絵を毎朝楽しみに眺めることにしている。12月7日付け「密会14」のこの挿絵は特にいい。

 日経は、堅いのか柔らかいのか。私同様、好きな男が多いようだ。
    (写真は、「密会 14」の挿絵)