写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

薬 疹

2018年11月26日 | 生活・ニュース

 11月の初めに風邪を引き、咳が出始めたのでかかりつけの病院で薬を処方してもらった。数日後、咳がひどくなったので再び病院へ行くと「少し強い薬にしましょう」といって、それまでと違う薬を服用していた。

 ところが数日後、咳が収まるどころか、手や足に発疹ができ始め、指がパンパンに腫れてきた。我慢が出来なくなって國病へ駆け込んだ。血液検査やCT検査をするも、異常はない。皮膚科で「薬疹ではないか」と診断されて塗り薬をもらい「今まで飲んでいた薬は飲まないでください」と言われて帰ってきた。

 その後、手足の発疹は成長し、足の裏には大きな水疱ができ、痛くて歩けないほどとなった。水を抜いてもらった翌日からは何とか歩けるようになった。こんなことで3週間がたった現在、手足の皮は見事に剥げて、まさに「皮をはがれた因幡の白うさぎ」状態となり、一皮むけた手足となり、やっと普通の生活ができるようになっている。

 たかが風邪と高をくくっていたが、とんだ1か月を過ごす羽目となった。巷では、やれ紅葉狩りだ、ライトアップした庭園でお茶会だなどとかまびすしい声が聞こえていたが、この秋は家の中でじっと我慢の日々を過ごした。

 気がつけば、時は早くも11月も下旬。師走の足音もすぐ近くに聞こえる。年賀状も今から準備を始めなければいけない。例年に比べやや出遅れた年末行事を、少しずつ片づけていく。そんな中、明日は節目の誕生日。古来稀な古希をとっくに超して、なお生きている。

 今年の暮れは、長い患いがあったせいか、面倒だと思っていた年末の作業の一つ一つが、生きているという実感を味わえる大切な行事であるように感じている。こうしてブログを書く気も出てきた。さあ、まずは年賀状の印刷から始めてみるか。


数毒?

2018年11月07日 | 生活・ニュース

 毎日新聞を購読しているが、数年前から社会面の右上に「数独」の問題が毎日出されている。数独とは、パズルの一種で、9列9段のマス目を3列3段のブロックに分け、各列・各段・各ブロックに1から9までの数字を重複しないように入れていく頭の遊びである。

 当初は「初級」と書いた、初級者向けのものが出されていた。掲載が始まってから毎朝、この数独をやるのを楽しみにしていた。初級は少し簡単すぎるような気がし始めたころ、週に2回「中級」が出されるようになった。これは少し手ごたえはあるが、慣れてくると毎回解くことができるようになっている。

 一度だけ、「上級」というのが出されたことがあったが、これさえも、時間はかかったが解くことができた。それに気をよくして、ネットで「無料数独」というものを見つけて、「上級」をやってみるが、これは解けない問題が多い。「最上級」というものもあり、数独の奥は深い。

 私が朝から楽しそうに数独をやっているのを見ていた奥さんが「頭の体操のつもりで私もやってみよう」と言い出し、1か月前から毎朝数独をやり始めた。初心者としてのテクニックを2、3教えたが、その後は「初級」の問題は確実に解けるようになっている。

 ところが「中級」となると、1人では中々解けない。ヒントを出すと、その個所だけは解けるが、そこから先がまた解けない。「中級」では、周辺を全方位的に見ながら考えていかないと答えは見つからないが、それが面白い。

 かくして奥さんと2人、毎朝、新聞掲載の数独の問題に、お互いが無言で取り組んでいる。他人から見ると、まさに数独の問題に毒されているように見えるかもしれない。ひょっとすると「数独」とは、正しくは「数毒」と書くのかもしれないとさえ思っている。


小春日和

2018年11月06日 | 季節・自然・植物

 暖かい日の続いた10月の末、庭仕事をしていた時、背中がぞくぞくっとしたようなことがあった。案の定というか、体力が低下したというか、久しぶりに風邪を引いてしまった。「バカ」ではないことが分かったが、熱はないのに咳が出て苦しい。肋骨のつなぎ目が外れるのではないかと思うほどになった。

 病院で処方された3種類の薬を飲み始めて2日目に、37.2~3度と、平熱の低い私にとってはやや高熱が出た。4日目が経った頃やっと、熱もなくなり、体の調子も戻ってきた。やれやれ、ちょっとした風邪であったが、寝ていることも苦しい毎日であった。

 夕方、久しぶりに表に出たとき、顔なじみの女性が散歩しているのにばったり出会った。我が家の玄関アプローチに植えている若い花水木を指さして「今年は紅葉がいちだんときれいですね」という。私も久しぶりに眺めてみたが、黒みがかった赤色が、今年は濃いい感じがする。

 ここ数日間、風邪で寝たり起きたりしている間に、季節は着実に巡っている。そういえば、明日7日はもう立冬である。ここ1週間は連日小春日和であった。向こう1週間も、こんな暖かい日が続くという予報が出されている。

 そんな中でも、鳥取県の大山の紅葉は、例年になく美しいと伝えている。「出かけてみるか」。病んでいる間の時間を取り戻すかのように、「蟄虫坏戸」(ちっちゅうはいど)していた私のお出かけの虫が、またぞろ這い出してきたようである。

*「蟄虫坏戸」;72候の一つで、活動していた虫たちが、冬眠するために掘った穴に入り、その穴を塞ぐという意味


お昼のママ

2018年11月02日 | 生活・ニュース

 4日前のことである。朝起きた時、のどに少し痛みを感じた。ここ10年余り、風邪らしい風邪を引いたことはないが、風邪を引いたときのあの痛みである。そういえば、前日、庭仕事をしているとき背筋が寒く感じたが、そのまま仕事を続けたことがあった。

 案の定、久しぶりに風邪を引いたようである。翌日になってのどは痛いが、熱もないので1日中家の中で休んでいた。そのあくる日、咳が出るようになった。痰は出ないが咳が出る。置き薬のルル3錠を飲んだが、咳が止まらない。今朝も起きてから咳が出る。

 10時過ぎにかかりつけの病院へ出かけた。血液検査と肺のX線検査をしたが特に異常はない。診察をおえて待合室に戻り空いた席に座ろうとしたとき、隣に座っている女性が「茅野さん…」と声をかけてくれた。よく見ると、現役時代に時に行っていた駅前のスタンドバーのママである。

 顎まで覆う大きなマスクをしていたにも関わらずかかわらず、よく分かったものである。「風邪を引いたもので…」といいながら久しぶりに話をした。「店を10月末で畳んで九州に帰ることにしました」という。確か熊本出身で、五輪真弓の「恋人よ」の歌が上手いママであった。

 朱色のカウンターがあり、8人が入れば満席となる瀟洒な店であった。41年間一人で頑張ってきたという。「茅野さんは何歳になられましたか」と聞かれ「今年喜寿を迎えます。ママは?」と言うと、笑いながら「71になります」「ええっ、60位にしか見えませんよ」と、お世辞抜きで見た目の若いママに言う。

 そんな話をしているとき、支払いのため名前を呼ばれて「じゃあ、お元気で」といって別れた。抗生物質とシロップの飲み薬をの処方箋を出してもらって家に帰ってきた。この病院では、5年くらい前にも、違うスタンドバーのママと出会ったことがあるが、お昼にママに出会ったとき、飲んでいるときのようにバカ話はできないし、どんな話をしたらよいのかいつも悩むものである。

 


小銭一掃

2018年11月01日 | 生活・ニュース

 朝食もとらないまま免許証の更新に出かけた。無事新しい免許証をもらって警察署を出て、近くのコンビニに向かった。家を出るとき、奥さんに「ブランチには、コンビニの例のサンドウィッチを買ってくるから」と約束していた。

 最近売り出された、奥さんが好みのサンドウィッチである。店内に入ると、お目当ての品が1個しか並んでいないので、私用には違う種類のサンドウィッチを買ってレジに向かった。ポニーテールをした若くて愛想のいい女性店員が笑顔で対応してくれる。

 レジの左横には、買い求めた商品の合計額が客に見えるようにディスプレイで表示される。「合計643円」と出た。まずは千円札を出して「ちょっと待ってください、小銭があるかもしれませんので」と断って、小銭入れの中を見るとたくさん入っている。まずは1円玉がちょうど3個あったのでそれを出した。

 店員から「これでよろしいですか」と聞かれたとき10円玉を4個出した。またもや「これでよろしいですか」と聞かれた。再度小銭入れをまさぐると100円玉が1個あったので、それを出し「以上でお願いします」というと、即座にお釣りとして500円玉を手渡してくれる。

 「計算が早いですね」と愛想をいうと「レジが教えてくれますから」と笑顔で応えてくれる。そんなことは分かっているが、このように小刻みにお客が出す小銭に対し、いやな顔一つ見せずに、迅速に的確に、その上笑顔で対応してくれるコンビニの店員さんに感心しながら店を出た。

 年を取ると皆さんから優しく接してもらえるという大きなメリットがあるが、おっと、それに甘えてばかりではいけない。これからは、店員さんにこんな迷惑をかけないように、小銭は銭形平次よろしく片手に握りしめて、いかなる額でも即座に投げ出すことができるように準備しておきたいと心に決めた。