写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

似顔絵

2008年02月29日 | 生活・ニュース
 新聞の広告欄を見ていると、「似顔絵を描いてあげます」というものがあった。写真を送ると、数千円の費用で似顔絵を描いてくれるという。

 このイラストの使い方は色々あるだろう。サラリーマン時代、ある商社の人と名刺の交換をしたとき、その人の似顔絵が書いてあった。硬い話をする前に、その似顔絵のことでその場が和み、スムーズに話が進んだこともあった。

 営業の仕事をする人にはこの種の名刺は相手とのコミュニケーションをとる上で強力な武器になる。

 リタイアーした人でも初対面の人に会う場合、やはり名刺のようなものはあった方が良いように思う。

 名前と住所だけではなく、趣味やボランティアや所属している同好会に係る肩書きを書いておくと、初対面でありながらそこから話が広がっていく。

 その上、似顔絵が描いてあれば、パーティのように大勢の中で会ったとしても、顔を覚えてもらうことができ、後々何かの役に立つかもしれない。

 私は名刺に、資格のいらない勝手な肩書きを書き並べているが、似顔絵までは描いていない。新聞の広告を見たあと、鏡を見ながら自分の顔を描いてみた。

 何度描いてみても、実物よりはハンサムに描いてしまう。髪も多く、眼は大きく口元きりりで、しわもない。

 それはそうかもしれない。描いていながら、おかしな顔になったときには途中で丸めてごみ箱に投げ捨ててしまうからだ。

 少しくらいいい男になっているのは許してもらって、今度作る名刺には、この似顔絵を隅っこに貼り付けて見たい。

 実物と違いすぎて、かえって混乱を来すことが起きるかもしれないが、それはそれで又話のネタになるかもしれない。
 (写真は、実物以上に描いた「似顔絵」)

流氷ひとり旅

2008年02月28日 | 旅・スポット・行事
 オホーツク海に流氷が流れ着いたとのニュースを見た。「一面の銀世界」「流氷が押し寄せるオホーツク海」「雪化粧した知床連山」と魅力ある言葉が並んでいる。

 その新聞を読みながら「冬の北海道に行ってみたい」と、妻に言ってみた。「寒いところは、私大嫌いなの」と、返事はつれない。

 雪のないところに住んでいると、メルヘンの世界のように思われる。結晶のまま降ってくる雪の中でコートの襟を立て、しばれるプラットホームに立って知床の山々を眺めてみたい。青い海を白く埋め、きしみ合う流氷も見てみたい。

 「夏と冬、どちらが好き?」と聞かれたら、私は迷わず「冬」と答える。夏場高温でふやけた身体の細胞が、冬にはきっちりとスクラムを組んで、背筋をピンと伸ばしてくれるように感じるからだ。

 それを極限まで味わせてくれるところが冬の北海道だと思っている。移住するわけでもないのに、妻はなかなか腰を上げてくれない。とすれば氷点下の北海道へ、男のひとり旅でもしてみるか。

 「もし、旅のお方、おひとりですか?」と、背中から妙齢の女性に声をかけられたら、どうしたものか。旅に立つ前から裕次郎気取りの「北の旅人」は、この冬も流氷ひとり旅の妄想に悩まされている。
   (写真は、未だ見ぬオホーツクの「流氷」)

数 独

2008年02月26日 | 生活・ニュース
 3日間、84歳になる妻の母が山口から遊びに来ていた。脚は少し弱ってはいるが、頭も口も胃腸も十分に元気であった。

 広島のデパートに連れて行き、都会の空気を楽しんでもらった。中国山脈に分け入って雪景色も堪能してもらった。

 夕食を済ませて雑談をしているとき、家の中での1日の過ごし方を聞いてみた。新聞を読んだりテレビを見たり、近くのスーパーに買い物に行ったりの毎日であった。

 「おかあさん、頭の体操でこんなものがありますよ」と言って、数独を見せた。簡単に遊び方を説明したとき、2,3の質問はあったがそれ以上興味を持つ様子はなかった。

 義母が帰っていった2日後、電話がかかってきた。数独をやってみたいという。本屋に行けば適当な問題集があることを伝えた。

 我が家で話したときには、やってみたいような素振りは見せなかったが、家に帰ったあと時間つぶしとボケ防止のためにやってみる気になったのだろうか。

 インターネットでGoogleを開くと「SUDOKU」と書いた数独のゲームがある。難易度は5段階に分かれており、私はもっぱら最難関の一歩手前のものに四苦八苦して遊んでいるが結構楽しめる。

 義母もぜひこれに挑戦することでテレビ浸けから脱却してもらえば、まだまだしっかりした頭で人生を楽しんでもらえること間違いないと思う。

 そのうち、「婿殿、もっと難しい数独はありませぬか?」などと挑発的なことを言われるのではないかと心配しながら、私は今日も数独に励んでいる。
  (写真は、Googleで遊んでいる私の「数独」)

期待はずれ

2008年02月25日 | 食事・食べ物・飲み物
 春一番が吹き荒れ時折小雪の舞う中、雪見に出かけた。目的地は岩国の西北、島根県との県境の峠にある民芸風の和食レストランである。錦帯橋から10km入ると、辺りは雪景色に変わった。

 用心のためタイヤチェインは積んであるが、路上に雪は積もっていない。木々の枝には、クリスマスツリーを見るかのように綿状の雪が積もっているが、時折枝を揺るがしながら粉となって落ちてくる。

 迫ってくる後続の車に道を譲り景色を見ながらゆっくりと走らせた。1時間余り走り、連続したいくつかのトンネルを抜けると標高375mの県境の傍示ヶ峠である。

 そこにぽつんと1軒レストランがある。あたり一面は雪が積もっている。こんなに冷たい日でも何組かのお客が来ている。

 ホームこたつの席が並べてある窓際の席に座った。いつものように、この店の売りとなっている大きな竹串に刺してある焼き鳥にむすびとうどんを頼んだ。

 待つこと少々、注文の品が運ばれてきた。ここの焼き鳥は甘いタレがおいしい。期待してがぶりと口にしたが、焼き鳥なのに中のほうが冷たい。

 予め火は通してあるのだろうが、この冷たさは我慢できない。店員さんにその旨話すと「もう一度焼いてきましょう」と言って持っていった。

 5分後、丁寧なお詫びを言いながら持ってきてくれたものは、中まで良く焼けていて期待していたこの店の焼き鳥の味であった。

 以前、洋食屋さんでハンバーグを頼んだ時にも、同じように中の冷たい物が出てきたことがあった。

 熱いはずのものが、熱くない。プロであるにもかかわらずこのありさまだ。歳のせいか、こんな時に黙っていることが最近出来なくなった。

 これはただ我慢が出来ないというのではなく、店に対しての思いやり・親切だと私は思っている。

 素直に対応してくれたお店に「ご馳走さま」と言って雪道を引き返したが、今日は冷たいものに縁のある1日であった。
  (写真は、こたつに入って眺めた「雪の庭」)

一発合格

2008年02月22日 | 生活・ニュース
 1週間前から確定申告の書類に書き込みを始めた。収入を証明するための年金支払証明書や雑収入の書類を引き出しから引っ張り出した。控除を受けるため、社会保険や必要経費を証明する資料も揃えた。

 医療費控除を受けるため、奥さんは1年間ノートに領収書を貼り付けて整理してくれている。二人とも医者通いが多く、診療費・薬代・交通費の合計額はばかにならない。

 これだけの資料がそろえば、あとは計算機を片手にマニュアル通りぱちぱちやれば納めるべき税金が計算できる。

 昨日、完成した確定申告書を持って税務署に行こうとしたとき、肝心の領収書を貼り付けたノートが行方不明になっていた。

 「お父さんに1週間前に渡しました」「いや、俺はもらっていない」の攻防がエスカレートする。ゴミ箱や引き出し、マガジンラックや新聞の保管箱などを何度も探すが見つからない。

 これがないと、還付される金額が1万円ばかり減ってしまう。夕方、風呂から上がって又探したところ、奥さんが思いがけないところから見つけてきた。

 普段は使わない部屋の隅に置いてあったという。先日、お客があったときに、その辺のものと一緒に片付けて持って行ったものだろうと言う。

 やっとすべての書類が整った。今日、いそいそと申告書を抱えて税務署に出向いた。署員が添付資料がそろっている事を確認した後、計算機で記入数字をチェックする。「はい、これで結構ですよ」と、一発で合格した。

 善良な市民に対しては、余計な詮索はしない。信頼してもらっていることに対して、「来年も正しい申告をして下さいよ」と言われているように感じながら帰った。

 「さあ、今夜は還付金で外食だぁ」と思ったが、考えてみると新たに儲けた金ではなく、もともと自分の金が遅れて戻ってきただけである。

 ところで署員は、申告者のどこを見て善良か否かの判別をするのだろう。私の申告書は100%うそ偽りはない、ないと思う、多分ない。
  (写真は、確定申告用の「ツール」)