真夏のような暑さの5月が終わろうとしている今、我が家のバラ園では80株のバラが最盛期を過ぎて、一輪また一輪と花びらを落とし始めている。「今年は庭の真ん中あたりにある花の咲きが悪かった。消毒の時期が遅かったみたい」と奥さんが少し反省を込めて呟いているが、毎朝いろいろな名前のバラがこちらを向いて楽しませてくれている。
2週間前、バラ園と隣地の間に懸案だったメッシュフェンスを自力で完成させた。眼隠しとしてルーバータイプのラティスを取り付けると、庭全体が一つの閉ざされた空間になり、人目を気にすることなくお茶を飲んだり新聞を読んだり、落ち付いて時間を過ごすことが出来るようになった。
今朝も、庭に新聞を持ち出してコーヒーとサンドウィッチでの軽い朝食をとった。正面を見ると、数年前に境界に据え置いた大きなバラのアーチが新設したフェンスに密着していて窮屈な感じに見える。アーチをバラ園の中ほどに移動させることにした。力仕事は全て奥さんとの2人作業だ。ヨイショ、ヨイショと掛け声を合わせて1m余り前に運び出した。
中々いいあんばいの配置となった。いつものように自己満足に浸っていたが、今一つ何かが足りない。バラ園の中に象徴的なものが欲しい。そうだ、あれを作ってバラのアーチの真ん中にぶら下げよう。早速工房に入り適当な板を取り出して「English Garden」と書いた銘板を作って取り付けた。
その瞬間、我が家の小さなバラ園は「English Garden」に早変わりをした。庭にバラが植えてあればEnglish Gardenだと思い込んでいたが、銘板を取り付けた後になって、そもそもEnglish Gardenとは、どんな庭のことだろうという疑問が湧いてきて調べてみた。
「English Gardenとは、フランスやイタリアなど左右対象、図形的な模様、整形的な配置の美を追求した庭園とは違い、自然風景からヒントを得て作られる庭のこと。本来イギリスの田園地帯、自然の風景をモチーフに自然な感じの庭をイメージして作られるもので、イギリス式風景庭園と呼ばれている」と書いてある。
この定義であれば、イギリス種のバラを植えた田舎風のちょっとした庭は全てEnglish Gardenと呼んでもいいことになる。我が家の銘板は偽りではないという結論のもと、所を得たように今銘板は堂々と風にゆったりと揺らいでいる。