写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

拍子木

2004年12月31日 | 生活・ニュース
 今日、山間部では小雪が舞ったという。寒さもやっと本格化した。夜11時を回ろうとしている時、「カッチ、カッチ」と拍子木の音。

 そういえば、数日前から、ほぼ同じ時刻に聞こえていた。都会に住んでいる時には聞くことはなかった、忘れていた音だ。

 しばらくぶりに聞いた。昔懐かしく、故郷にいて、なお郷愁を覚える音だ。冷たく乾いた空気の中から、透明な音が近くに聞こえた。

 パジャマのままマフラーを巻いただけで、デジカメをもって飛び出した。消防団の法被を着た、屈強な男性ふたりの夜回りであった。

 「寒い中、ご苦労様」「火に気をつけて下さい」と交わして、一枚パシャり。シャッターを押す手が寒さで僅かに震え、画像が流れた。

 地域の皆さんに支えられながら、この1年が終わろうとしている。来年はこの私もほんの少しだが、支える側の生き方もしてみたい。
   (写真は、地元消防団の夜回り) 

もろぶた

2004年12月31日 | 生活・ニュース
 昨日30日、餅をついた。29日には、餅はつかないことにしている。一晩水に浸して置いたもち米は、機械に入れ50分経てば餅になる。餅とり粉を薄くまいた「もろぶた」の上で、手で丸めて大小の鏡餅にした。

 「もろぶた」・・・懐かしい言葉だ。年に一度、年末に出てくる名詞だ。子供の頃、近所の数軒が臼のある我が家に集まり、餅つきをした。

 かまどの蒸篭で蒸した米を、大人に混じって杵でついた。丸めた餅を、時々口に運びながら「もろぶた」に並べ重ねていった。

 今ある「もろぶた」は、この時のものである。もう、僅か4箱しか残っていない。薄い板がやせている。木釘も折れているものがある。

 年が明けたら、手直しして大事に使おう。この「もろぶた」を見ていると、何故か心温かくなれるから。
   (写真は、古い「もろぶた」)