写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

たばこがうどん

2004年12月13日 | 生活・ニュース
 朝から難題が持ち込まれた。事務所の机にかじりつき解決策を考える。簡単に答えは見出せない。「よし、気分転換だ。一服しよう」

 引き出しを開けると、たばこが切れている。ロビーの自販機に向かった。コインを入れた。頭の中は、くだんの難問で一杯だ。

 下を向き、考えながら立っていた。直ぐ落ちて来るはずのたばこが、なかなか出てこない。そうこうしていると、下のほうから湯気が上がってきた。

 なんと、うどんがすべるように押し出されてきた。間違えて「うどん自販機」にコインを入れていた。隣が、「たばこ自販機」だ。

 時計はまだ10時前、昼飯には早すぎる。未練を残しながら人目につかぬよう、そっと側に置いてあるポリバケツに投げ込んだ。

 恥ずかしい。誰にも見られてはいなかった。若く悩み多きサラリーマン時代の、本当は人に言えない思い出である。
   (写真は、大きくなった今の自販機)