70年余りも生きていると、日常生活で初めて出会うような出来事や物はほとんどない。子どもの頃は、見るもの聞くことの全てが目新しく、毎日がそれらの知識や体験の積み重ねであったに違いない。長じるに連れて、そんなことが少しずつ減っていき、この年にもなると「そんなことはみんな分かってるよ」状態となり、何を見ても驚くこともなく表情も変化に乏しくなっている。
そうはいってもこの1年を振り返り、一体どんな初体験があったかを探ってみる。う~ん、なかなか思いつかない。あっ、そうだ。年の初めに北アルプスに行った。真っ白い山の重なった向こうに、槍ヶ岳の尖った頂を見た。写真では何度も見たことのある実物を初めて見た。帰りには白川郷の合掌造りも初めてであった。
食べものでは何かあっただろうか。これはない。食事はみんなおいしく食べたが、食材として初めて食べたものはないが、料理としては「ラザニア」を食した。平たい板状のパスタを用いた焦げ目を強くしたグラタンのようなものであったがおいしかった。岩国検定は3回目であったが、今回は初めてCDなるものを発売した。販売中は「今日は売れるか、明日は売れるか」と、久しぶりに心ときめく楽しい毎日を過ごした。
おっと、、初めての大事な出来事を忘れていた。息子の縁談に伴う、両家の顔合わせ、結納、結婚式があった。9月の半ばであった。遠くにいる息子から電話で「結婚することにした」と聞いた時「そうか、おめでとう。よかったな」と短く答えたことを今思い出している。息子からの初めての結婚決意の報告であった。
10月には、出来て間もない国立病院へ初めて入院し、私にとっては初めての病名で手術をした。楽しい話ではないが、今どきの病院・入院手術・看護の実情を学んだが、こんな初めては、この先まっぴら御免である。
振り返ってみたこの1年間、初めて経験して、少し感動したり心ときめかしたり、心を傷めたりしたことは、これくらい。さて来年は、もう少し好奇心をもって積極的に生き、楽しく明るい初めてのことをもっと体験し、驚きや感動のある年にしてみたいと年甲斐もなく考えている。来る年に対してこんな所信を書いたのも初めてか。