写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

すがぬけ(紹介)

2016年06月30日 | 季節・自然・植物

 6月も今日で終わり、1年の半分が過ぎたことになる。どんよりとした曇り空を眺めている時、子どもの頃のこの時季、今津の神社で「すがぬけ」といって、木の小枝で作った大きな輪をくぐるお祭りがあり、何度か行ったことを思い出した。以来、行ったことはないが、いつ頃からであろうか、この祭りも途絶えて久しい。

 一体この祭りは何だったのか。「すがぬけ」と書いて検索してみるが、岩国の神社での行事で称される呼び方で、一般には「夏越大祓」と呼ばれるものらしいことが分かった。

 神社の説明によれば、「夏越大祓とは、6月の晦日と12月の大晦日に、宮中をはじめ各地の神社で大祓式が斎行される。特に6月の大祓式は『すがぬけ』とも称され、茅(かや)でできた茅の輪(ちのわ)をくぐる。夏に挙行される意味として、半年に一度、雑菌の繁殖し易い夏を前に新しい衣類に替える事で、残りの半年を疫病を予防して健康に過ごすようにする意味があったのではと考えられている」という。

 参道の鳥居に茅で編んだ大きな輪のくぐり方は、まず正面から最初に左回り、次に右回りと 8 字を描いて計3回くぐると書いてあるが、子どもの頃そんなことは知らず、ただくぐりぬけてお参りして帰るだけであった。

 自分の身体を雑菌から守ることを神様にお願いするよりは、消毒薬やウエットティッシュに頼る世代が多くなった今の時代、「すがぬけ」という季節の行事を見ることも聞くことも、とんとなくなっている。

 


ひと絞り(紹介)

2016年06月28日 | 季節・自然・植物

 目下梅雨の真っ盛り。夕方のテレビで翌日の天気予報を若い女性気象予報士が解説していた。今週は週末まで毎日「曇り時々雨」だといっている。鬱陶しい1週間、大した雨量ではなさそうだと思って聞いていると「ひと絞りするでしょう」という。

 「ひと絞りするでしょう?」、初めて聞く言葉であった。どんな様子のことを言っているのか。濡れたタオルをひと絞りしたときの、ちょと滴るくらいの雨が降ることをいうのだろうかと思い調べてみると、「ひとしきり雨が降ること」と書いてある。

 「ひとしきり」とは、「しばらくの間」ということ。であれば、この1週間は、しばらくの間雨が降るということで、まさに梅雨空の毎日ということのようである。

 意味は理解できたが、「ひと絞り」と表現する雨の降り方のイメージと、それが意味する降り方に少し差があるように感じる。タオルでも絞るといえば最後の一ひねりで落ちてくる僅かな水滴を想像するが、そんな短時間で少量の降雨量ではなく、時間的に少し長く降ることをいうようである。

 そういえば、言葉で「ひと○○」という言葉は沢山ある。ひと仕事、ひと芝居、ひと勝負などの「ひと」は数字の「ひとつ」を表す。ひところ、ひと通り、ひとわたりなどの「ひと」は不特定の一時期や大体の範囲などを表す。ひとかど、ひと癖はちょっとしたものを表し、ひと眠りする、ひと風呂浴びるなどのように「ひと…する」の形で軽くある動作を行うことや、あることを一通りする意を表す。

 この理屈からいえば「ひと絞りする」といえば、軽くひと雨が降るということになるが、この気象予報士はどんな意味でこの言葉を発したのだろうかと思いながら、キリンひと絞りならぬキリン一番搾りを飲んでひと風呂浴びてひと眠りした。

 


梅雨の晴れ間は(日記)

2016年06月27日 | 生活・ニュース

 雷付きの大雨が降った後の日曜日、朝から久しぶりのいい天気である。朝食を済ませた後、ウッドデッキに出て両手を高く上げて大きく背伸びをしたとき、置いてあるプラスティック製の白いデッキテーブルセットに目が行った。

 10年も前に買ったと記憶しているが、長い間、紫外線や風雨にさらされたからであろう、埃もついて汚れているばかりか色もあせて見苦しい状態となっている。これではいけない、何とかしなければ。納戸から缶に入ったペンキを持ち出し、大きめの刷毛で丸いテーブルと4脚の椅子にせっせと塗っていった。1時間足らずで、作業は終わった。

 やや離れて薄眼で眺めると、あたかも新品のようにきれいに見える。今まで長い間放っておいたことが申し訳なく思えるほどであった。この勢いを駆って、玄関アプローチに置いてあるアルミ製のテーブルセットにも塗装をすると、玄関周りが急に明るくなってきた。

 何ごとも、長い時間をかけて徐々に変化したものは、大きく変化しているにもかかわらず、そのことに気がつきにくい。屋外に置いたテーブルセットだけではなく、人間の変容もまたしかりだが、こればっかりは単にペンキを塗れば解決するわけでもなく、いかんともしがたい。

 きれいに再生できたウッドデッキのテーブルセットを見た奥さんが「テーブルセットがきれいになったので、ウッドデッキの汚さが目立つようになったわね」と、暗にデッキの塗装を催促するような言い方をする。そういえば、毎年5月の連休にやっていた塗装を、ここ2年間、さぼっていることに気がついた。

 ウサギ小屋のような小さな家1軒といえども、長年住んでいると日常色々と維持管理する仕事は多い。「毎日、暇を持て余しています」とばかり言ってはおれない。「おとうさ~ん、エアコンの掃除と庭の草刈りはお願いしますよ」、新聞を読んでいると、早速次の仕事を命じられた。夏の到来を前に、あ~忙しくなってきたぞ。
 


捕らぬ狸の皮算用(話題)

2016年06月26日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び

 6月25日、広島カープは阪神戦で、ドラフト1位の新人・岡田投手が9度目の登板で待望のプロ初勝利を挙げた。チームは怒涛の8連勝、貯金は今季最多の「13」となり、2位のDeNAに8ゲーム差をつけて1強5弱の状況となっている。

 ペナントレースは各チームとも70数試合を終え、約半分の日程が終わったところである。広島カープは現在42勝29敗で勝率は約60%、残り試合は70戦。今の勢いでいくと残り試合は42勝28敗ペースとなり、84勝57敗で終わる。現在2位のDeNAが84勝するためには残り試合を51勝20敗、勝率は現在の48%から何と72%まで上げて勝ち進まなければいけない。

 広島カープも今の絶好調が今後とも続くとは限らない。残り試合の勝率が50%に落ちたとして計算してみると、残り試合を35勝35敗、一方DeNAは残り試合を44勝27敗、勝率は62%まで上げなければいけない。

 想像したくはないが、ある日広島カープが突然絶不調となり、残り試合の勝率が45%に落ちたとすると、32勝38敗、DeNAは41勝30敗、それでも勝率は58%でなければならない。この「捕らぬ狸の皮算用」から判断すると、今年のペナントレースはすでに広島カープが優勝することは誰の目から見ても明らかである。

 この計算結果を見ながら、私はかぐや姫の「神田川」の歌詞を思い出している。「若かったあの頃、何もこわくなかった ただあなたの優しさがこわかった」とある。今の広島カープに当てはめて歌ってみた。「強くなったこの頃 なにもこわくなかった ただカープの必死さがこわかった」。 
 
 この捕らぬ狸の皮算用、信じてもいいように思っていますが皆さんは素直に信じることは出来ますか。ともあれ、フレーフレー広島カープ!!

オタフクソース(普遍)

2016年06月25日 | 食事・食べ物・飲み物

 「お昼はその辺にあるもので何か食べて下さ~い。2時過ぎには帰ってきます」と言い残して、奥さんは昼前に出かけて行った。最近は、お昼に出かける用事の多い奥さんが帰って来て作ってくれる昼食を2時や3時に食べることが時々ある。

 今日もそんなパターンなんだと思いパソコンを相手に遊んでいたが、1時を過ぎたころから力仕事をしたわけでもないのに無性に腹が減ってきた。その辺にあるもので何か食べてくれと言われたが、牛やヤギではないので、その辺の草を食べて過ごすわけにはいかない。

 冷蔵庫を開けてみると、生ソバがひとつあった。都合よく豚肉もある。「よし、焼きそばを作ろう」と決め、他の材料を探してみると、タマネギ、ニンジン、ピーマンがあった。残念ながらキャベツはなかったが、白菜を流用することにして早速焼きそば作りに取り掛かった。

 豚肉と野菜をまず炒める。並行して隣りのレンジで生ソバを少し焦げ目がつくまで炒める。ほど良いタイミングでソバと野菜を合流させ市販のオタフクソースを適量加えてよくかき混ぜると完成だ。見た目、ソースの量が多すぎたのか、色が濃く辛そうに見える。対策として、炊飯器で保温中のごはんを一口分、焼きソバを盛った皿の端に乗せた。

 時計を見ると1時半、やおら自作の焼きソバを口に入れると思わず「まいう~」と叫びたくなる納得のおいしさであった。生ソバを焦げ目がつくくらいよく焼いたのが功を奏して、香ばしくかりかりしていて奥さんが作ってくれるものよりはおいしく感じたが、こんなことは奥さんには口が裂けても言えない。 

 ところで焼きソバというものは、いつ誰がどこで作っても同じ味でおいしく感じるのは、料理人の腕がいいからではなく、ひょっとしてみんなオタフクソースの味だからに違いない。日本を席巻するオタフクソースに乾杯しておこう。