写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

アーモンド

2011年03月31日 | 季節・自然・植物

  3月の末、例年より1週間ばかり遅れてサクラが咲き始めた。いつかいつかと待っていたが、やっとその気になってきたようだ。さあ、本格的な春がやって来たぞと思いながら久しぶりに裏庭に眼をやると、数年前には私の背丈くらいしかなかったアーモンドの木は、いつの間にやら2倍の高さになっている。
 しかも、多くのつぼみを付けており、サクラの開花に先駆けてすでに3分咲きの様相である。遠くから見ると、サクラと見まがうくらいそっくりな花だ。心なしか色がやや濃いくらいか。知らない人が見るとまさにサクラである。「サクラに似ているなあ」と言うだけでは、オーナーとしては失格。早速調べてみた。
 「バラ科サクラ属の落葉高木。原産はアジア西南部。木は約5メートルになる。日本では3-4月にかけて、葉のない枝に、白色又は桜色・桃色の花弁の端に小さな切込みの入ったサクラの特徴を有する花を、サクラ同様のたたずまいで咲かせ7-8月に実が熟する。サクラの花との違いは、花柄(かへい)が非常に短く、枝に沿うように花が咲くことである」と書いてある。
 これを読んだあと、すぐに庭に出て丁寧に観察してみた。花柄とは、花を支える茎のことをいうが、まこと、花柄が短いというより、ないに等しく、花が直接小枝から咲いているように見える。外見でのサクラとの違いはこんな些細なところにあることを知った。
 サクラが咲く季節、我が家の庭にも桜の木が1本欲しいなと思っていたが、いつ奥さんが植えたのか知らないが桜そっくりのアーモンドが立派に大きく成長し、下で花見の宴が出来るほどになっている。
 ちなみにアーモンドの和名はヘントウ(扁桃)ともハタンキョウ(巴旦杏)あるいはアメンドウとも呼ぶという。
 それで分かった。アーモンドの花に向かって「おい、サクラ」と声をかけてもヘントウもなく、花の下で酒を飲めば直ぐにバタンキュウとなってしまう。なんとも、ああメンドウな木ではある。


さいた、さいた、サクラがさいた

2011年03月30日 | 季節・自然・植物

 昨日のブログで、錦帯橋のサクラのつぼみは大きく膨らんではいるが、まだ咲いていないことを書いていた。明けて今日(30日)、暖かい1日であった。午後、岩国検定の定例会に出席した後、公民館の前庭に出たとき、会員のKさんが桜の木の枝先にデジカメを向けていた。
 近付いてみると、4輪5輪がほころんでいる。ここは錦帯橋の川端とは違って少し暖かいのだろう。今年のサクラの開花である。自然と笑顔になり心が躍る。その時、昨日見た錦帯橋のサクラがどうなっているか気になった。
 帰る途中に立ち寄ってみると、若い木の枝先に、ここでも数輪が咲いていた。その他のつぼみも、3日見ぬ間ではなく、わずか1日見ぬ間に大きく膨らんでいる。この分だと明日あたりは、一挙に咲き始めるような勢いとみた。このブログを書いているとき、「今日、東京や横浜でサクラが咲きました」とテレビが伝えている。日本列島に、いよいよ桜前線が北上を始めたようだ。          
 この時季、毎年私は心忙しくなる。毎日弁当を抱えて錦帯橋詣でをするからだ。今年は一体何回通えばいいのだろう。こんな忙しさなら、いくらでも耐えられるのが不思議だ。
 さいた、さいた、サクラがさいた。さあ、がんばろう、にっぽん!
  (写真は、Kさん撮影のものを借用)

 


固いつぼみ

2011年03月28日 | 季節・自然・植物

 3月末だというのに、このところ肌寒い日が続いている。錦帯橋の桜のつぼみの膨らみ状況を観察するため、スーパーで弁当を買い込み、ハートリーとの3人組で、ござを抱えて出かけてみた。
 日差しのある錦帯橋の上河原の芝生の上には、ひと組のカップルと若い男女8人組が車座になって弁当を食べている以外は誰もいない。時々カップルが腕を組んで歩いていくだけである。
 つぼみを見ると、先の方は濃い桜色をしていて、今にも咲き出でようとしているものが2、3割であろうか。残りはまだ固く緑がかっている。
 このブログをめくってみると、昨年は3月24日に開花宣言が出ており、3月末には2、3分咲きであったと書いている。この調子だと、今年は1週間ばかり遅い開花宣言のように思われる。例年通り準備万端の2軒の茶店も、散策する客がいなくて手持ちぶさたのよう。音量を大きくしたラジカセから、誰にともなくお昼の歌謡曲が流れているだけであった。
 錦帯橋がよく見える芝生の上にござを敷き、暖かい日差しの下で弁当を食べた。少し離れたところで、初々しい振る舞いのカップルが食事を終え、男が芝生の上で大の字になっている。私にも、あんな時代があったかどうか。そういえば、そばに座っている奥さんと、そんなことがあったか、なかったか。何れにしても、遠い遠い昔の話。私が硬い硬いつぼみの頃の話である。春よ、はーやく来い。


エンボス加工

2011年03月26日 | 生活・ニュース

 「エンボス加工、体験してみませんか?」。中央公民館でこう書かれたパンフレットを見つけた。そばには、エンボス加工を施した名刺入れがサンプルとして置いてある。「おもしろそう」、定員15名のこの講座に、奥さんと2人で申し込みをしておいた。
 当日の朝9時半、いそいそと出かけた。エンボスとは、作品を見ればなんとなく理解は出来るが、どんなことをするのかの知識は全くない。あらかじめネットでほんの少し知識を仕入れておいた。
 「エンボス(Emboss)とは、浮き上がらせるという意味で、板金や紙などに文字や絵柄などを浮き彫りに加工することをいう。エンボス加工することで、見た目と手触りとの二重の効果を与えることが出来る。金属での例としては自動車のナンバープレートが代表的なものである」と書いてある。
 参加者は定員いっぱいの15名がそろっていた。若い人も数人いる。男は私一人。少し内股で歩いておとなしく席についた。先生は50歳代のテキパキとした美人。この雰囲気なら頑張れそうな予感がした。
 その日の課題は、厚さ1mm、大きさは名刺大の錫の合金板に、あらかじめ先生がけがいてくれているチューリップの花を道具を使ってエンボス加工することであった。黒板に書かれた手順に従って先生が手本を見せる。7つの工程を、歯医者さんが使うような先の尖ったものやへらのような形をした金属製の道具を使い分けながら、花びらや茎や葉を浮かび上がらせていく。仕上げは、周辺を額縁加工して全ての作業を終えた。
 2時間があっという間に過ぎていた。どの参加者の顔にも満足の笑みが浮かんでいる。出来栄えは人それぞれ、様々であったが、間違いなく自分の手で仕上げたものである。作品には裏側から硬化性樹脂をくぼみに埋めて固まらせ、表からの陥没防止を図る。 さらに接着剤を塗布して、自分の好みの持ち物に貼り付けると完成だ。
 私は作品を家に持ち帰った後、黒革表紙のビジネスノートに貼り付けた。何度も手で触リ、感触を楽しむ。うむむ、使い古したノートが、再び輝きを戻してきた。愛着心もわいてきた。エンボス加工って、なかなかいいじゃあないか。そうだ、今度はあれに貼ってみるか?

 


シロウオ

2011年03月25日 | 季節・自然・植物

 「あった、あったわよ」、奥さんが夕食の買い物から帰ってきて、ポリ袋をテーブルの上に置きながら、何やら手柄を立てたような顔をして言った。
 袋から水が入った2個のポリパックを取り出した。早春の風物詩と言われるシロウオが浅い水の中で泳いでいる。3割引きだったというだけあって、半数のシロウオはすでに横になっている。残り半数はまだ元気に泳いでいた。
 今津川のシロウオ漁も、年々漁獲量が減っているのは知っている。今年も2月初旬に解禁となっているが、近くのスーパーではついぞ見ることはなかった。今年はもう口に入ることはないと思っていた3月の末になって、初めて売り場で見つけたという。
 早速、夕食での調理方法について話し合う。いつものことだが、踊り食いというやつはどうしてもできない。口の中であたかも残虐な行為をしているような罪悪感が、シロウオの味を無味乾燥なものにしてしまう。いつものことながら吸い物にすることにした。泳いでいるときには薄茶色の透明な体だったものが、お椀の中では降ったばかりの雪のように真っ白い。
 濃く味付けられた煮魚のような旨さは感じないが、そこはかとない春の香りがしてくる。シロウオという魚は、味覚ではなく眼で味わう魚かもしれない。
 全部で60匹くらいいたようだ。貧乏症のせいか、いつも1匹がいくらに相当したのかを計算してみる。5年前は1匹10円だった。今年もほぼ同じ値段であった。漁獲量が減ってきたというが、値段から判断すると、それほど減少してはいないのではないかと少し安心した。
 例年ならこの時季満開になる隣家のモクレンは、今年はまだ3分咲き。やや遅い春がゆっくりとやってきている。