写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

ブログ5周年

2009年10月31日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 2004年11月1日に、ブログを始めた。それからの日々、書くことのある日もない日もあったが、努めて何かを書くようにしてみた。その中から、自分なりにこれはと思うものを再加工して新聞のエッセイ欄へ投稿し掲載されることもあった。
 自分一人が投稿活動するそんな毎日に飽き足らず、1年たったころ、エッセイを投稿する仲間の同好会を立ち上げた。募ってみると、エッセイを書いてみたいという仲間は結構いる。発足時の5人が半年後には10人になり、1年後には15人、今では19人に膨らんだ。
 ブログの効用はと聞かれれば、まずは暇つぶし。社会や自然や人を見る目が丁寧になり、自分自身が活性化する。何事に対しても漠然と見たり感じたりするのではなく、その中から何かを発見してみたくなる。生きる姿勢や行動が積極的になる。読んでもらった人からの反応も嬉しい。ブログとは、読者を意識しての「格好つけた日記」と言えばいいのだろうか。
 5年間で掲載した数は、約1400編。1年あたりの掲載数は年々少なくなってきているのは、惰性による感性の低下か、はたまた持っていた話題をすでに書きつくしてきたせいか。
 この1年分をプリントアウトしてみると、ちょうど300ページになっている。これに目次と表紙を付けて、5冊目のたった1冊の手作り自費出版本を作り始めようとしている。タイトルは? この1年の出来事で1番印象に残っていることを言葉にして表現してみたい。
 明日からは6年目。ブログを始めたからこそ出会えた多くの友がいる。懲りることなくエッセイともいえぬ文章をまたぞろ書いていく。お立ち寄りの皆さん、これからもお付き合いのほど、どうかよろしくお願いいたします。
  (写真は、プリントアウトした「5冊目の原稿」)

「老けた代役」

2009年10月27日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 9月15日に、このブログに掲載していた800字で書いたエッセイを550字に圧縮して毎日新聞の「男の気持ち」に投稿していました。日数が経ち、もう掲載されないのだなと思っていた起きがけ、「今朝の新聞、読みましたよ」という遠くの随友からのメールで、掲載されたことを知ったエッセイです。

  「老けた代役」

 夕方、散歩して家の近くまで帰ってきたとき、男の子がグラブを持ってコンクリートの壁に向かってボールを投げているのに出会った。この子とは数ヶ月前に1度キャッチボールをしたことがある。「キャッチボールやろうか」、「はい」。話はすぐに決まった。
 サラリーマン時代の昼休み、毎日ソフトボールをやっていた。28年前に買ったグラブを家から持ち出しキャッチボールを始めた。
 この子には祖父はいるがお父さんがいない。6年生というが、まだ幼さが残るかわいい顔だ。
 「スポーツは?」「水泳を習っています」。野球はあまりやっていないようだ。ボールの投げ方を見ても体を正面に向けてぎこちなく投げる。「体は横に向けて、こうやって投げるんだよ」と、にわかコーチをする。
 「ボールを捕る時には、高いボールはグローブをこう向けて、低いボールはこう向けて捕る」と、キャッチングの基本も教える。何とか投げて捕る格好がつくようになった。
 私がこのグラブを買ったのは、息子が10歳と5歳の時。休日にはよくキャッチボールをして遊んでやった。男の子とキャッチボールをしながら、自分の息子と遊んでいたころを懐かしんでいた。ちょうどその時、男の子の祖父が自転車で通りかかった。「遊んでもろうとるんか、ええのう」。少年が少し恥ずかしそうな顔をして私を見た。
(2009.10.27 毎日新聞「男の気持ち」掲載)
(写真は、28年前に買った「愛用グラブ」)

仲介犬

2009年10月26日 | 生活・ニュース
 ここ数日は、出かけることがあって日課にしている夕方の散歩をさぼっていた。これではいけない。土曜日、1年ぶりに城山に登ってみることにした。ローソンでむすびを買い、ハートリーとのいつもの3人で紅葉谷公園の登山口から登り始めた。
 道沿いに植えてあるモミジも、紅葉にはまだ少し早い。登り始めて間もなく12時のサイレンが聞こえてきた。この時間帯、登る人も下りてくる人も少ない。そんな中で、下りてくる夫婦と出会う。「こんにちは」、あいさつを交わした後「かわいい犬ですね。なんという種類ですか」。よく聞かれる質問だ。「コッカースパニエルという犬ですよ。人懐っこい犬です」と言う間でも、ハートリーはすでにその人の足元でしっぽを振って見上げている。
 40分後、喘ぎあえぎではあるが頂上の近くまでたどりついたとき後ろから「犬も頑張ってますね。頂上はまだですか?」と声がかかる。上背のあるがっしりとした同年輩の男が声をかけて来た。「もうすぐですよ。どちらから来られました?」「小倉からです。城が見たくて娘夫婦ときました」。振り返ると若い二人も上着を脱いで登ってきている。遠くから観光に来て、城山に歩いて登っている。健康志向の観光旅行だ。
 ハートリーを連れて歩いていると、このように見知らぬ人から思わぬ声が良くかかる。私にとっては知らない人と言葉を交わすきっかけを作ってくれる仲介犬となっている。ハートリーも心得たもので、こんな時にどう振る舞えば喜んでもらえるかを良く知っている。相手が若い女性の時には、ひっくり返って腹まで見せてサービスする。
 そこまでやるのはやり過ぎだよと言いたいけれど、それを見て喜んでいるのは実は私かもしれない。ハートリーのおかげで、時に若い女性とお話が出来るのだから。ありがとう! 仲介犬ハートリー。
(写真は、城山登山口のある「紅葉谷公園」)

児童養護施設

2009年10月22日 | 生活・ニュース
 民生のボランティア仲間34人が、バスを借り切って防府市にある児童養護施設「防府海北園」を訪れた。
 本来両親と共に家庭で育てられるべき子供たちが、さまざまな理由により入所し生活する場が「児童養護施設」である。現在70名が入所している。年齢層は幼児から高校3年生まで。入所理由は、父母の死亡・行方不明、保護者の入院・経済的理由・養育困難・虐待、不登校などであるが、半数もが虐待を受けていたことが理由だという。
 地域とのふれあいを大切にし、さまざまな行事に参加するなどして、子どもたちを地域の一員として育てようという姿勢である。「施設の子とは言わせない」というのが合言葉だ。
 平日のお昼だったため幼児以外は学校に行っていて誰もいない。そんな中、居住部屋を見学させてもらった。2段ベッドと各人の学習机のある日あたりのいい部屋ばかりだ。食堂に入ってみた。壁には各人が書いたのであろう、食事に対する心がけのような言葉が掲げてあった。
 「話に夢中にならず食べる」「茶碗をきちんと持って食べる」「音を立てずに食べる」「食事マナーを身につけて感謝して食べる」「好き嫌いをしないで三角食べをする」「肘をつかないで食べる」「残さず食べる」「箸を正しく持って食べる」「口を閉じて音を立てずに食べる」などと無邪気に書いてある。
 食事のしつけまで親身になってやっている様子がうかがわれた。実際の家庭でもこんなことは最近なおざりになっている。大いに反省をさせられた。
 こんな施設の子供たちのために今、「里親制度」を利用した里親を募っている。月に1人当たり4.8万円程度の補助が出るが、応募者ははなはだ少ないとの説明があった。そんなことよりも、何と言っても、子供たちを施設に入れないで済むような世の中にすることが一番であるという園長の言葉を聞きながら研修を終えた。こうした施設で育っている子供が大勢いる。
(写真は、研修の帰りに立ち寄った「防府天満宮」)

峨嵋山縦走

2009年10月21日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び
 「20日に峨嵋山に行ってみようか」。会うたびに峨嵋山の話をしては別れていた幼馴染のN君が、具体的な日にちを決めて電話してきた。
 N君は現在、石田流岩国鉄砲隊の隊長として隊員を指揮しながら伝統文化の継承に奮闘している。合間には趣味の山登りで足腰を鍛えている。そんなN君に誘われて久しぶりに山に行ってみる気になっていた。
 峨嵋山とは、光市室積の象鼻崎にある海の見晴らしがいい標高117mの山である。「117m? 低い山だね」、高さだけを聞いて何の問題意識を感じることもなく、おにぎりと卵焼き、それに塩シャケを入れた弁当をリュックに入れて出かけた。
 天気は山登りには最適な薄曇、時々晴れのいい天気。海岸線を走って岩国から車で1時間、大きく湾曲した海岸線の向こうに、峨嵋山とそれに連なるやや低い山並みが見えた。車を止めてその日の行程をN君が話し始めた。「あの連なった山の右端から左端まで7つの山を縦走する」という。
 峨嵋山だけなら最近運動不足の私でも問題ないと思いきや、低い山とはいえ7つもの山々を縦走するとは初耳だ。ここまできて逃げるわけには行かない。覚悟を決めた。登山口に車を止めて登り始めた。最初から坂は急で息が弾む。下のほうから大きく潮騒が聞こえる。木立のとぎれからは時折、四国の山並みがかすかに見える。
 せっかく登ったと思ったら今度は下る。これを7回繰り返してやっと踏破した。時計を見ると1時間30分経っていた。標高は低いが久しぶりにうっすらと汗ばんだ。降り立ったところは「周防橋立」と呼ばれる岬の先端。空き腹に弁当をかきこむ。
 幼馴染と、小学校の遠足のような気分でしばらく風に吹かれながら四方山話で時を過ごす。山登りも良かったが友と二人での弁当もいいもんだ。誘ってくれてありがとう。時にはまた山へ登ろうと、どちらからともなく約束をしていた。今快い臀部両脇の疲労を感じている。
   (写真は、右から左に縦走した「峨嵋山連山」)