写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

目隠し

2017年05月31日 | 木工・細工・DIY

 庭というものは手を加えていくにつれて、次から次へと新しい仕事が増えてくるということが分かった。この春、バラの開花シーズンを前にして、ラティスの補修をした後、パリジャンブルー色に塗装をしたり、バラを鑑賞しやすいように東屋の位置をえっさえっさと奥さんと抱えて移動もした。

 おかげで西日をもろに受けることなくバラを鑑賞出来て奥さんは大満足の様子であったが、私から見ると、一つ気になることがあった。奥さんは家の前を通る人の視線が気になるので、庭の入り口に設置しているラティスに日除け用のすだれをかけている。

 1年も経つと、すだれは黒っぽく変色してみすぼらしい感じがする。これではいけない、何とかしなければと考えて、妙案を思いついた。ラティスには幅が4㎝の板が10㎝ピッチで斜め格子状に取り付けられているので、全面に6㎝角の空間が沢山あるので、視線を遮るにはちょっと目が粗い。この6㎝の隙間に同じく幅が4㎝の板を取り付けることにした。

 こうすれば、空間の3分の2が埋められることになる。ホームセンターに行ってもこんな板は売っていない。仕方なく大型のラティスを買って帰り、それを分解して材料にした。半日かけて3枚の仕事を終えた。出来上がったラティスはまるで箱根の寄せ木細工のように色が違って面白い。

 「塗装などしなくて、このままがいいわ」と奥さんも高い評価。しばらくは寄木の面白さを楽しむことにしたが、目的の目隠しの効果も十分に果たしてくれている。明日からは人目を気にせずガーデンモーニングが楽しめそうである。

 


たまに行くならこんな店

2017年05月28日 | 食事・食べ物・飲み物

 春夏秋冬、廿日市市の北西にある西の軽井沢と呼ばれる辺りには、よくドライブに出かけている。こじゃれたレストランや、気の利いた薪ストーブが置いてあるカフェがあったりして、ゆったりとした時間を過ごすことができる。
 
 いつも通る道とは違った道を走ったとき、ログハウスのイタリアンレストランがあるのを見て知っていたが、ついぞ入ってみたことはなかった。先日、テレビでこの店を紹介しているのを見ると、料理がおいしくて評判のいい店であることを知った。

 店の名は「Trattoria Ruzzo」(トラットリア ルッツオ)という。Trattoriaとはイタリアの飲食業において、庶民が日常的に利用するレストランのこと。Ruzzoとは、イタリア語で「はしゃぎまわる」「とにかく楽しむ」という意味で、お客さんに「楽しんでいただきたい」という思いを込めて店名としたという。

 37歳のオーナーシェフが「生まれ育った大好きな地元で店を持ちたい」という夢をかなえ開店した。イタリア産チーズや天日干し原塩など食材や調味料は厳選し、化学調味料は使わない。デザートもソースまで手作りにこだわっている。好きなパスタに150円加算でサラダとドリンクがつく平日の「パスタランチ」が人気のようである。

 こんな情報を調べておいて、予約して行ってみた。岩国から渡ノ瀬ダムを見ながら北上し、30㎞走ると到着した。ちょうど岩倉温泉と小瀬川を挟んで向かい合ったところに位置し、せせらぎを眺めながらのテラス席もあるが、室内の席に座った。

 パスタランチとローストビーフのサラダ、食後のドルチェにコーヒーなどを奥さんと分け合って食べた。店の雰囲気はもちろんのこと「パスタの味もドルチェも、今まで行ったどの店のものよりもおいしかったわ」と奥さんに言わしめた、たまに行くならこんな店であった。


人が寄る

2017年05月27日 | 生活・ニュース

 毎日新聞の1面には、読者が投稿する川柳が毎日18首掲載され、第1首目にはその日の優秀賞として人文字の笑顔が記されている。今日(26日)の優秀作品は「楽しそに してると人が 寄って来る」というものであった。

 この川柳は確かに言いえていると同感した。会社勤めをしているとき、1日中走り回っているわけではなく、ちょっと自由な時間が持てる時がある。そんなときに、他の部署に出かけていき、仕事にかかる情報の交換ばかりではなく、雑談などしてリフレッシュをするようなことはたびたびあった。

 そんな時間ができた時「さて、今日は誰の所に行ってみようか」とまず考えて行き先を決める。せっかく訪ねて行っても、忙しそうにしているときには相手にしてもらえない。相手方も、余裕があるときでないと話し相手になってくれない。

 では時間に余裕がある人であれば誰でもいいかというと、そうではない。訪ねて行くと笑顔で迎えてくれ、話していて楽しい人でないといけない。こんなことは会社の中だけではなく、友達や近所付き合いでも同じことであろう。

 わざわざ自分の所へ訪ねてくれる人がいれば、まずは笑顔で迎える。笑顔を作るにお金はかからない。やる気になれば誰でもできる。そして楽しい話題を提供することが最大のサービスと心得ている。

 しかしそんなことが自然体でできるのは、何はさておき自らが心身ともに健康でなければできない。この川柳の通り、楽しそうにしていれば、必ず人は寄って来る。そのためにも、何はなくともまずは健康第一を旨とし、楽しいことや楽しい話題を提供できるような生き方をしたいと思っている。

 


余談に花が

2017年05月24日 | 生活・ニュース

 小雨が降り始めた朝早く、広島の病院へ3か月に一度の定期検診を受けるために出かけた。どの待合室も患者は多い。採血を済ませた後、1時間半が経ったころ名前を呼ばれて診察室に入った。60歳に近い部長先生が私の担当医である。

 血液検査の結果を見ながら「変わりはありませんね」という。意味が分かりかねて「検査の数値が今までと変化していないということですか」と念を押すと「そうです」と答える。「毎日の生活で、何か気を付けることはありませんか」と聞くと「そうですね。免疫力が低下しないようにしてください。疲れてくたくたになるようなことはしないことです」という。

 「はい、分かりましたが、このところ広島カープの試合をテレビで見ていると、大変疲れますが、いいでしょうか」「そうですね、僕も疲れますよ。今年は昨年のようにはいきませんね」「エラーは多いし、ピッチャーも打たれ過ぎます」「西川も菊池の代わりをするにはまだ早そうだし……」と、診察室で先生との会話がカープ談議に変わったとき、「カープの話をし始めるときりがありませんから、今度どこかでやりましょう」と患者の私の方から切り上げて診察室を出た。

 1年半前、初めてこの診察室に入ったとき、カープの応援グッズが先生の机の上に何種類か置いてあった。「あー、この先生、カープのファンなんだな」とは思っていたが、患者の話に直ぐに乗ってくるとは思っていなかった。

 先生も、入れ代わり立ち代わり入ってくる多くの患者を診ているが、時には雑談くらいしてリラックスしたいのだろう。それもカープの話であったから、渡りに船の話題であったに違いない。この先生のためにも、今宵もカープに勝ってほしいが、診察室でこんな話をしていては、待ち時間が長くなるわいなあ。


雪の下

2017年05月23日 | 季節・自然・植物

 エッセイの月例会の折、男性会員の一人がプラスチックの小さな苗カップに、葉の大きな植物を入れて数カップ持ってきた。「欲しい人がいたらどうぞ持って帰って植えてみてください」という。

 いったい何なのか聞いてみると、「雪の下」という。常緑の多年草で、湿り気のある半日陰や日陰の岩場などに、親株の根本から横に長く伸びた地上茎である走出枝(ランナー)を出して繁殖するという面白い植物のようだ。夏には白い花をつけ俳句では鴨足草と書いて「ゆきのした」と読ませ夏の季語となっている。

 ランナーを伸ばし地を這って繁殖する植物を調べてみると、良く知られているものとしてはイチゴがあるが他にはオリズルランやホテイアオイがある。

 小さな植物といっても、子孫を残すためにはこのように独創的な発想で生きながらえてきている。したたかと言えば強かだが、親株からの距離は近いとはいえ空間を飛び越して新しく支店を設け、そこに根を下して新天地を開くという優秀な営業マンのようなことを、あの草のどこで考え付いたのかと感心するばかりである。

 古くより雪の下の葉は、生薬として炙って腫れものなどの消炎に用いたリ、煎じて解熱・解毒に利用する。また食料としては、葉の裏面だけに薄く衣を付け、揚げたものを「白雪揚げ」といって天ぷらにして食べるという。

 そんな「雪の下」といえば、鎌倉に「雪ノ下」という大字の地名を持つ地域が鶴岡八幡宮の周辺にある。1191年2月、降雪が5寸になった雪見のため、鶴岡八幡宮を訪れた源頼朝が山辺の雪を長櫃に入れて夏に備えて貯蔵させたことが由来とされる。

 かくも由緒ある地名のようだが、「○○の下」という名は何か悪い印象を抱かせる言葉がいくつかある。「鼻の下」とか、政治の世界ではいつの時代でも「袖の下」がまかり通り、浜の真砂と同様尽きることはないようだが、「雪の下」に限っては、周辺はすべて真っ白け。黒い噂話はどこにもなさそうである。