2週間前には名古屋から、今日は東京から、現役時代に岩国の工場で一緒に仕事をした4年後輩のNさんと1年先輩のkさんが岩国にやってきた。それぞれ開催される会社の同期会に参加するためであった。Nさんとは会の前日に昼食をとりながら、kさんとは会の翌日である昨日の午前中に会うことが出来た。
Nさんは3年ぶり、Kさんは8年ぶりの岩国だという。かつて2人とも10数年間岩国の社宅に住んでいて、子育てもし、充実した仕事をした仲間である。「当時とあまり変わっていない岩国で、今日は知らない場所を案内しましょう」といって短い時間、2人とも吉香公園へ連れて行き、同じコースで隠れたスポットを案内した。
岩国に生まれ育った人でも、岩国のことをあまり知らない。当の私がそうであった。長年住んでいて、錦帯橋があることくらいは知っていたが、それ以上のことといえば、とても人様を案内できるレベルのものではなかった。これではいけないと発奮し、6年前、仲間と市民に対して岩国に関する知識を試す「岩国検定」とやらを企画・実行した。岩国のもろもろを、ごく表面的にではあるが紹介する「いわくに通になろう」という冊子も出版し好評を博した。
その活動で培った博識ならぬ薄識を披露する絶好の機会が到来したとばかり、吉香公園へ向かった。まずはやや季節遅れとなった紅葉谷公園へ。いよいよ秘密の史跡へと向かう。「吉川家墓所」である。岩国の住民でも知らない人が多いが、一度は見ておく価値のある石造文化の史跡である。
「国の歴代藩主・吉川家の墓所で洞泉寺域内にある。6代経永を除く12代経幹までの当主及びその一族の墓51基があり、『山のお塔』と『寺谷のお塔』に分かれている。墓石の大半は五輪塔で石造文化財としての価値は高いく、山口県指定文化財となっている」(岩国検定)。
2人ともこんな史跡があるなんて全然知らなかった。岩国のことは大抵知っていると思っていたようであるが、「どっこいまだ知らない隠れた名所はまだまだありますよ」と、少し皮肉って答えておいた。岩国検定で学んだことが、初めて活きた観光案内であった。「今度は、一杯やりながらお話しましょう」といって、しばしの別れをした。「朋あり遠方より来る、観光案内また楽しからずや」。