写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

切り抜き

2006年09月30日 | 生活・ニュース
 購読している毎日新聞の「はがき随筆」という欄を、毎日欠かさずに切り抜き、優秀な作品を「岩国エッセイサロン」の月例会にコピーして持っていっている。

 購読していない新聞の読者投稿のエッセイを読むため、週に1度は図書館に行く。

 今日の午後、運動不足の解消を兼ねて、自転車に空気を足しゆるい登り坂をこいで、錦帯橋に近い小さな図書館に出かけた。

 各社の新聞が過去1か月分棚に重ねておいてある。半分くらい取り出して長椅子に置き、1部づつ広げて、目当てのエッセイを読んでいた。

 ある日のその欄を開いたときに、あってはならない姿になっていた。読みたい欄が、手で切り抜かれてなくなっている。

 「こんなことをする馬鹿なやつがいるんだな」と少し腹が立つ。その数日後の新聞を開いた時、私の顔が紅潮した。

 こんどは、同じ欄の1部分が、きれいにはさみで切り抜かれている。「う~ん」思わず声を出してうなってしまった。

 手でちぎることも、はさみで切り抜くことも、どちらもいけない。図書館でそこを読もうと思ってきた人がどう思うのか考えて欲しい。

 新聞くらいで、そんなに怒らなくても……とはいかない。手でちぎったほうは、その時の出来心かもしれないが、はさみで切り抜いた方は計画的だ。

 罪は1ランク重い。大げさに言えば、税金の一部をかすめ取った窃盗犯でもある。

 これは子供の仕業ではない。公徳心のない、大の大人のやったことに違いない。見つけたときには絶対に許さん! おじさんは、これを書きながらもまだ怒っている。
  (写真は、無残な形の「切り抜かれた新聞」)

緊急通報サービス

2006年09月29日 | 生活・ニュース
 2年前から高齢者に対するボランティアのお手伝いをしている。私が担当している地域150世帯のうち、高齢者のひとり住まいは20世帯もある。

 1年前のことであった。82歳のひとり暮らしのご婦人が、家の中で意識を失って倒れているのが2日目に発見された。

 遠くの身内も近所の人も、誰もが気がつかぬまま時間が過ぎていた。今もって、意識のないまま入院している。

 もう少し早く発見できていたら、あれでも後遺症なく元気になれていたかもしれない。

 そんな折、ボランティア仲間の研修会で、広島にある「緊急通報サービス」を提供している会社の見学に行った。

 高齢者の、いざという時の通報や、日ごろのいろいろな相談に対応するシステムを構築している。
 
 家にいて、胸にぶら下げたボタンを押せば緊急通報が出来、受け付けた係りの者が状況を判断して、必要とあれば、救急車の出動を依頼してくれるものである。

 緊急時だけでなく、保険師や看護師・栄養士・薬剤師などの専門スタッフが常に待機しており、いろいろな相談にも応じてくれる。

 気楽に早めの通報により、病状悪化や発作の予防効果もあるという。わずか500円/月の費用で、こんなサービスが受けられるということで、加入している人は多い。

 しかし、肝心の通報ボタンも押せない状態で意識を失ったときには、どうしたらよいのかを質問してみた。

 いいものがあった。「安否確認センサ」というものである。人の動きを感知する赤外線センサを居室に設置して、高齢者の在宅時の安否を確認してくれるものだという。

 これをつければ、万一、家の中で意識を失って倒れた場合、動きがなくなったことをこのセンサが検知し、異常を通報してくれるという優れものである。

 使用料は1000円/月くらい。両方合わせても1500円である。監視カメラでは窮屈だが、これならあっても悪くはない。

 しかし本当は、向こう3軒両隣でお互いがカバーし合うのが1番良いのだろうが、今の社会これは難しい。

 地域住民のひとりとして、これの復活策を考えている秋の夜長だ。温かみのないセンサに頼るのは、まことにセンなきことではある。
(写真は、カタログにあった「緊急通報システム」)

焼き栗2

2006年09月28日 | 季節・自然・植物
 夕方チャイムが鳴った。玄関でしばらく話し声がしたあと、妻がつやつやした栗を両手に乗せて台所に戻ってきた。

 今日とったばかりの栗をもらったという。表面にはまだ湿気を感じる初々しさが残っている。「今夜皮をむいて、明日、栗ごはんにしましょう」と、栗好きの妻がいう。

 栗といえば、先日エッセイ仲間が新聞に投稿した面白いエッセイを思い出した。幼い頃、山で拾った栗を、夕方囲炉裏にくべて焼いていた時のことを書いていた。

 仕事から帰ってきた父親が、囲炉裏の前に座り、キセルでたばこに火をつけようと屈みこんだ時、火中の栗が爆発し、部屋中が灰神楽になり怒られたという。

 懐かしくも、今なら笑える思い出話であった。作年の秋のことである。私は裏庭で落ち葉に少し炭を入れて焚いた。

 火がおきた頃、ダッチオーブンを持ち出した。その中に小さな石ころを敷いた上に十数個の栗を乗せ、初めての焼き栗作りを試みた。

 ハートリーを遊ばせながら、そばに置いたガーデンチェアーに座っていた。オーブンの隙間から、栗の焼けたいい匂いがし始める。

 焼きあがるのは時間の問題だと思っていたその時、「バーン、バン、バン」と激しい音がした。恐る恐るオーブンの蓋をそっと開けてみた。

 なな何と、期待の焼き栗は、原形をとどめることなくはじけ飛び、破裂した皮と実の小片が、あたかもゴミ箱の中のように散らかっている。

 冷静に考えて見れば当たり前のことであった。密閉にされたものに熱を加えていけば、内部の圧力は上がり、最後には爆発をしてしまう。

 栗にはひとつひとつ安全弁などは付いてはいない。「これは仕舞ったしくじった」の一休さんであった。

 このことを、笑い話として知人に話すと、誰もがそんなことはとっくに承知の助で、焼き栗をするときにはあらかじめ、栗の皮に小さな穴を開けておくのが常識だという。

 そんなことに疎い私は大いに勉強になったが、まぁ、今年はそんなドジを踏まないよう、栗を焼くときには、千枚通しか何かで、皮をちゃんとクリ抜いて置くつもりだ。味覚の秋のクリごとである。
   (写真は、頂いた秋の初もの「栗栗栗」)

ドラフト会議

2006年09月27日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び
 高校生を対象としたプロ野球の新人選手選択(ドラフト)会議が、今年も開かれた。

 この夏甲子園を沸かした有望選手が、複数球団から競合指名され、くじ引き抽選の結果、各選手の交渉球団が決まった。

 最も注目されていた駒大苫小牧の田中投手は、楽天が交渉権を獲得したが、満面笑みの野村監督に対して、彼は微妙な笑みをしたと報じられていた。

 毎年、高校生のドラフト制度に対しては、職業選択でいう自由がないとか、好きな球団に行けなくてかわいそうだとかの声が上がる。

 しかし、今朝の新聞のスポーツ記事を見て、安心をした。「駒苫・田中 決意きっぱり」と見出しに大きく書いてある。

 「楽天で、いろんな歴史を刻んで行きたい」と、前向きな言葉が書いてある。他人事ながらもいいことだと思う。

 これに対してサラリーマンは、入れてもらえるかどうかは別として、入りたい会社を好きに選ぶことが出来る。

 しかし、入社したからといっても、勤務場所・部署・職種などは、会社が勝手に決めるため、自分の意に反するようなことは良くある。

 また、事業部制などを敷いている会社であれば、同期入社のものでも、部署の業績により給料・ボーナスは当然異なる。

 プロ野球も、12球団全体がひとつの会社だと思えば、サラリーマンと同じことだと言えなくもない。

 楽天だから、巨人だからなどと言わず、田中選手のようにきっぱりとした決意で気持ちよく指名に応じる姿勢は、若者らしく清々しくて好感が持てる。

 広島カープの黒田投手のように、球界トップクラスの投手になって、然るべき時には、かつて自分が行きたかった球団に行ってみるもよし、留まるもよしである。

 その昔、どこかで見たことのある、野球浪人とか、エガワルなどせず、指名を受けた選手は田中投手のように、潔くすることがプロ野球の真の発展に貢献できることだと思う。

 がんばれ若き高校野球選手。野球人生は、入団する球団の名前ではなく、自分自身の実力で切り拓いていって欲しい。ファンはその過程を見たいのだ。
(写真は、毎日新聞記事より「喜びの駒苫・田中投手」)

EU

2006年09月26日 | 旅・スポット・行事
 ドイツ・スイス・フランスを旅して、ヨーロッパはすごい所だなと思うことがある。大げさな言い方をすれば、目に見える国境は、地図の上にしかないということだ。

 学校で習ったころのヨーロッパは、数カ国を除けば小さな国の集まりで、どこがどこの国か分からないような地域だった。

 それらの国は、地図の上では基本的には大きくは変わっていないが、国の運営面では大きく変化していることを肌で感じた。

 大きな要因はEU(European Union 欧州連合)である。EUとは、「様々なチャレンジに共同で対処しようという欧州の政府のグループ」である。

 EUは、単一市場・単一通貨、共通した外交防衛政策、国内問題における協力という3つの柱に支えられた共同体だ。

 難しい話はそこまでとするが、旅行者にとってEUを直接肌で感じることは、何といっても通貨がユーロで統一されていることだろう。

 このたびは訪れたスイスは孤高を保ち、まだEUに加盟していないのでスイスフランであったが、その他の国はユーロで通用する。

 単一市場で、流通もスムーズに行くに違いない。スムーズといえば、車での移動だ。国境を越えるにしても検問所がない。

 どこに行ってもフリーパスだ。スイスに入るときだけ簡単なパスポートチェックがあったが、出るときはフリーである。

 アウトバーンで、追い越していく車のナンバープレートを眺めてみた。まるで国際展覧会のように、いろいろな国の車が走っている。

 ナンバーの前に、国別のアルファベットが書いてある。Dはドイツ、Aはオーストリア、Fはフランス、Iはイタリアという具合だ。

 しかし、ひとつだけアルファベットでない国を見つけた。白抜きで「+」と書いてある。スイスだけは国旗で表示されている。

 キャンピングカーもたくさん走っていた。ヨーロッパは、アウトバーンを2時間も走ればすぐに国外に脱出できる。

 日常の生活では、国内外の意識は余りないのかもしれない。言語も、数ヶ国語を話せる人も多いと聞く。

 日本のような島国と違って、EU各国は通貨のみならず他のものでも国際交流は盛んであるに違いない。切磋琢磨・競争意識の向上など、いい効果もありそうだ。

 私も、井の中の蛙よろしく「イイユウだな」などと、ぬるま湯につかっているのではなく、島国の端っこに居てもなお、いつも広い外界に目を向けていたいと思う。
 (写真は、アウトバーンを走る「スイスナンバーの車」)