写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

水西書院の桜

2007年03月31日 | 旅・スポット・行事
 川西に「水西書院」 (すいせいしょいん) という建物があることは知っていたが、どこにあるのかも知らず、今まで行ったこともなかった。

 宇野千代の小説に「水西書院の娘」というのがあり、由緒ある建物だとは思っていた。

 ある人から、ここの庭にある桜も見事だと聞いたことがあった。我が家から5km、天気もよし。自転車に乗って出かけてみることにした。

 その前に、ネットで予備知識を仕入れてみた。「1886年 (明治19年) に建造され、旧藩主吉川家の居宅として使用された。その後は吉川家の別邸となっていたが、現在建物は岩国市の所有となっており、利用がある時のみ開放される。2000年 には岩国市の登録有形文化財となっている」という。

 臥竜橋を渡ると直ぐ左に折れ、錦川の土手に植えてある桜並木を見ながら500m下る。土手の桜はまだ2分咲きか。

 岩徳線のガードをくぐると、目の前に長い石垣を構えた真っ白い塀が見える。ここが「水西書院」であることは、誰が説明してくれなくともそれと分かる。

 宇野千代は「水西書院の娘」の中で「町の中央を流れている大きな川の西側の淵にある、町で一番眺望の好いところ、と言われる箇所に建てられた」と書いている。

 なるほど、正面は北側を向いていて、2階からは錦川や城山を望み、錦帯橋まで見渡すことができるだろう。

 敷地に入ることは出来ないが、広い庭に1本の大きな桜の木があり、今は7分くらいの咲きぶりであった。

 訪れる人は誰もいない。その静かさが又いい。塀の周りを行き来していると、直ぐ傍を錦川清流線のディーゼルカーが1両、ガタゴトと気だるそうな音を出して走っていった。

 錦帯橋界隈とは趣を変え、人知れず塀の中でひっそり静かに咲く桜も一興である。どこの世界にも1匹狼のようなやつがいる。

 道すがらの土手の桜といい、水西書院の桜といい、城山の遠景といい、私お奨めのスポットが、彗星のごとく又1つ増えた。
  (写真は、満開間近の「水西書院の桜」) 

岩国山3

2007年03月30日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び
 4月の初旬、海外旅行に出かけるという先輩夫婦に誘われて、山登りをすることになった。

 歩く距離が長い旅なので、足腰を鍛えておくため山へ登りたいという。私も、最近少しなまった身体に活を入れるいいチャンスだ。

 岩国市の中心街への展望の良い岩国山(277m)に登る約束をした。前夜の天気予報では曇りだといっていたが、出発時間の朝10時、ぱらぱらと小雨がぱらついた。

 直ぐに止み、西の空が明るくなってきた。天気は何とかもちそうである。むすびをリュックに入れ、相棒のハートリーを連れて5人で出かけた。

 一の滝側から登っていった。道すがら、小ぶりの山ツツジが愛らしい姿を見せてくれる。椿はもう終わっているが、地上に落ちた花はまだ赤い。

 周りの緑の斜面には、そこかしこ早咲きの山桜が自己主張している。普段は気がつかないが、この時期だけ「ここにいますよ」と言っているようだ。

 無理をせず、4回水補給の休憩をしながら1時間20分かけて頂上に着いた。頂上といっても、よく見ないとわからないほどの小さな「+」印の三角点があるだけだ。

 展望はいい。初めて登った先輩も、やや霞んではいるが遥か瀬戸の島々まで見える景色に大満足の様子。

 過剰な愛のため、焦げるまで焼いてくれた塩しゃけと、海苔を巻いたむすびが殊のほか旨い。ハートリーと分け合って食べた。

 ふと振り返って見ると、城山の頂にある岩国城がやや下に見えた。いつもは仰ぎ見ているものを眼下に見ると、違うものを見ているように見える。

 一休みをし元気を取り戻したあと、尾根を縦走して下っていった。急な登りに比べると、長くなだらかな下り道である。

 左手には岩国の市街、右手には錦川・岩国城・錦帯橋が見え隠れする。1時間弱で椎尾神社の境内に出たところで、全工程を終える。

 この縦走コース、知る人ぞ知るのコースであるが、景色よし・適度な運動量・近場で交通の便よしということで、熟年者にお奨めのコースです。是非挑戦を!
  (写真は、臥竜橋から見た「錦帯橋と岩国山」)

自明の理

2007年03月29日 | 生活・ニュース
 「やっぱりそうだろう。おかしいと思ったよ」。今朝の日経新聞のコラム「春秋」を読みながら、納得をした。

 日曜日(25日)の朝、あるテレビ番組を見ていたら、能登半島の地震を知らせる臨時ニュースが流れた。

 「津波注意報が石川県の能登・加賀地方のみならず、福島県と茨城県にも出された」というものであった。

 津波は、ある海底で起きた地殻の変動によって引き起こされた海面の変動が、海岸に伝播するものと理解していたが、この度のものは日本列島という陸地を越えて太平洋側にまでもその影響が起きるというものであった。

 おかしいと思い、私は妻に「津波が起きる原理を知っている?」と訊いてみた。ニュースの理不尽さを、確認してみたかったからである。

 そのまま気にも留めずにいたが、今朝の日経新聞を読むと、「緊急時の混乱だとは思うが、4回、5回と繰り返された。津波は……能登から福島、茨城にひとっ飛びするわけはない。自明の誤りをチェックできない放送現場の『非科学性』が気になる」と書いている。

 人は、権威あるものや新聞・テレビなどの機関から言われると、往々にして「ああ、そうなのか」と直ぐに納得してしまうところがある。

 しかし、人文科学であればいざ知らず、身近な自然科学のことであれば、自明の誤りくらいは、現場ででもチェックできなければ恥ずかしいという。

 これでは夕方の天気予報の時に、原稿に「今日も太陽は静かに東の山の端に沈んでいきました」と誤記されていても、この通りに読むのかもしれない。

 調査によれば、日本の大人の科学知識は先進国中、下から3番目だという。影響力の大きな報道機関従事者には、もっと科学知識の向上を期待したい。

 福島県と茨城県で、この臨時ニュースを聞いて避難した人は、多分誰もいなかっただろう。避難するよりも、きっと非難したに違いない。
(写真は、春休みに入り賑わい始めた「錦帯橋」)

薄墨桜3

2007年03月28日 | 旅・スポット・行事
 錦帯橋の開花宣言が出された翌日(26日)、早いとは承知の上でスーパーで買った弁当を持って「花見」ならぬ「つぼみ見」に出かけてみた。

 天気の良い日は家の中で食べるよりは、外で食べるほうがおいしいに決まっている。しかし案の定、上川原のどの木を見ても花は咲いていない。

 それでも、10組くらいの家族が、弁当をひろげている。私と同じく気の早い人がいた。帰り道、少し遠回りをしてみた。お目当ては宇野千代の生家に植えてある薄墨桜である。

 例年、今から咲くソメイヨシノよりも2週間ばかり早く咲き始めると聞いている。今まで咲いたところを私はまだ見たことがない。平日の昼間、行ってみると旅人らしい3人のご婦人が桜を仰ぎ見ていた。今が満開であった。

 「岩国観光.com」には、小説「薄墨の桜」のモデルになった、岐阜県根尾村(現、本巣市)の樹齢1500年の老樹「薄墨桜」に由来する「薄墨桜」3本が植えてあり春を彩ります、と書いてある。

 つぼみのときは薄いピンク、満開に至っては白色、散りぎわには特異の淡い墨色を帯びてくるという。

 まさに満開で、まだひとひらも散ってはいない。色は白色。背の高い桜木であった。枝は木造の塀から大きく外に広がっている。見事な桜である。

 この春は、散りぎわにもう1度訪れて、その名の通りの薄墨色の桜をぜひ愛でてみたいと思っている。人目につかない街道にひっそりと咲いているが、スミに置けない薄墨桜ではある。
   (写真は、宇野千代生家の今が満開の「薄墨桜」)

大きな節約

2007年03月27日 | 生活・ニュース
 「岩国エッセイサロン」の月例会の資料は私が作ることになっている。会員数は徐々に増え、現在は16人となった。

 A4やB5サイズの用紙で7~8枚の原稿をパソコンで作り、プリンターで1部印刷した後、2階に置いてある頂き物の業務用のコピー機で15部印刷をしている。

 作った資料をコピーするためにコピー機のスイッチを押した。3枚目の紙が出始めた時、ガリガリッと大きな音がして機械は止まってしまった。

 カバーを開けてみると、紙の排出口に、プラスチックの歯車の破片が散らばっている。

 排出ローラーを駆動させる歯車が破損していた。メーカーに電話相談するが、とっくに生産中止となった旧型のため部品はもう置いていないという。

 万事休した。小さな歯車が壊れただけで、この瞬間、コピー機は粗大ごみになった。

 これに代わるコピー機は、コンビニにある。原紙を持ってコンビニに向かおうとした時、妻が知恵を授けてくれた。

 「A4でもA3でも、紙の大きさに関係なく1枚10円だから、A4をコピーをする時は、A3の紙に2枚コピーしたら安くできるわよ」という。

 その通りである。A3でコピーしたあと、押切で半分にカットするひと手間はかかるものの、半額でコピーすることが出来る。

 会員から徴収した貴重な会費の節約に、大きく貢献できることになる。いいことを教えてくれた。さすが長年の我が家の大蔵大臣だ。

 コンビニの入り口近くの、狭い一角に置いてあるコピー機に向かい、私は忠実にA4の紙を2枚づつ丁寧に並べながら、無事コピーを終えた。

 合計60枚、600円。ちょっとした工夫で600円も節約できた。会を代表して妻にお礼を述べると、「そんなことは、お父さん以外の人なら誰でも知っていますよ」との優しいお言葉。

 コピー機のことで、日頃の悪態の仕返しをコッピーどくやられた。
  (写真は、酷使で壊れてしまった「コピー機の歯車」)