昼過ぎ、サンデッキで新聞を読んでいた。「お父さ~ん、お客さんよ~」。玄関の外から奥さんの大きな声が聞こえた。誰だろう、外に出て見ると裏の団地に住む顔なじみのOさんであった。「どうしました?」「いやいや、私の里から面白いものを持って帰ったのですが、ちょっと大きすぎて使えないので、お宅ではどうかと思って」という。
話を聞いてみた。「錦町に兄が住んでいる。溶接機を使って鉄棒製の大きなバラのアーチを作ってはみたが、バラ作りは難しい。いるなら持って帰れといわれた。幅は2.3m、奥行き0.5m、高さが2.1mもあるため、2つに分断して軽トラで持ち帰った。庭に置いてみたが、いかにも大きすぎる。使わないので、欲しければ上げますよ」という。
Oさんの後に付いて、奥さんと現物を見に行った。家の前の道路に置いてある。「うおっ、おおきいな~」、第1印象であった。「でも、これくらいあった方が、つるバラを巻きつけるにはいいと思うけど」と奥さんはまんざらでもなさそうな顔をしている。「じゃあ、もらおうか」。我が家に引き取ることが決まった。
1時間後、溶接して一体となったアーチが、軽トラに乗せられてやってきた。重さは2人で抱えられるくらいだ。バラ園の前に置いてみると、そんなに大きくは見えないが、やっぱり大きいか? 庭の真ん中に仮置きし、まずは塗装である。赤い錆止め塗装を開始。奥さんにも刷毛を持たせて下の方を、、私が脚立に乗って高いところを塗っていく。刷毛で丸棒を塗っていくのは結構厄介なことが分かった。
1時間後、きれいに塗りあがった。離れた所から椅子に座って眺めてみた。思っていた以上に立派なアーチになっている。明日は上塗りをするが、さて何色がいいのか。グリーン、白、黒、赤、青? 色を決めるのは奥さんの権限。私は下請けでただ塗るだけ。小さな家と菜園があるだけなのに、毎日他力的に、何やかや仕事が舞い込んでくるこの季節ではある。バラ園も華やかなピークが過ぎた。今日は空もどんよりとしていて、やがてやって来る梅雨を思わせるような朝だ。