久しぶりに朝から雨がしとしとと降り続けていた。2カ月前、思いがけず身体に異常が見つかり、春爛漫の桜の季節というのに、その対応で悶々とした日々を過ごした。
色々なことがあったが無事に処置が終わり、ここ2週間は居間の安楽椅子に座り、今を盛りに咲き誇っている庭の紅白2本のハナミズキを眺めている。雨に打たれて、しっとりとしている花びらを見るのも風情がある。
そんなハナミズキを眺めているとき、ふと昔歌っていた歌が口を突いて出てきた。
♪ およばぬことと諦めました だけど恋しいあの人よ
儘になるなら 今一度 一目だけでも逢いたいの ♪
私と同じ年であった井上ひろしが1960年にリバイバル曲として出した「雨に咲く花」である。甘いマスクと歌声で100万枚を売り上げた大ヒット曲である。水原弘、守屋浩とともに「ロカビリー3人ひろし」と言われていたが、1985年心筋梗塞のため44歳で逝去した。まさに雨に打たれて散る花のように、あっけない歌手生涯であった。
そんなこんなで、今年は桜の季節を心から堪能することはできなかったが、それを補ってくれるかのように、樹齢30年の我が家のハナミズキが「見て見て」と言っているかのように雨の中で咲いている。
平成も最後を迎える頃になって、私もやっと花を愛でる余裕が出てきたことがうれしい。そういえば今日から10連休。「そんなに休んでもいいのかな」と思うのは昭和の時代を生きてきた年配者だからか。この連休を使って、遠くから初節句の孫を連れて息子家族が帰って来る。
私もぼんやりとハナミズキを見ているだけではいけない。納戸から兜飾りを取り出して、和室に飾って待っていてやろう。