写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

スモーカー

2016年02月26日 | 岩国時遊塾

 スモーカー(smoker)といえば、まずは喫煙家のことを思い浮かべるが、今日は燻製窯という意味で使っていく。退職したころ、暇をつぶすために木工など色々なことをやっていた。その内のひとつが燻製作りであった。1斗缶くらいの大きさの市販のスモーカーを買って何度かやってみた。本格的というほどにはやってみなかったが、それなりの燻製が出来たように覚えている。

 あれから15年が経った。先日、時遊塾の会員から、「燻製をやってみたい」という意見が出た。春、暖かくなったら庭でやってみたいと私も思い始めている。そのためには数人が楽しめるやや大きめのスモーカーが必要だ。書棚にあるアウトドアの本を参考にして、スモーカーを作ってみることにした。

 必要なものは、スモーカーの本体となるダンボール箱である。ちょうど花を贈ってもらった時の背の高いものが納戸に置いてあった。大きさは30㎝四角、高さが60cmくらいのもので、思っている通りの大きさである。あとは、これに入る大きさの金網、スモークウッドを燻らせるための受け皿、食材を吊るすための金棒である。

 カッターナイフでまずは下部に空気取り入れ口を作る。空気量を調節できるようにスライドするシャッターも取り付けた。中段には金網を乗せられるように支持棒を2本差し込む。上方には、食材を吊るせるように棒を3本渡す。側面の上下2カ所にはスモークウッドや食材を仕込んだり取り出したりできるような開閉できるドアも付けた。

 普通のものよりは少し厚手の段ボール箱で作ってみたが、所詮は段ボールである。棒の差し込み個所や、ドアのカギの取り付け個所には裏側から補強の板を当てておいた。最上部には、温度計も取り付けた。これで立派なスモーカーの完成である。納得の自信作に仕上がった。

 完成品を見ながら、インターネットに向かって、ブナとリンゴのスモークウッドを注文しておいた。これが届いたら、天気のいい日に試運転をし、味を確認してみたいが、食材はさて何にしようか。茹で卵、かまぼこにチーズ、小魚の干物やイカにソーセージ、塩シャケにちくわなどなど。簡単な前処理もいるようだが、小さな楽しみがまた一つ増えた。


新婚さんいらっしゃ~い

2016年02月23日 | 生活・ニュース

 プロ野球のない季節、テレビでは毎日、ただ騒々しいだけの番組が幅を利かせている。そんな中、日曜日だけは、私の好きな番組がお昼と夕方で3本ある。昼食後に見る「新婚さんいらっしゃ~い」「アタック25」と、夕食前の「笑点」である。いずれの番組も、何十年にもわたって放映されている人気番組である。

 そのひとつ「新婚さんいらっしゃ~い」で、当初から軽妙な司会を務めている桂三枝、いや今は違う桂文枝が不倫をしていたという証拠写真が出回り、本人がカメラの前で謝罪する映像が流されている。何十年前からの話のようであるが、細かなことは良く分らない。

 不倫が、道徳的に良くないことは百も承知であるが、一芸能人が家族以外の他の誰にも大きな迷惑を与えていないこんなことに関して、周りがとやかく言ったり、いちいちテレビカメラの前で神妙な顔をして謝罪する必要はない。週刊誌的な野次馬根性からつい見てしまうが、先日辞職した某国会議員のように、歳費を使っての不倫ではなく、私費を使ってのことであるから勝手にどうぞでよいと思う。

 こんなことは、ある超大物芸能人のように堂々とオープンにしてやれば、週刊誌やテレビ側もそれ以上問い詰めることも関心も持たない。文枝も「それがどうかしました?」とか言って、あまり神妙な顔をしない方が昔ながらの芸能人らしくて良いように思うがどうだろう。

 しかし、ここでひとつ問題がある。文枝と言えば「新婚さんいらっしゃ~い」にとっては、なくてはならない人材である。そんなタレントが不倫しているのでは「新婚さん」という、永遠の愛を契ったばかりの新鮮なカップルを前にした司会者というのは如何にも不釣り合いだというしかない。

 であるなら、番組のタイトルを変えることを検討するしかなさそうだ。「不倫さんいらっしゃ~い」というタイトルであれば文枝でもいいが、果たして視聴率をあげることが出来るか。73歳にもなってもこんなありさま、文枝さんも不倫ではなく不憫なことである。


奇特な人

2016年02月21日 | 四境の役

 土曜日の朝10時、知らない人から電話がかかってきた。「そちらで四境の役の電子冊子を出版されたとのことですが……」と言って、メールで送って欲しいという。何故こんなものが欲しいのかを訪ねてみると、今年は四境の役の150年目に当たり、個人的にそれに係るビデオを作っているところだという。

 歴史に関しては素人なので、いろいろな資料を集めているところであった。そのビデオを作ってどうしようとしているのかを聞くと、その先のことは考えていないという。ここまで聞いた時、「それならお話したいことがありますので、今日の午後にでも我が家に来ていただけませんか」というと二つ返事で応えてくれる。

 目下、時遊塾で一般市民に対して「自分史の作り方」という講座を開く準備をしているが、第2弾として「四境の役の史跡案内」とでも題して、四境の役の概要と岩国近辺の史跡を写真で紹介する講座でも開きたいなと思っていたところである。ビデオなんぞができれば、単に文字と写真で見せるだけのプレゼンテーションではなく、動画などで伝えることが出来るのでより訴えることが出来る。

 その辺りの構想を話してみたいと思い、期待して待っていた。市内に住む64歳の男性がやってきた。定年後の趣味として、パソコンを駆使して「四境の役」という、まるで映画を見るような音響入りのビデオを作っている段階であった。製作途中のものを見せてもらった。バックで流れる音楽も自作だという。楽器も弾ける人でもあった。

 こんなビデオが完成すれば、私が四苦八苦して作っているプレゼンテーションなどは太刀打ちできない代物である。「応援しますから、ぜひ完成させて下さい」とエールを送ったが、「私は文章がうまく書けないから…」とそちらの方の腰が少し引けている。「四境の役」の電子版を渡したあと、家まで送っていった。

 家の中はまるで映画館のような大きなスクリーンとプロジェクター、シンセサイザーにドラムとギター、それに模型の汽車が走る大きなジオラマが2部屋にわたって置いてある。お互いがお互いの力になれそうな気がしている。それにしても多趣味な奇特な人と出会うことが出来た。


「私小説」製本

2016年02月16日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画

 17年前、社員が85名がいる子会社を整理解散する仕事をした。1990年にバブルがはじけ、そのとき百数十社あった子会社の内、時代遅れとなっている数社を整理する方針が出され、その最初に指名された会社であった。

 本体の会社から5名の社員が出向し、1年半をかけて会社を整理解散させた。その間、事業の譲渡先の決定、取引会社へ了解どり、下請会社への説明、借地の返還、社宅を賃貸していた住居者への退去願い、工場設備の売却、従業員の再雇用先の斡旋、退職金の割り増し折衝など、多くの初めてのことを体験した。

 この間、関係者に対して色々な説明文や契約書、合意書や依頼書を書いてきた。経験のないことを、ない知恵を絞り、それらを文章にしたものがフロッピーディスクの中に入っている。もう済んだことだからといって、簡単に廃棄する気にはならないまま、机の引き出しに収めていた。ことの顛末を、第3者が読んでも何か参考になるのではないかと思い、10年前、小説風にまとめていた。

 内容は、自慢話でも、いじめの話でもなく、純粋に整理される社員や、突然取引がなくなる会社の負担を少しでも軽減してあげたい一心の気持ちで会社整理解散に取り組んだ物語である。久しぶりにそれに手を加えて、製本機を使ってB6版で163ページの本にしてみた。文章は拙いものの、5人が奮闘した姿はしっかりと読みとれるものになっていると思うが、果たして、こんな本、私以外誰かが読んでくれるものでもない。

 過酷ではあったが、完璧に成し遂げた仕事に対して、私自身が褒めてやらなければ、誰も褒めてくれない仕事の奮闘記が、今はただ懐かしく遠い思い出となって私の掌の上に載っている。


トランスフォーマー ベンチ

2016年02月15日 | 木工・細工・DIY

 時遊塾の塾生のひとりが、木製のちょっと無骨な形をしたガーデンベンチの写真を持ってきた。「今度、工房木馬でこれを作ってみませんか」という。聞いてみると、このベンチは「トランスフォーマーベンチ」というものだという。

 一見すると単なる3人掛けのベンチに見えるが、座面の端っこをもって水平方向に引っ張ると、3人ずつが向き合ったベンチ付きのテーブルに変身するというすぐれものである。まさに名前通り一瞬の内に変身する「トランスフォーマー」そのものである。

 テレビやインターネットでこの写真や、変身する過程の動画を見ることが出来ると聞いた。その夜、インターネットで調べてみると、写真や動画を見ることは出来たが、設計図はどこを探しても出てこない。どうやら、このメーカーが設計図はオープンにしていないようである。

 それならば設計してみようと思い、方眼紙を取り出して書いてみた。材料としては、ホームセンターで売られている(1*4)の板材を念頭に置いて設計した。考え考えしながら2時間かけて、なんとか図面は引いてみたが、回転する箇所が2カ所あるので、今一つ細かな部分が正確に描けない。

 「そうだ、小さな模型を作って検証してみよう」。厚さが2mmのスチレンボードを使って10分の1スケールのものを作ってみると、思いがけない個所に不都合があることが分かり、図面の修正をした。再度模型を作ってみると、今度は思った通りに各部が動いて、ベンチは見事な変身を遂げてテーブルが出現する。

 「よし、これでいける!!」。材料費は(1*4)*6フィートのSPF材が17本で約7千円。ネジ釘にボルトナット4組で千円。合計8千円くらいで作ることが出来そうだ。メーカーでキットを買えば2万4千円と書いてあるので、DIYでやれば3分の1くらいの費用で作ることが出来る。

 それにしても、この「トランスフォーマーベンチ」、よく考えられたベンチだ。ベンチと名付けていながら、あっという間に、手品のようにテーブルが飛び出してくるのだから。「工房木馬」で、早速これを受注生産していきたいが、やっぱり「新案特許」なんぞがあって商売には出来ないでしょうね。残念!!