写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

白羽の矢

2020年08月31日 | 生活・ニュース

 28日に安倍首相は、体長不良のため突然辞任を表明した。その後継を決める党総裁選に、菅官房長官が立候補する意向を固めたと、今朝(31日)の毎日新聞の1面トップで報じられている。インターネットの時事通信社の記事にも、これに関連したものが出ているのを読んでみた。

 「主流派、菅氏に白羽の矢 派閥主導で石破氏封じ」という見出しで、菅官房長官が出馬を固めるに至った経緯が書かれている。いつの時代も、相も変らぬ内輪の論理で繰り返される総裁選びであるが、見出しにある「白羽の矢」という言葉が気になって、改めて調べてみた。

 「白羽の矢」とは、文字の通り「白い羽がついた矢」を意味する言葉である。ヤマタノオロチの伝説などにおける「人身御供」が語源である。神様の怒りを沈めるために、川や池に人を沈めて捧げる人身御供の儀式で、白い羽の矢を生贄にする家の屋根に立てたことが由来となっている、と書いてある。

 「白羽の矢が立つ」として使うことが多い言葉で、本来は「大勢の中から犠牲や生贄として選ばれる」というネガティブなニュアンスの言葉であるが、現代においては、「特別に選び出される」「代表候補に選ばれる」というポジティブな言葉として使われる場合もある。

 現在では「白羽の矢」を良い意味として使うことは間違いとは言い切れないが、相手を不快な気持ちにさせないためにも、「白羽の矢」を別の言い換え表現を使って意図がより正しく伝わる表現をするよう心がけるのがよいという。

 今回の時事通信社の記者が書いた「菅氏に白羽の矢」の真意は、果たしてどちらの意味合いが正解か。新型コロナの収束は見えず、中途半端なアベノミクスで経済は落ち込んだままでの「ポスト安倍」は厳しい船出を迫られている。

 そんな中「ポスト安倍」は「貧乏くじを引くようなもの」とまでささやかれている。とすれば、時事通信が書いた「白羽の矢」とは、厳しい今の日本の「犠牲者」を選ぶというネガティブな意味で使ったのかもしれないと深読みしてみた。


残暑に思う

2020年08月27日 | 季節・自然・植物

 昨日、庭に植えているナツツバキ、ヤマボウシ、ヒメシャラを見上げると、葉の水分が失われて、張りのない縮んだ状態になっている。こんな様子を見るのは初めてである。

 そういえば、8月に入ってからというもの、雨らしい雨が降った記憶はない。慌てて散水ホースを伸ばして木の根元に水をかけてやった。どれほどの水をやれば生気を取り戻すのか見当はつかないが、たっぷりと撒いておいた。

 ふと裏の山を見ると、相変わらず木々は青い葉を茂らせ、元気そうに風にそよいでいる。山だって、雨は降ってはいないのに、枯れるような気配は見えない。庭の植木だって放っておいてもいいのかなと思いながら家に入った。

 今日も、相変わらず朝から暑い。1歩も出歩かない日が続いているが、これではいけない。意を決して久しぶりに錦帯橋へ出かけてみた。目的は、橋の真下の日陰に座って、川の流れに足を浸して足湯ならぬ足水をして涼をとるためである。

 上河原の駐車場に車を止めた。橋に向かう途中の芝生は、だらしなく伸びたまま枯れて茶色になっている。一方、岸の草は手入れされることなく伸び放題で、およそ観光地の体をなしていない。観光客も誰一人歩いていない。

 橋脚の敷石に座って、ひざから下を川水に浸してみると、何とぬるま湯のようである。しばらく浸していたが、足からの涼は得られず、日陰にいても熱気で暑い。「これじゃあ、暑いだけだ」と言いながら、そそくさと車に乗って家に帰る。

 エアコンのスイッチを入れると、気持ち良い冷たい風が吹いてきた。思わず「やっぱり家の中が一番だな」と言ったものの、電気の力に頼ることは、増加するCO2により地球温暖化に与していると思うと、複雑な気持ちになった。一人一人が、今この刹那を大事に生きているだけで、先のことはケセラセラでいいのか。悩みは深い。


 

  


同音異義語

2020年08月26日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画

 「同音異義語」とは、発音が同じで意味の異なる語のことをいう。パソコンで、キーを叩いてブログなどを書いていると、手書きで文字を書いている場合とは違って、意識せずに同音異義語を打ち込んで見過ごしたまま公開していることが間々ある。

 最近では、「四球」を「死球」、「初めて」を「始めて」、「最近」を「細菌」などと打っていた。公開する前に、書き終わった文章を読み返した時に、はっきりと意味が間違っている同音異義語はすぐに気がついて直すことが出来るが、気がつきにくい同音異義語が日本語にはたくさんある。

 例えば「答える」と「応える」、「回答する」と「解答する」、「関心する」と「感心する」、「機械」と「器械」、「電気」と「電器」、「時期」と「時機」、「制作」と「製作」、「終了」と「修了」、「特徴」と「特長」などがその例である。

 ここで問題。「コロナ禍も第2波の真っただ中で、今もって『しゅうそく』の兆しが見えない」。この文章で「しゅうそく」にどんな漢字を当てはめればよいか。「終束」か、はたまた「終息」なのか。

 辞書で調べてみると「収束」とは「物事が収まる、落ち着くこと」で「デモの混乱が収束する」などと使う。「終息」とは「ものごとが終わること」で、「一党独裁が終息する」などと用いる。

 「コロナ禍は、もうしばらくすれば収束し、ワクチンが開発されればやがて終息を迎えるであろう」などと書けば正しい使い方である。従って、上記問題は、どちらを書いても正解と言える。

 このように日本語には同音異義語が多くあり、わずらわしさもあるが、このおかげで落語やダジャレや、謎かけなど、言葉で遊ぶ文化が発展したのだろう。ここで謎かけを一つ紹介します。「ブログとかけて戦地の兵隊と解きます。どちらも日々、こうしん(更新・行進)しています」。




TPO

2020年08月25日 | 生活・ニュース

 TPOとは、time(時)・place(場所)・occasion(場合)の頭文字をとって作られた和製英語である。「時と場所によって服装や言葉を使い分ける」という意味で、1964年に東京オリンピックが開催されるのを機に使われるようになった。 

 テレビのワイドショーなどで、ときどき気になる会話を聞くことがある。社会的にしかるべき立場にあるようなゲストを呼んでメインキャスター(MC)が色々と話を聞きだすような場面がある。

 問題はMCがゲストと学生時代の同級生であったり、個人的に親しい間柄の場合、会話の口調が「これはどうなん?」とか「そういうことなの?」というようなタメ口となる時がある。ゲストへの呼びかけも「○○君」とか「おい○○、それは違うんじゃあないの」など名前も呼び捨てとなることもある。

 全国放送であるにもかかわらず、まるで仲間内で一杯やりながらの会話を聞かされているようで不快な感じがする。

 視聴者を前にすれば、MCたる者、いくらゲストと個人的に親しかろうとも、視聴者を代表して質問したり語りかける立場である。それであれば、公式の場としての言葉遣いをしなければ、ごく私的な内輪話を聞かされているような気持になる。

 こんなことは、会社の中でも同じこと。会議や公式な場では、いくら親しい同僚と言えども相手の立場に相応した呼び方や、ため口でない丁寧な言葉遣いでやり取りしなければいけない。

 お笑い番組の中で、芸人同士が「おまえ」「きさま」「おれ」などとふざけあう話とはわけが違う。ところが最近、タメ口が芸風の若いお笑い芸人が出てきている。いくら芸だといっても、目上の人や大御所に対してため口をきくようでは、見ている子供のためにもよくないばかりか、社会人として一人前だとはとても言えない。


「カープ 3タテ」?

2020年08月24日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び

 目下、セ・リーグの最下位を、首位の巨人からなんと10ゲーム差で独走していた広島カープが、本当に久しぶりに溜飲が下がるような試合をしてくれた。
 
 21日からマツダ ズームズームスタジアムで行われた対巨人の3連戦である。初戦はエースの大瀬良が、第2戦はドラフト1位の森下が好投して大差で勝った。さて、3連勝が期待される第3戦である。

 若手の遠藤が先発し、1点は取られたが、誠也がホームランを放ち、1対1のまま7回まで好投した。8回は塹江が2アウト2、3塁まで攻められたが何とか抑えた。その裏、代打・坂倉がホームランを打って2対1とリードする。

  さあ、最終回だ。押さえには、このところ好調のフランスワが登板する。どうしたことか先頭打者にヒットを打たれ、犠打で走者は2塁となった。続く打者の坂本は三振して2アウト。あと1人で勝利という段になる。

 ところが、次の3番・丸と4番・岡本に四球を出して満塁となる。「一打逆転です!」とアナウンサーは絶叫する。次打者は強打が売り物のウイーラーだ。見逃し、ボール、空振り、ボール、ボールで3ボール2ストライクと絶体絶命の局面となり固唾を飲む。

 第6球目を投げた。打った。平凡なレフトフライで巨人は万事休す。ここで「カープ 3タテ」。この時、「3タテ」という言葉の使い方に疑問を感じて調べてみた。

  「タテ(立て)」とは、勝負事に続けざまに負けた数を数えるのに用いる助数詞だと書いてある。用例としては「相手に3タテを食う」という使い方はあるが「カープ 3タテ」と書くと、カープが3連敗を喫した意味となる。

  今朝の新聞の見出しで「カープ 3タテ」と書いたなら間違いで「巨人 3タテ」なら正解となる。ともあれ手に汗握る好試合を久々に見せてもらい、巨人とのゲーム差は7となった。