28日に安倍首相は、体長不良のため突然辞任を表明した。その後継を決める党総裁選に、菅官房長官が立候補する意向を固めたと、今朝(31日)の毎日新聞の1面トップで報じられている。インターネットの時事通信社の記事にも、これに関連したものが出ているのを読んでみた。
「主流派、菅氏に白羽の矢 派閥主導で石破氏封じ」という見出しで、菅官房長官が出馬を固めるに至った経緯が書かれている。いつの時代も、相も変らぬ内輪の論理で繰り返される総裁選びであるが、見出しにある「白羽の矢」という言葉が気になって、改めて調べてみた。
「白羽の矢」とは、文字の通り「白い羽がついた矢」を意味する言葉である。ヤマタノオロチの伝説などにおける「人身御供」が語源である。神様の怒りを沈めるために、川や池に人を沈めて捧げる人身御供の儀式で、白い羽の矢を生贄にする家の屋根に立てたことが由来となっている、と書いてある。
「白羽の矢が立つ」として使うことが多い言葉で、本来は「大勢の中から犠牲や生贄として選ばれる」というネガティブなニュアンスの言葉であるが、現代においては、「特別に選び出される」「代表候補に選ばれる」というポジティブな言葉として使われる場合もある。
現在では「白羽の矢」を良い意味として使うことは間違いとは言い切れないが、相手を不快な気持ちにさせないためにも、「白羽の矢」を別の言い換え表現を使って意図がより正しく伝わる表現をするよう心がけるのがよいという。
今回の時事通信社の記者が書いた「菅氏に白羽の矢」の真意は、果たしてどちらの意味合いが正解か。新型コロナの収束は見えず、中途半端なアベノミクスで経済は落ち込んだままでの「ポスト安倍」は厳しい船出を迫られている。
そんな中「ポスト安倍」は「貧乏くじを引くようなもの」とまでささやかれている。とすれば、時事通信が書いた「白羽の矢」とは、厳しい今の日本の「犠牲者」を選ぶというネガティブな意味で使ったのかもしれないと深読みしてみた。