写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

夏も終わり

2012年08月31日 | 季節・自然・植物

 今日で8月が終わる。子供たちの夏休みも最後の日だなぁ、なんて思っていたら明日は土曜日。今年の夏休みはいつもの年よりも2日多い。宿題が残っている子にとっては、「ラッキー」というところかもしれない。

 連日暑かったが、昨日今日あたりの朝は窓を開けると、ほど良い冷たさの優しい風が入って来る。夏の間、パソコンに向かっているとき、日に何度も奥さんがアイスコーヒーをテーブルに置いてくれる。カップに結露したしずくがテーブルに滴り落ち、それがパソコンに向かって広がってきて手元に置いてある書類が濡れるようなことも時にあった。

 ある日からコースターを取り出し、その上にコップを置いてくれるようになった。それでもしずくがコースターからあふれて流れ出てくる。それはそうだろう。コースターの材質が石のため水を吸収しないだけでなく深さも浅い。すぐにあふれ出るのは当たり前だ。

 苦情を言うと、今度は布製のコースターに替えてくれた。うん、これなら大丈夫。高級感はないが問題は解決した。今朝、居間でそのコースターにアイスコーヒーを乗せ、少し柔らかくなってきた朝の陽を受けているハナミズキの緑を眺めていた。

 姿勢を低くして半分飲み終えたアイスコーヒーのカップ越しに外の景色を眺めてみた。直接見る景色と違ってキラキラ輝いて実物よりも美しく見える。こんなことをして遊んでいたら、古い歌を思い出した。

 ♪ あなたを思い出す この店に来るたび 坂を上ってきょうも ひとり来てしまった
   山手のドルフィンは 静かなレストラン 晴れた午後には 遠く三浦岬もみえる
   ソーダ水の中を 貨物船がとおる 小さなアワも 恋のように消えていった ♪

 1976年に松任谷由美、旧姓・荒井由実が作詞作曲して歌った「海を見ていた午後」の歌詞である。横浜の根岸にあるカフェ&フレンチレストラン「ドルフィン」の海の見える席に座って作った歌だという。その雰囲気を確かめたくてある夏の日、この「ドルフィン」へ行ってみたことがある。高台から日石の製油所越しに海が見えた。ソーダ水の向こうに、あいにく貨物船は見えなかった。

 居間で飲んでいるアイスコーヒーのカップにも、ひと頃の湧き出すような結露は見られない。厳しかった夏もようやくコースターようだ??


奈 落

2012年08月29日 | 生活・ニュース

 歌舞伎俳優・市川染五郎が、27日に東京・国立劇場の舞台セリから3メートル下の奈落に転落し、右側頭部および右半身の打撲と診断された。落ちた原因は染五郎が足を踏み外したためとみられているが、根本原因は何といっても舞台の真ん中に大きな穴があいていることである。

  「奈落」とは、本来は仏教語で、地獄や地獄へ落ちることを意味し、転じて物事のどん底や底しれない深い場所の意味に使われる。劇場や舞台や花道の床下のことも奈落という。これは回り舞台やセリなどの仕掛けが置かれてある場所がまっ暗なため、奈落の底にたとえた言葉で、舞台の床下が語源ではないそうだ。

 大勢の観客を前に舞台で熱演中、突然バランスを崩して奈落に落ちた染五郎さんは、幸いにも大きな怪我ではなかったというが、まかり間違えば命を失いかけない事故である。

 工事現場などで高所の作業をする場合、必要な足場を設置して行う。その場合、足場の組み立ては労働安全衛生規則で定められた「足場の組み立て等作業主任者」の資格を持った者が行わなければいけない。足場の構造については足場の幅や手摺の高さなど、その足場を使って作業する者については命綱やヘルメットの着用など、こと細かに安全対策が決められている。足場には隙間があってもいけない。

 工事現場での墜落防止に関しては、このように厳しい法律があり、これを厳守することは当たり前となっているが、演芸の舞台などでは、この扱いはどうなっているのだろう。舞台にセリがあるのは当たり前となっている。昔からそうなのだから法律の扱いも規制の範囲外となっているのであろうか。

 しかしながら、このたびの事故のように間違って落ちることはありうる。命綱やヘルメットを付けて演技することは出来ない。であれば、奈落に落ちないよう、空けた穴をシャッターなどでいち早く閉じるなど設備的な工夫くらいあってもいいのではないか。今回が初めての事故ではない。過去にも同じようなことはあった。

 伝統を重んじるばかりでなく、今の時代に即した安全対策は、やろうと思えばできるはずだが、どうなんだろう。落ちたが最後、そこが奈落の底・地獄とならないようなひと工夫がいる。


知りたくないの

2012年08月27日 | 岩国検定

 ♪ あなたの過去など 知りたくないの 済んでしまったことは 仕方ないじゃないの
   あの人のことは 忘れてほしい たとえこの私が 聞いてもいわないで ♪

 知ってる人は知っている、知らない人は覚えてね……、1965年に菅原洋一が歌ってヒットした「知りたくないの」という歌である。続く2番の歌詞は「愛しているから 知りたくないの、早く昔の恋を 忘れてほしいの」と続く。今のあなたを愛したいと思う恋心を、菅原洋一が切なさそうな声で聞かせてくれた。若き頃の私の好きな1曲である。

 恋人の過去など知ってどうなる。今が幸せならそれでいい。恋ってきっとそんなものなんだろうと思う。過去や親せきなどが頭の片隅にちらつくなんぞは、本当の恋とは言わないのだろう。「恋は盲目」なんて言葉は、そんなところから生まれたものかもしれない。

 この暑いさなか、こんな歌を思い出させるようなことがあった。昼食を終えて小休止しているとき、電話が鳴った。表示を見ると知らない人からである。「もしもし、岩国検定ですか? 新聞を見て電話しているものですが、テキストブックを1冊欲しいのですがどうしたらよいのでしょうか?」と男の声。

 郵便振替で代金を送るように説明した後、送り先の住所を聞いてみると、下松市からであった。「下松の方がこの本を買われるというのは、検定試験を受験されるのですか?」と言うと「いいえ、受験はしませんが、妻が岩国出身なもんで、岩国のことがもっと知りたいと思って……」というではないか。

 「奥さんは岩国のどちらの方なんですか?」「北河内、山の奥、田舎の出です」という。何れの方であろうが岩国出身には違いないようだ。「知りたくないの」の歌とは真逆なご主人。奥さんの出身地のもろもろを、本を買ってまで知りたいというような殊勝なご主人が、この世の中に果たして何人いるだろうか。

 このご主人の年齢は聞き忘れたが、多分50~60代。この人は、どんな奥さんと一緒に過ごしているのか知らないが、きっと愛し合い、互いに尊敬しあって毎日を送っているに違いない。こんな電話をもらった日にゃあ、私も少しは反省して、うちの奥さんに優しい言葉でもかけてみたくもなる。間違っても「おい、おまえの故郷はどこだったかな~」などと訊かぬよう、ご用心、ご用心。


反 響

2012年08月25日 | 岩国検定

 またまた岩国検定のお話で恐縮です。昨日記者会見をした記事が、今日(23日)の中国新聞に掲載されたことは仲間からのメールで知っていた。用事があってコンビニに行った。そこで読売新聞と山口新聞にもこの記事が掲載されているのを知り買って帰った。1日中、これらの新聞を読んだ読者からさまざまな反響があった。

 その1.
 周防大島に住むお寺の住職から、中国新聞の記事を読んで電話がかかってきた。大島町も町おこしの一環として、ガイドブックのようなものを今年度中に作ろうとしている。町から助成金をもらうことになっている。参考にしたいのでテキストブックを1冊購入したいという。製作費を聞かれたので答えると、「なぜそんなに安く出来たのですか?」と訊く。わけは簡単、資料集めから編集までのすべてを自分たちでやり、印刷・製本だけを外注したからだというと、大変驚いていた。大島のガイドブック作成のいい参考になれば嬉しいのだが……。エールを送って電話を切った。

その2.
 防府市に住む64歳の男性からの電話であった。山口新聞を読んでテキストブックの発刊を知ったという。岩国は仕事で縁のあった所で友人も多い。岩国のことをもっと知りたいので、1冊送ってほしいという。「防府も国衙や国分寺などがある歴史ある街ですが、検定実施を考えておられるのですか?」と訊くと、「私の力でそんなことまでは考えていません」という。純粋に、岩国のことをもっと知りたいという遠い所に住む人からの申し込みであった。

その3.
 通津に住む高齢の方からの電話があった。「中国新聞を読んで、この本を買いたいと思うがどうすればよいか?」という。郵便為替で振り込むように伝えると、「ひとり住まいで、足が悪く車の運転も出来ないので郵便局に行くのが難しい。何とかならないか」。その人の近くに住む会員に頼んで、本を自宅まで届けることにした。後刻、その旨を伝えると「申し訳ない、それなら2冊買わせて下さい」と、心優しい言葉に甘えることにした。かくして2冊売り上げとなった。2冊目は誰が読んでくれるのだろう?

その4.
 購読していない中国新聞を買いに、家の近くにある総合病院の売店に行った。新聞をレジのカウンターに置いたとき、60年配の女性店員が「今日新聞に載っていましたね。読みましたよ」と言うではないか。「ありがとうございます。検定試験受けてください」と言うと笑っていた。関心を持って読んでくれた人がいたが、疑問が一つある。あの女性とは面識がないと思うが、どうして私と検定が結び付いたのだろう。真夏の世の不思議な出来事?


記者会見

2012年08月24日 | 岩国検定

 岩国検定受験用のテキストブックが出来上がった。10月1日より受験者の応募を受け付け、12月2日には第2回の検定試験を実施することにしている。このことを皆さんに知っていただくために、昨日(23日)、市役所の6階にある記者クラブに新聞各社に集まっていただき、検定仲間の3人で記者会見をした。

 一昨年、第1回の岩国検定を実施しする前にも、この時期同じように記者会見をした。その時は、岩国で初めてのご当地検定をするということがニュースバリュウであったと思う。このたびの記者会見の目玉は、2年ぶりに第2回目を実施するということだけでなく、会員手作りのテキストブックを出版したということである。

 説明資料を2枚の紙にまとめて臨んだ。13時半に会見開始。大手の新聞社だけでなく地方紙も加わっての計6社と、ケーブルテレビの1社が取材に来てくれた。我々3人が記者を前にした長椅子に座った。テレビカメラとマイクがこちらに向かってセットされている。テレビのワイドショウでよく見る芸能人の記者会見と同じシーンのようで少し緊張する。

 まずは持ち込んだ資料に従い、本の出版に係ることだけでなく試験要項なども簡単に説明した後、質問を受ける形にした。第1回の時とは各新聞社の記者は異動により代わっているので、改めて検定を実施した動機、目的や組織・体制、効果、試験問題の範囲、そして今回の目玉であるテキストブックに係るもろもろの質問を受けた。

 A新聞社が、検定実施に至った動機・きっかけについて興味を持ってくれた。「是非これは記事にしたい」という。誰に対してというわけではないが、私が最も言いたかったことを記事にしてくれるという。この記事を早く読んでみたい。果たしてどんな表現になっているか、掲載されるのを待つという楽しみが出来た。

 これを書いている今朝、仲間からメールが入ってきた。中国新聞に早くも掲載されているといい、記事を送ってきてくれた。いい広報が出来ている。これを機に、今日から本屋さんにテキストブックを並べてもらうことにしよう。急に忙しくなってきたぞ~。