写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

歴女遭遇

2015年08月31日 | 旅・スポット・行事

 吉香公園の中に「吉川史料館」というものがある。旧岩国藩主吉川家に伝来した歴史資料や美術工芸品を収蔵しているが、中でも吉川家文書・吾妻鏡・太平記など2,500点の歴史資料は、国の重要文化財に指定されている。

 15年前から「吉川史料館たより」というA4サイズで4ページの季刊広報誌が発行されていて、季節ごとの展示品の紹介や、訪れた人の感想や岩国出身者の故郷への思いなどのエッセイも掲載されている。創刊号からずっと愛読していたが、ここ3年間は慌ただしく生きていたので、ついぞこれをもらって読むこともなく過ごしていた。

 3年分のものをもらいに久しぶりに史料館を訪れてみた。土曜日であったが、狭い展示室には年配者が3人と若い女性が1人いた。一通り見て回ったとき、リュックを背負った若い女性はまだ熱心に古文書の前に立っている。手帳に展示品を見ながら何やら書き込んでいた。若い女性が、えらく熱心だなと思いながら先に展示室を出て、岩国城を仰ぎつつ広い庭を鑑賞できる休憩室に座り、置いてあるパンフレットを読んでいた。

 しばらくすると、件の女性も休憩室に入って来た。壁に貼ってある歴代吉川藩主の説明パネルを見ながら、また手帳に何やら書き込んでいる。手帳を閉じたのを機に聞いてみた。「お若いのに、岩国の歴史に興味をお持ちなんですか?」「はい、吉川広家に興味があります」と答えた。広島県出身で今は兵庫県に住んでいて来春大学を卒業する女性であった。毛利つながりで広家に興味を持ったという。

 「今回でここに来たのは2回目です」という。なかなかの歴女であるが、ここ吉川史料館以外、吉香公園内にある史跡は全く訪れていないという。これではもったいない。短い時間で公園内の史跡を紹介し、是非見て帰って欲しいことを伝えた。時計を見ると4時過ぎ、外は小雨。「来年の2月にはまた訪れる積りです」という。聞いてはみなかったが、展示品が替わる都度来る積りなのだろうか。

 「熱心に手帳に何か書いていましたが、何を書いていたのですか?」と、余計なことを聞いてみた。「展示品を見た感想などを書いています」という。歴女とは歴史好きあるいは歴史通の女性を指し、歴史や史跡に対してより真摯に活動する女性が多くなっているというが、遠くからたった一人で、マイナーな吉川広家を訪ねてきた歴女に遭遇した。


皮算用

2015年08月28日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び

 プロ野球セ・リーグのペナントレースの試合も8割方が終わり、残りは30試合ばかりとなった。今年のカープは「常昇魂」「勝ち癖」とか「カープ女子」などとファン共々気勢を上げ、黒田投手が戻ってきたこともあり「今年こそは優勝を!」といって戦ってきたが、現在第4位で優勝はいかにしても難しい状況にある。

 カープの戦いぶりを見ていると、私の性格に似ていなくもなく、阪神や巨人のように強いチームには強く、横浜や中日など弱いチームに対してはめっぽう弱い。多分、心優しい集団なんだろうと思う。そうはいいながら、残り試合、何勝すれば優勝とはいかないまでもAクラスに入れるのかを試算してみた。

 8月27日現在、1位は阪神で60勝54敗、次はヤクルトで59勝57敗、巨人は59勝59敗、カープは54勝57敗。上位3チームが現在までの勝率で残り試合を終えるとすると、阪神は75勝67敗、ヤクルトは72勝70敗、巨人は71勝71敗となる。カープが優勝するには75勝67敗で、残り試合を21勝10敗と、ほぼ2勝1敗のペースとなり、現在の勝率0.486を0.677まで上げなければいけない。Aクラス3位に入るためには72勝70敗で、残り試合は18勝13敗、勝率は0.581まで上げなければいけない。

 単に数字だけで見ると、Aクラスに入ることすらとっても無理なように思えるが、残り試合が少ないので、チームの勢いで間違って連勝することがあるかもしれない。現に目下、巨人・阪神相手に4連勝中である。カープが現在までの勝率で残り試合を戦ったとしたら15勝16敗となるが、なんとしてでも、あとプラス3勝を上乗せしてAクラスに入って欲しい。

 そのための提言、その1.4番新井を少し休ませて松山を入れる。その2.抑えは中崎から大瀬良にする。昨夜の阪神戦はマエケンが好投しエルドレッドのホームランがあって何とか勝つことが出来た。これからの試合、破竹の勢いで連勝に連勝を重ね、是が非でもAクラスに滑り込んで欲しい。お願いします、我らが「どうしよう魂」ならぬ「常昇魂」のカープさん。


台風被害

2015年08月27日 | 木工・細工・DIY

 直撃こそ免れたが、台風15号による暴風雨は、ここ岩国地方では警戒警報が出たくらいであった。早朝、ベッドから起き上がる直前、地区消防団の車が雨の中「この地区の避難所は保健センターです」とスピーカーで知らせて回っていた。避難を考える人がいてもおかしくないほどの雨量だったのだろう。

 そんな台風が通り過ぎた昼過ぎのことであった。庭に出た奥さんが部屋に入って来るなり「お父さん、玄関の外のパラソルがガタガタになっているわよ」と私を責めるような口調で言う。昨夕、台風対策で庭や玄関先に立てているパラソルは閉じて斜めに立てかけておいた。布をロープで縛ってこそいなかったがこれで十分だと思っていた。

 ところが強風であおられたのだろうか、布は破れてはいなかったが、アルミパイプ製の支柱が上の方でぽっきりと完全に折れてしまっているではないか。パラソルを45度くらい傾けことが出来るような構造になっているが、その屈折金具の根元できれいに折れて支柱は2本に別れている。

 「パラソルのあのブルーの色が好きだったのに、お父さんがいい加減な台風対策をしていたので……」と、奥さんは恨めしそうな目で私をにらむ。全くもって面目ない。全て私が悪い。ここは何とかしないと亭主の沽券に関わる。今後の示しもつかない。直すしかないと決めた。

 翌日朝から外に出て、折れたパラソルをじっと眺めることしばし。一つの補修案を絞り出した。折れた支柱の端面を金ノコできれいに切断する。そのパイプの穴に、ちょうど合う様に、物置に転がっていた手持ちの丸太を削ってはめ込み、支柱とビスネジでしっかり留めて補修した。奥さんが買い物に出かけている間に全ての仕事を終えた。

 帰って来た奥さんはこれを見てびっくり。「上手に直ったのね。この色が好きだったので嬉しいわ」とおほめの言葉をいただく。壊したのは私。それを直すのも私。壊れたものを見ると一度は修理に挑戦するのが私の生き方。そういえば私の体、最近修理する頻度が増えてきたが、こればっかりはお医者さんに頼るしかない。直った後は台風一過、空も心も天高く晴れ渡っている。


初心に戻る

2015年08月25日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画

 雨と風を伴った夜来の台風15号は、昼過ぎには下関から日本海に抜け、家を揺らせていた風も徐々に収まりかけている。大きな被害が出なかったことに一安心しながら、午後のひと時、8年前に自費出版した「アールグレイを飲みながら」という自分が書いたエッセイ本を久しぶりにめくって読んでみた。

 確かに自分が書いたものではあるが、内容までは覚えていない。8年前といえば、まだブログをやり始めて2年目のときで、1年間で276遍もの数のエッセイを書いている。読んでみると、現在の私と比べて、物事を見る目や感じ方が新鮮で、感性が鋭いように見える。

 ここ2、3年はといえば、1年間に書いているエッセイは120編くらい。8年前の半分以下である。最近はよほど面白いことか、驚いたことや感動したようなことがないと書いていないが、8年前には平凡で何でもないようなことの中から、今読んでみても我ながら面白おかしく、新鮮な目で物事を見て感じて書いている。

 そういえば、最近は「書くようなことが何もないなぁ」と言って、目の前にあるものを丁寧に見ることをさぼっている。これはこんなもの、それはそんなものだと達観し、変に物分かりが良くなっている今の自分に気がつく。季節の移り変わりにも鈍感になっていた。これではいいエッセイも書けないはずだ。

 8年前の、未だ若かりし?ころに書き綴った自分のエッセイ本を読んで、今の自分を大いに反省した
知らぬ間にマンネリに陥っていた。「初心に戻る」とはよく使う言葉であるが、台風の襲来で家の中に閉じこもった午後、こんなことで初心に戻るということを改めて胸に刻んでみたが、一体何日間維持できるか、それが問題だ~。


瞬間凍殺

2015年08月23日 | 生活・ニュース

 ちょっと怖いタイトルとなったが、こんな名前の付いた商品をホームセンターに行き買って帰った。その用途といえば殺虫剤である。夏場、家の中にいて動き回るものといえば、奥さんの他は蚊やゴキブリ、時に大きなクモが這っていることがある。クモは害虫ではないので許すにしても、ゴキブリは見つけるたびに追いかけまわして退治している。

 ところが、退治するといっても、奥さんは履いているスリッパを手にして一撃するというが、これではゴキブリを潰してしまって後始末が大変である。私が見つけた時には準備に少し時間がかかるが、新聞紙を丸めてつぶさない程度に一撃を加える。すると脳振とうを起こしただけで原形をほぼ保った状態で捕獲できるので、あと始末が楽である。

 しかし、いずれの方法を取ったにしても、ゴキブリに大なり小なりのダメージを与えるので良い気持ちはしない。市販の誘因殺虫剤を床に置いておく方法もあるが、効果のほどがしかと目で確認することが難しい。ゴキブリの退治方法に苦慮している時、帰省してきた息子からいい情報を聞いた。

 「瞬間凍殺」という方法である。「這う虫 瞬間凍殺 85
℃」と書いてあるスプレー缶の頭を虫に向かって押すと、ジェット気流が噴射され、瞬間的に虫を凍らせて瞬殺するというものである。説明書を読んでみると「-85℃の超冷気で瞬間殺虫。殺虫剤を使用せず、這う虫の動きをすばやく止めて駆除する。噴射後、イヤなニオイやベタつきが残らない。飛ぶ虫にも効果があり」と書いてある。

 可燃性のフロンガスを使っているので火気の近くで使用すると危ないことになるので、注意しなければいけないが、ゴキブリを追っかけて捕獲するには便利なものである。これを買った数日後、台所からの奥さんの「きゃあ、お父さん、ゴキブリが~」との悲鳴を聞きつけて駆けつけ、3秒間ジェット気流を噴射して見事カタログ通り凍殺した。

 害虫にとって、これはどうなんだろうか。昔であれば煙や薬剤で駆除されていたものが、今や瞬間的に凍殺される時代である。苦しみながら死ぬのではなく、一種の「ピンコロリ」と考えれば良い方法だと言えなくもない。ところでこのブログを書いている時、「瞬間凍殺」とキーを打ったつもりが、何度も「瞬間盗撮」と変換されるのは、私の潜在的な意識をパソコンから見通されたのかと一瞬ドキッとしたところである。いやいや……。