写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

母の叱咤

2004年12月06日 | 生活・ニュース
 スイミング仲間の忘年会だと言って、久しぶりに着飾って美しくなった妻を、レストランまで送っていった。

 帰り道、国道沿いのラーメン屋に入った。私の夕食だ。カウンターに座ると眼の前に、調味料・割り箸が置いてある。

 割り箸が入っている竹筒の表面に、マジックで何か書いてある。「世の中万能な人はいない。だからこそ耳と体を使って学ぶのだ」と。

 30代半ばのマスターの母が創作で書いたと言う。他の竹筒にも書いてある。「『時々読め』と母が言う」といってマスターは笑った。

 まだ若いマスターを、母は割り箸の竹筒から応援していた。帰り際、もうひとつの句が読めた。
   「苦労人とは 真剣に努力した人のことをいう」と。

 レジの前で、果たして私は「苦労人」だろうかと、釣銭をもらう間考えてみた。
   (写真は、自作の割り箸箱)

フィレンツェ

2004年12月06日 | 旅・スポット・行事
 イタリア旅行で、フィレンツェの街に行ったことがある。陽が落ちようとしている頃に着き、ミケランジェロの丘から、暮れなずむ街全体が見渡せた。

 ドウオーモ(花の聖母教会)と、アルノ川に架かるブェッキオ橋が夕日を背に際立って美しく見えたことを覚えている。

 今日、ふたたびその丘に上ってみた。初冬の空気は包み隠すことなく、遥か遠くまで全てを明快に見せてくれた。

「あれがアルノ川、これがブェッキオ橋。あれ?ドウオーモはどこに行った。」

 一瞬、我に返った。あのフィレンツェの街と勘違いしそうな、白崎八幡宮の境内から見る、今津川界隈の景色であった。

 高台から見る岩国の澄んだ冬景色も、なかなかのものだ。
 (写真は、白崎八幡宮境内から大正橋・川下町を望む)