京都の千枚漬の原料となる蕪は、富山県で生産されている大蕪を使っているという。厚さ2mmの千枚漬は、かおりが強く、肉質はきめ細かで歯ごたえが良く、口に入れると甘くすっぱく冷たくておいしい。富山の大蕪の特徴は、肉質の緻密さだという。そうなる理由は、粘土質の土壌にある。
粘っこい土壌に強く拘束されながら、ゆっくり時間をかけて大きくなるためである。成長するに厳しい環境にいたからこそ、いい蕪になるのだという。
翻ってわれわれ人間はどうだろうか。精神的にも肉体的にもこれと同じことは言えそうだ。子供に対しても、愛情を欠いてはいけないが、心身両面で厳しい環境において鍛えてやる方が子供のためになる。
厳しすぎてうまく行かなかった例も多い。何事もほどほどであろうが、人間は、試行錯誤した結果、失敗したような場合には、野菜のように捨ててしまうという訳には行かない。それだけに難しいが、幸い人間は土中の蕪と違って、よく見ていれば日々の成長が目の前でよく分かるので、必要とあれば方向修正も出来る。「ほどほど」「適度」を見極めるのが親の役目であろう。
とはいえ簡単には行かないのが人間の難しさである。富山の大蕪のように子供が立派に成長すれば、親のカブも上がろうというものである。粘土質に負けないよう、親も粘り強く頑張ることが肝心であったと、今になって少し反省している。